千鳥、人気再燃のワケ 「クセがすごい」で全国区に
「おしゃべりクソ野郎」(有吉弘行)、「焼却炉の魔術師」(博多大吉)など、数々の名フレーズが選ばれている『アメトーーク!』(テレビ朝日系)の流行語大賞。2016年末に選ばれたのは千鳥のノブのツッコミ「クセがすごい」だった。
このフレーズが生まれたのは15年ほど前。大阪時代、漫才で使い倒していた文言だったが、15年に『アメトーーク!』の「パクリたい―1グランプリ」で久々に披露したところ、汎用性の高さで再注目。以降、ここ1年くらいは『ヒルナンデス!』や『シューイチ』(ともに日本テレビ系)などの情報番組でも頻繁に顔を見せるように。
結成は2000年、『M-1グランプリ』や『THE MANZAI』の常連でもあった2人。実力を認められながらも、そのキャラの濃さから共演者を選ぶタイプと思われていたが、ここにきて再評価されている。
1つの転機になったのがレギュラーで出ていた『ピカルの定理』(フジテレビ系)の終了(13年)だった。「その翌年に冠番組の『いろはに千鳥』(テレビ埼玉)と、『笑神様は突然に…』(日テレ系)の"島シリーズ"が始まった。そこで自分たちのロケの様子をいろんな人に見てもらえたのがよかったのかな」とノブ。相方の大悟も「いろんなところで"ロケ芸人"と呼ばれるようになったのが大きかった」と振り返る。
人気再燃ムードについては冷静だ。「年末年始にめっちゃテレビに出てたねって言われるけど、体感では変わらない。それまでローカル番組が多かったのが、全国ネットが増えたことで、露出が増えたように見えているんだと思う」(ノブ)
好調の背景として挙げた『いろはに千鳥』は、一見よくある街ぶらロケモノだが、実は1日に8本録りをしている過酷な番組。行き当たりばったりで何もないところから次々に笑いを生み出す2人のやりとりが話題を呼び、シーズン6まで続く人気番組へと成長した。「しんどい分、本音が出ちゃっている」(大悟)、「視聴者からは『元気がある3本目よりも疲れ果てた7本目、8本目が面白い』という声を聞く(笑)」(ノブ)と説明する。
今やロケ芸人の代表格だが、ネタ芸人として漫才の腕を磨くことも忘れていない。「漫才はずっと続けたいので、年に1回の単独ライブで新ネタを3~4本下ろしてます。このうち1~2本が残っていけば、昔のネタをやりながら新しいこともできる」と大悟。ノブも「もともと漫才で出てきたので、そこは大事にしたい」と言う。
お笑い界の中では中堅どころの立ち位置。再評価の波に乗って、こんな野望もある。「ロバート、ピース、オードリーなど同世代の芸人を集めた番組もやってみたい。そこで司会をやって人気が出たら最高ですね」(ノブ)。「漫才をやりながら、お笑い色の濃い番組にずっと出ていたい」(大悟)
ネタ、ロケ、ひな壇と、あらゆる場面で結果を残す彼らのさらなる快進撃に期待したい。
(「日経エンタテインメント!」4月号の記事を再構成。敬称略、文・遠藤敏文 写真・佐賀章広)
[日経MJ2017年4月7日付]
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