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いずれ起きる相続 遺産5000万円なら費用50万円も

2017/4/13

 多くの人がいつか直面する相続。親や配偶者が亡くなれば、預金の名義を書き換えたり税の申告をしたりしなければならないが、そうした手続きがいかに煩わしいかはあまり理解されていない。専門家に頼んだときの費用と併せ見ていこう。

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相続税の申告書は約30枚にも及ぶ

 「四十九日法要が終わってすぐに相談に来る人はまれ。半年たって相談にくる人もいる」。新宿総合会計事務所の代表税理士、瀬野弘一郎さんは、相続が起きてもその大変さに気付かず、しばらく放置する遺族は多いと話す。

 ではどんな手続きが必要になるのか。

 大きく分けるとまず、財産を遺族が引き継ぐための手続きがある。いわゆる遺産相続だ。はじめに必要になるのが「法定相続人」の確定。民法上、誰が遺産をもらう権利を持つかを調べることで、これが意外と難関。故人の出生から死亡まで、すべての戸籍謄本をとる必要があるからだ。

 本籍地を生前変えたことがあれば、さかのぼって各地の市町村に照会する。「戸籍をたどっていったら離婚した前妻との間に子供がいたということもある」(司法書士の山北英仁さん)。婚外子も認知されていれば法定相続人だ。

 同時に必要になるのが財産の把握。預金が複数の銀行に散らばり通帳を見つけにくい例はよくある。地元にある先祖代々の土地など、話には聞いたが所在は確かめていない、という財産もありうる。

 これら法定相続人の確定と財産の調査は、司法書士や行政書士などに頼むことも可能。日本行政書士会連合会のアンケート結果を見ると、合計費用は平均で約6万円だ。

 次に待ち構える難関が「遺産分割協議書」の作成だ。遺言がない場合、すべての法定相続人が話し合い、遺産の分け方を決め、書類にするのが決まり。一人でも欠ければ相続は行き詰まる。

 協議がまとまったとしても、正式な書類にするのは難易度が高い。協議書は、故人の預金を解約するにも、不動産の名義を法務局で変える際にも必要。表記上の細かな規定が多く、行政書士に頼むとすれば費用は6万円ほどだ。

 ここまで述べてきた遺産相続の手続き以上に、費用がかかるのが相続税の申告だ。相続税と聞くと「財産の少ないわが家には無縁」と考えがちだが、油断は禁物である。

 理由の一つは、2015年に相続税の基礎控除枠が4割縮小されたこと。遺族に税金が課される遺産の規模は、人数によるが、従来、1億円がおよその目安とされていた。増税後は5000万円ほどでも十分対象になりうる。

 もう一つは、重い税負担を軽くするために申告が不可欠という場合が多いことだ。配偶者は少なくとも1億6000万円まで非課税になる特例があり、税務署に申告書を提出してはじめて認められる。家の土地の評価額が最大8割引きになるという特例もあり、やはり申告が必須だ。

対策を事前に考える人が増えている(ランドマーク税理法人の相続セミナー)

 申告くらい自力で済ませたいとも思うが、申告書類は一式が20枚強。財産ごとの評価額を細かく調べて記すだけで大変だ。さらに申告には死後10カ月という期限もある。

 申告を依頼した場合の費用の目安として上図に、2002年まで法律で規定されていた上限額を示した。自由化後は下がりつつあるが、遺産総額の1%相当という例もある。遺産5000万円で50万円、1億円なら100万円かかっても不思議ではない。

 「ワンパック相続」。最近は一連の手続きを一括して請け負い、お得感を打ち出す例も増えている。新宿総合会計事務所は、戸籍の取得から税申告まで、必要な手続きを合計し、遺産総額の1%という料金を目安として提示する。

 同じくセットでの依頼も受けるのがランドマーク税理士法人。代表税理士の清田幸弘さんによると「関心が高まったここ2~3年で依頼件数は4割ほど増えている」。司法書士らの間でも税務以外の手続きをセットで15万円といった料金で引き受ける例もあるという。

(川鍋直彦)

[日経プラスワン2017年4月8日付]

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