見て楽しい、飲んでおいしい 猫ラベルワイン7選
空前の猫ブームが続いている。猫関連のグッズ・書籍や写真展等が人気を博し、猫本のなかには100万部を超すベストセラーも出現。今回は、手元において愛でるもよし、猫好きへのプレゼントにも向く猫のラベルのワインを紹介する。
フランス産なのに招き猫?
手招きするように左手を上げ、じっとこちらを見つめる黒猫。日本人に親しみやすい招き猫のポーズだが、なんとワインの名前も「キュヴェ・マネキネコ」という。造り手はフランス人。アルザス地方カッツェンタル(=猫峡谷)村のクレマン・クリュール氏だ。「自分たちの村をアピールしたい」という思いからラベルに採用した黒猫は、日本で働いている弟に会いに来日した際、土産屋で出合った招き猫をアレンジしたもの。「人を招く」縁起物であるというエピソードを気に入り購入し、今でもワイナリーの試飲スペースに飾ってあるそうだ。
超辛口のスパークリングは、シャンパンと同じ瓶内二次発酵で造られているため、ムースのような繊細な泡と澱(おり)から出るうま味たっぷり。樹齢40年以上の古樹から収穫したぶどうならではの、滋味深い味わいも楽しめる本格派だ。かんきつの風味もあるので、料理にゆずやレモンを足すと相性がよく、ゆず風味の豆腐のごま和えとは絶妙の相性だった。
輸入元:ヌーヴェル・セレクション TEL03-5957-1955
希望小売価格:3700円(税抜き)
世界一有名な癒やし系の黒猫ワイン
世界で最も有名な猫ワインのひとつに、ドイツ・モーゼル地方のやや甘口ワインがある。ワインの名前は、「ツェラー・シュヴァルツェ・カッツ」。ドイツ語で「ツェラー村の黒猫」という意味になる。なぜ黒猫かといえば、「黒猫の乗った樽のワインは一番美味」というモーゼル川中流のツェラー村に伝わる黒猫伝説に由来している。
黒猫ワインはさまざまな造り手が造っているが、1860年創立のジョゼフ・ドラーテンは、近代的な醸造設備を駆使し高品質なワインを生産する地域屈指の造り手のひとり。フレッシュ&フルーティーな味わいはワインが苦手な人でも飲みやすく、筆者も赤ワインが渋くて飲めなかったワイン初心者のころ、よく飲んでいたワインでもある。
白桃やかんきつの新鮮なアロマには天然の癒やし効果があり、よく冷やすと、ジュースのように飲めてしまう。通常のワインよりも低いアルコール度数(9%)に油断してぐいぐい飲んでいると、気づけばほろ酔い……なんてことも。夏場には、氷を入れて飲んでもおいしい。
輸入元:オーバーシーズ TEL 03-5779-7545
希望小売価格:1200円(税抜き)
ポルトガルの元祖猫ワイン、和食にも合う猫4種類
ドイツの黒猫ワインと並んで元祖猫ワインとして名高いのが、「ヴィーニョ・ヴェルデ(=緑のワイン)」で有名な「ガタオ」だ。輸入する木下インターナショナルは、2月22日の猫の日にイベントを開催、猫とワイン好きの30代の女性を中心ににぎわったという。名前はポルトガル北部のガタオ村に由来し、ガタオ(大猫)という名のとおり、昔は強面の大きな猫がラベルに描かれていたそうだ。
4種類のうち、一番人気は定番商品のヴィーニョ・ヴェルデ。爽快な微発泡の白ワインで、かんきつの香りと高い酸味が特徴。思いきり冷やして暑い日に飲みたい。あとの3種類、スパークリング、ロゼ、赤も使い勝手がいい。フルーティーでやや甘みを感じるスパークリングは、スターターから前菜や重くないメインまで通せる万能選手。フルーティーなロゼは中華との相性が抜群で、酢豚やシューマイ等はもちろん、麻婆豆腐と合わせると、辛みがロゼのほのかな甘みとうまく調和する。
試してほしいのが、赤ワインと魚の組み合わせだ。ポルトガルの食文化は日本と似ており、魚を塩焼きにして食べる。現地ではオリーブオイルをかけたイワシの塩焼きに、地元の赤ワインをよく合わせて飲むそうだ。魚には白かと思いきや、脂ののった魚には酸味のきいた軽めの赤ワインが合うのだという。筆者も合わせてみたところ、オイルサーディンはもちろん、アジフライやいわしの缶詰(醤油味)とぴったりだった。
▼ガタオ ヴィーニョ・ヴェルデ 1150円(税抜き)
▼ガタオ ロゼ 1150円(税抜き)
▼ガタオ レッド 1150円(税抜き)
輸入・販売元:木下インターナショナル TEL 03-3553-0721
オンラインストア:http://www.pontovinho.jp/shop/
アートとしても楽しめる、猫アートワイン
ワインとグラスを前に、どことなく神秘的な存在感を放つラベルの猫。ラベルはスペインの画家ピラール・テリ氏の作品だ。ワインは、リオハで127年の歴史を持つマンサノスワイナリーのもの。日本限定の猫ラベルは、西洋美術を扱うトレードウィンドのオリジナル作品で、ワインとアートを同時に楽しめるのが魅力だ。
白ワインは、熟れた洋梨や桃のような芳醇(ほうじゅん)なアロマと、りんごの蜜の余韻が楽しめるリッチな辛口。黄金色の美しい色合いと華やかな香りを堪能するなら、少し大きめのグラスであまり冷やし過ぎずに飲んでもいい。赤ワインは、熟れたベリーやプラムにハーブやスパイスなどエキゾチックなニュアンスも漂い、タンニンのしっかりしたタイプ。かなりスパイシーなので、黒こしょうをたっぷりとかけた豪快なお肉料理にもおすすめだ。
百貨店等で開催される猫関連の展示やピラール・テリ絵画展の出口販売では、お酒が飲めない女性がインテリアとして猫アートワインを購入することも多いそう。女子会や結婚式の二次会などでも思い出になり、ハレの席にもおすすめだという。
▼フィンカマンサノス ワインキャット ティント 2013 1800円(税抜き)
輸入元:トレードウインド TEL 048-839-3901
イメージは大正ロマン、日本の猫ワインでほっと一息
三養醸造は、山梨県山梨市牧丘にある小さな老舗ワイナリー。1933年の創業以来、日本のぶどうだけを使い、日本ワインを作り続けている。少しレトロなラベルデザインは、大の猫好きのデザイナー、スガワラユウコさんによるもの。白ワインの「猫甲州」は、大正ロマンを意識し、ワインを飲みながら古き良き時代に思いをはせるイメージで、「新猫メルロ」は、赤ワインに感じられるふくよかな香りをイメージしてデザインしたという。
甲州種から造られた「猫甲州」は、はじめはかんきつ系の爽やかでキレの良さが印象的だったが、時間がたつにつれバナナや青パパイヤといった南国フルーツのアロマも感じられる、表情豊かな白ワインだ。かたや「新猫メルロ」は、ベリーの香りに土のニュアンス、コーヒー豆やバニラのアロマがあり、猫のようにしなやかで丸みのあるワインだ。
山田啓二社長の奥様の紀子さんにおすすめマリアージュを聞いてみると、「以前レストランでのワイン会で出していただいた、猫甲州×ワカサギフリット、猫メルロー×フォアグラバーガーの組み合わせが秀逸でした。ふだんは、和食×猫甲州、フルーツやチョコレート×新猫メルロも好きです」と教えてくれた。筆者も試してみたが、ホウレンソウのごま和えなど、超定番の和食にはもちろん、湯河原土産の温泉まんじゅうに猫甲州がマリアージュして驚いた。肩肘張らずにリラックスして飲める日常のワインだ。
▼三養醸造 新猫メルロ 3000円(税抜き)
販売:三養醸造 TEL055-335-2108
◆南ローヌの雄「ペスキエ」が造るお値打ち猫ワイン
フランス南ローヌ地方、ヴァントゥー地区の「シャトー・ペスキエ」は、コスパの高さでは世界でも指折りだ。1980年代半ば、もともとローヌの貴族出身で医療の分野で活躍していたポールさんと奥様のエディスさんは、ファミリーの伝統を受け継ぐためヴァントゥーへ戻り、ワイン造りをスタート。1990年代、ワイン評論家ロバート・パーカーの高評価により世界中で人気沸騰、現在では2人の息子がワイナリーの運営に加わる。
「ル・シャ(=猫)」は、1999年の開業以来「シャトー・ペスキエ」の輸入を続けている「カーヴドリラックス」のオリジナルワイン。ペスキエのクオリティーを、もっと手軽に楽しんでもらうワインを造りたい、という思いから生まれた。ラベルは次男フレデリックさんのデザインで、白と赤で猫の動作が違うのがポイント。白ワインの「ヴィオニエ」は、花束のような香りを持ちつつ、グレープフルーツやハーブの余韻がさわやかな辛口。高い酸味と縦に伸びる味わいは、まさにジャンプしているラベルの猫のよう。かたや赤ワインの「グルナッシュ」は、チャーミングな果実味と丸みのあるタンニンが心地よく、飲み疲れしないなめらかな味わい。完熟した果実の甘みが凝縮しているので、豚の角煮など脂の甘みとの相性もよく、つまみを食べワインを飲みつつ猫のようにごろごろしたくなるワインである。
▼ル・シャ グルナッシュ 2015 1230円(税込み)
輸入・販売元:カーヴドリラックス TEL 03-3595-3697
オンラインストア:http://www.cavederelax.com/
幻の猫ワイン
最後に、幻の猫ワインを紹介する。八ケ岳にある「ドメーヌ・ミエ・イケノ」は舌の肥えたワイン好きをもうならすワイナリーである。ワイナリーのトレードマークは、まさに猫。キャップシールにも猫の足跡があり、遊び心あふれるデザインだ。代表である池野美映さんは、編集者から単身フランスへ渡り国家醸造士の資格を取得。帰国後、たった1人でぶどう畑を探すところからワイナリーをスタートした異色の経歴の持ち主。開墾するときに猫の足跡がたくさんあったことから、「猫の足跡畑(=レ・パ・デゥ・シャ)」と名付けられた自社畑のぶどうのみを使い、少量生産で醸造まで一貫して行う。日照に恵まれた八ヶ岳山麓の丘陵地にある畑は、標高が750mと高く昼夜の寒暖差が大きいことから、酸味を残しつつ果実が凝縮したエレガントなスタイルのワインができる。
我が家でホームパーティーをしたときに、知人が持ってきてくれた「ピノノワール 2014」は、繊細で涼しげで、赤いベリーにかすかに土っぽさや鉄っぽさすら漂う複雑な味わいで、その場にいた全員がレベルの高さに驚いていた。万が一手に入れば、プレゼントにはもちろん、ワイン会の主役になれること間違いない。
販売元:ドメーヌ ミエ・イケノ https://www.mieikeno.com/ TEL 非公開
価格未定
オンラインストア:https://www.mieikeno.com/products/list.php
※次回のリリースは2017年6月3日予定
(ライター 水上彩)
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