亜弥 なるほどね。何とかなるとはいえ、けっこうギリギリね。想定外の大きな支出があったら厳しそう。

佳奈 鍵になるのは養育費ね。優斗くんが22歳になるまでに受け取る金額は1200万円。これがないと、亜弥が36歳の時点で金融資産がマイナスになってあっという間に生活が行き詰まるわ。

図4 養育費を受け取れなかった場合の資産推移予測。36歳時点で資産がマイナスになり、生活が破綻する

亜弥 やっぱり、養育費が止まったらアウトなんだ……。万が一の場合は、実家を頼らないとダメかも。

佳奈 あと大事なのは、離婚時点での財産分与ね。一般に、財産分与の割合は収入の多寡にかかわらず半分なので、貯金の半分に当たる200万円は亜弥のものとして計算したわ。

亜弥 なるほどね。そういえば、さっき児童手当があるって言ってたよね。今ももらってるはずだけど、金額を忘れちゃった。どのくらいになるんだっけ?

佳奈 児童手当は第1子の場合、3歳未満は月額1万5000円、それ以降は15歳まで1万円ね(年収制限あり)。このほか、子供を育てるひとり親なら、「児童扶養手当」(通称、母子手当)も受給できるわ。

亜弥 へえ、知らなかった。いくらくらいもらえるの?

佳奈 亜弥の場合は月額1万320~1万3300円ほどね。ただ、もらえるのは32~35歳までの4年間かな。31歳時点と、36歳以降は所得制限の上限を超えてしまうから。

亜弥 どういうこと?

佳奈 児童手当は所得(控除後の給与所得)と扶養家族の数に応じて金額が決まるの。養育費を受け取っている場合は、その8割も加えるわ。合計が所得制限(192万円または230万円)未満であれば、ある算定式に基づいて支給される仕組みなんだけど、亜弥の場合、36歳時点で所得制限の上限を超えちゃって受給できなくなる可能性が高いのよ。離婚直後の31歳時点も、扶養家族をゼロとして数える(優斗くんが達也さんの扶養家族としてカウントされる)ため、ここも所得制限にひっかかるわ。

亜弥 そうなんだ。とはいえ、数年でももらえるだけ助かるな。

佳奈 離婚して子供を育てていると、「寡婦控除」も受けられるわ。亜弥の場合、控除額は35万円。年末調整できちんと書類を出しておけば、所得税や住民税が軽くなるわよ。

年金分割は微々たるもの

亜弥 あと、確か離婚すると夫の年金を分割してもらえるとか聞いたこともあるんだけど、私も対象になるの?

佳奈 離婚時に合意または裁判手続きを経れば、厚生年金を分割できるわ。ただ、婚姻期間が短いので、それほどの金額にはならなくって、計算すると年額2万1000円ってところね。もちろん65歳からの受給よ。

亜弥 月に1750円かあ。うーん、微妙。

佳奈 ざっとまとめると、離婚後の給与以外の収入(養育費、手当、控除)および奨学金はこんな感じね。

図5 給与以外の収入とその内訳。総額は1778万2880円で、うち養育費が1200万円と7割弱を占める

亜弥 トータルで1778万2880円……うち1200万円が養育費(67.5%)で、216万円が奨学金(12.1%)。児童手当が156万円(8.8%)で児童扶養手当が56万6880円(3.2%)ね。うん、養育費の大きさがよく分かるわ(笑)。

佳奈 このほか東京都には、18歳までの子供を育てるひとり親に対して、月に1万3500円を支給する「児童育成手当」が設けられているわ。また、東京都武蔵野市には「ひとり親家庭住宅費助成制度」といって、家賃を月額1万円(所得制限あり)補助する仕組みがあるなど、自治体によっては独自の支援制度を用意しているみたいよ。今回のシミュレーションでは考慮していないけど、住む場所を決める前に、自治体のウェブサイトを調べておくといいかもね。

亜弥 佳奈、いろいろとありがとう。離婚しても何とかなりそうだってわかって、少し気が楽になったわ。

佳奈 あくまでシミュレーションは参考までってことでお願いね。亜弥なら分かると思うけど、条件がちょっと変われば数字は大きく上下するものだから。

亜弥 人生には想定しきれない条件っていっぱいあるもんね。私も、まさか結婚して4年で離婚を考えるなんて、思ってもみなかったよ。

佳奈 「……人生には3つの坂があります。上り坂に下り坂、そして最後が『まさか』です」

亜弥 あはは、それ私の結婚式のときの佳奈のスピーチじゃない!

佳奈 うん、亜弥に「オヤジくさーい」って笑われた鉄板のネタよ。で、その「まさか」って悪い時に使いがちな言葉だけど、人生がいい方向に変わる時にも「まさか」があるんじゃない? 私は、今回の亜弥の「まさか」が、そうであればいいなって思ってるわ。

亜弥 そうね……。確かに、私にとって今がその「まさか」かもしれないね。ありがとう、佳奈。あとは達也とじっくり話し合って、今後のことを考えてみるね。

■試算・監修
AFG
金融機関向けのソフトウエア開発やコンサルティング業務を手掛けるほか、個人向けの人生シミュレーションプラットフォーム「シミュライズ」(http://simulizer.com/)を提供。給与や生活費のデータを入力すれば、現時点の生活費などの診断に加えて、将来の収支予測なども提示する。

(マネー研究所 川崎慎介)

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