日経エンタテインメント!

1月中旬、東京都の伊豆大島で撮影。1年で最も寒い時期に4日間ロケをした
「一度のカラオケ番組の出演から、CMが決まるなんて考えもしていなかった」と鈴木さん

鈴木さんの起用を発案したのは、湖池屋の佐藤章社長。16年9月30日に放送された音楽特番『関ジャニ∞のTheモーツァルト 音楽王NO.1決定戦』(テレビ朝日)に「最強アマチュア女王」として出演した彼女を見た佐藤社長が、「すごい子がいるんだよ」と社内で話題にしたのがきっかけだそうだ。ブランド統合を機に社長に就任した佐藤氏は、キリンビバレッジの元社長。キリンビバレッジ時代には「生茶」や缶コーヒー「ファイア」のヒット商品を生み出した辣腕のマーケッターとして知られる。新生・湖池屋での新商品開発にあたっても、陣頭指揮でリーダーシップを発揮しているという。

音楽をうまく使ったクリエイティブの手法も目新しい。CMソングのフルバージョンである『100%SONG』のミュージックビデオを制作して、CMのオンエアにあわせて公開。こちらの歌詞は、イモのことだけを歌っているCMと異なり、どんな困難にも100%で立ち向かっていく決意を歌ったもの。等身大の鈴木瑛美子さんを表現したような曲だ。CMとミュージックビデオで、それぞれ違った鈴木さんや楽曲の魅力を楽しめるとあって、どちらも動画サイトで人気コンテンツとなっている。クリエイティブディレクターを務めた篠原誠氏は、au三太郎シリーズのヒットメーカーである。

「歌のうまいアマチュア女子高生を起用したり、大げさすぎる映像や音楽に、一番伝えたいメッセージではありますが、一見くだらない歌詞をつけたり、オリジナルのミュージックビデオを作ったりと、いろいろな切り口から話題が広がってほしいという狙いで、新しいことにチャレンジしました。想像していた以上に反響が大きく、露出が露出を呼んで広がっていった感じです。歌はうまく伝わると、話題になりやすく、長く印象に残ることを実感しました」(湖池屋の野田氏)

今年は『ラ・ラ・ランド』『モアナと伝説の海』『SING/シング』が続けて大ヒットを記録して、映画界では「歌う映画」がブームとなっている。CM界でも「歌の力」の大きさをあらためて見せつけたのが、湖池屋の歌うま女子高生だった。

(日経エンタテインメント! 小川仁志)

■調査対象期間:2017年2月20日~3月4日(東京キー5局)
■当月オンエアCM:全2159銘柄
■東京キー5局でオンエアされたすべてのCMを対象に、関東在住の男女モニター1500人に、好きなCM・印象に残ったCMをヒントなしに自己記述してもらい、その得票数を足し上げたもの
■同商品の複数作品にオンエア・好感反応がある場合、代表作品は最もCM好感度の高い作品
■企業・銘柄名・作品名はCM総合研究所の登録名称であり、正式名称と異なる場合がある