外国人スキー客が大勢訪れる冬季のニセコは繁忙のピークで、海外のヒルトンから大勢のヘルプ要員がやってくるほか、期間限定のアルバイトなどもチームに加わる。国籍も性別も働く目的もまったく違う、にわかに集まった数十人のチームをまとめ上げ、無事に4カ月間を終えるのは、ベテランでもかなりしんどい。

子どもを産んでから大学で学んだ異色の人材も活躍中

RJET5期生で、この4月からコンラッド大阪で勤務する潮田まや氏も、そんな高いハードルを越えたひとりだ。4カ月間でチームの半数は脱落するといわれる過酷な環境の中、一人の脱落者も出すことなく、約30人のチームをまとめあげ、無事に4カ月間の卒業試験を終えた。

潮田氏は「最短で総支配人を目指します」と語る

じつは潮田氏、RJET生の中では異色の経歴の持ち主でもある。幼少期を日本、アメリカ、シンガポールで暮らし、専業主婦を経て日系ホテルに勤務したが、キャリアパスに不安を覚え、娘が小学校に進学すると同時に関西学院大学国際学部に入学。卒業後、得意の英語をいかしながら男性と対等に働ける職場としてヒルトンを選び、RJETに合格した。

「ヒルトンを選んだのは、近道でキャリアアップできるプログラムがあったから。ここならば男性と同じように働いて昇進していけると感じました」(潮田氏)

RJETに合格してからの3年間、娘を関西で暮らす両親に預けて働いた。プログラムの終了後すぐに配属されたコンラッド東京では、それまでなかった料飲部門のセールスを提案し、自らそのマネジャーに就任して成果を上げた。「娘にも働く背中を見て育ってほしいので、最短で総支配人を目指します」と、明るく言い切る。

通常採用組にも大きな刺激

2017年4月1日から入った8期生6人を含めると、これまで41人がRJETにエントリーし、その75%は女性だ。麻生氏が新卒でヒルトンに入社した1988年の時点では入社希望者の7~8割が男性だったが、現在ではその男女比率がほぼ逆転し、就職説明会にやってくるのは7~8割が女性だという。「キャリア志向が強く、マネジャーになりたいとはっきり言う傾向は女性の方が強い」と麻生氏。

RJET卒業生のうち、辞めて他業界へ転職したのは11人。プログラムを見直すなどしたりした結果、修了生の離職は年々減ってきている。

スピード出世を約束されたRJET生が職場に入ってくることで、最も刺激を受けているのは同僚たちかもしれない。ヒルトンではキャリア意識の高い若手を対象に「マネジメント・トレーニー・プログラム」と呼ばれる人材育成プログラムも実施しているが、日本からはこれまで3~4人、手を挙げればいい方だったこのプログラムの応募者が、今年は16人に増えた。なかには、新卒でRJETに応募したものの不合格となり、通常の新卒枠で入った社員が「負けたくない」と応募してくるケースもある。

「RJET生でも、幹部のポジションに就くことを約束されたわけではありません。逆転の可能性は常にある。いったんGMになってしまえば学歴は関係がありませんし、意外とたたき上げが強いのもホテル業界の特徴です」(麻生氏)。目指す総支配人になるまで、熾烈(しれつ)な社内競争が続く。

(ライター 曲沼美恵)

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