歯周病に新治療「3DS」 専用マウスピースを1日5分

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2017/4/23

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歯周病は歯を失う原因になるだけでなく、糖尿病などの全身疾患との関係も指摘されている。この歯周病の予防に「3DS」という新しい除菌治療が注目されている。

成人の約8割がかかっているといわれる歯周病。歯と歯茎の間に細菌の塊である歯垢がたまって歯茎に炎症が起こり、進行すると歯を支える歯槽骨が溶けてしまう。歯だけの病気ととらえがちだが、近年、全身の病気との関連もわかってきた。例えば動脈硬化や糖尿病、心疾患、脳卒中、高血圧などだ。

「歯周病菌は弱くなった歯根膜から血液中に入り込み、全身を回る。『歯原性菌血症(しげんせいきんけっしょう)』という状態で、これが続くと血管に慢性的な炎症が起こる」と鶴見大学歯学部の花田信弘教授。実際、動脈硬化などの病変部からも歯周病菌が検出されている。

イラスト:三弓素青

対策は口腔内の歯周病菌を減らすことだが、これが難しい。細菌同士が寄り集まってネバネバしたバイオフィルムを構成しているため、簡単には除去できないのだ。そこで花田教授らが開発したのが、「3DS(デンタル・ドラッグ・デリバリー・システム)」という除菌法だ。

上下の歯型を取ってマウスピース(トレー)を作り、そこに殺菌作用のある薬剤を注入。これを5分間、口に装着する。1日1回、毎日続ける。「マウスピースは歯茎までしっかりと覆えるもので、薬剤が歯と歯茎にとどまり、効果的に除菌できる」と同大の山田秀則助教は話す。

写真提供(下2点)/花田教授、上2点は編集部で撮影

「歯周病菌に感染すると除菌が難しいといわれてきたが、3DSと抗生物質の併用で除菌できることがわかった」と花田教授。歯周病の前段階の歯肉炎に対しては、3DSを6週間続けた結果、歯周ポケットが浅くなる、出血が劇的に減るなどの効果も。また血圧が下がり、服用していた降圧剤がいらなくなった人もいたという。「全身への効果についてはこれからの研究だが、歯原性菌血症を改善することで、全身の健康にもよい影響が期待できる」と花田教授。

同大附属病院では、2013年に3DS除菌外来を開設した。専用のマウスピース作製、口腔細菌を調べる唾液検査、歯垢や歯石の機械的除去、血圧測定、栄養指導なども行う。5回通院で、費用は約10万円だ(健康保険外)。「虫歯や歯周病の治療を終えた人、インプラントを入れた人は、予防のためにも除菌を」と花田教授。全国でも受けられる医療機関が増えている。

花田信弘教授(右)、山田秀則助教(左)
 鶴見大学歯学部探索歯学講座。虫歯や歯周病を予防・管理し、「歯から全身を健康に」を目指す。2013年に「3DS除菌外来」を開設(山田助教が担当)。花田教授の著書に『白米が健康寿命を縮める』(光文社)がある。3DS除菌外来は要予約。

(ライター 佐田節子)

[日経ヘルス2017年5月号の記事を再構成]

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