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転ばぬ先の不動産学

駅から離れるほど右肩下がり 中古マンション価格 不動産コンサルタント 田中歩

2017/4/5

今年の公示地価で最も下落率が高かったのは千葉県柏市大室の住宅地だった(PIXTA)

 3月21日に国土交通省が発表した公示地価。全国平均で0.4%上昇し、住宅価格の下落にも歯止めがかかったとされていますが、中には大きく価格が下落した地点もあり、価格が上がりやすい立地とそうでない立地が明確になりつつあるといわれています。

■利便性、中古マンション価格に影響

 今年、最も下落率が高かったのは千葉県柏市大室という住宅地でした。つくばエクスプレス「柏たなか駅」から約2キロメートルという立地環境が理由のひとつで、前年比8.54%の下落となったそうです。

 利便性が重視される中古マンションでは、駅から遠い立地は価格下落傾向が従来以上に強くなっている可能性があります。

 そこで今回、JR柏駅から徒歩25分圏内にある中古マンションについて、駅に近い立地とそうでない立地とでどのような違いが見られるか調べてみることにしました。

 グラフAは東日本不動産流通機構に登録されている柏駅徒歩25分圏内の中古マンション取引事例から、2008年以降の平均成約単価の推移を示したものです。

グラフA

 14年以降、価格が大きく上昇していることが分かりますが、この価格推移は各年の取引事例から導き出された成約単価の単純平均です。取引事例の築年数はそれぞれ異なりますし、駅からの距離もばらばらです。

 そこで、これらの取引事例から導かれる成約単価が、築年数と駅からの距離によってどのように変わるのかを統計学的に分析してみました。

 例えば08年の取引事例について分析してみると、「築年数が1年増えると成約単価は1平方メートルあたり約8900円下がる」「駅からの距離が徒歩1分遠くなると成約単価は同約9150円下がる」ということが分かりました。

 この分析結果を利用すれば、築年数が同じ中古マンションにおいて、駅からの距離に応じてどの程度、成約価格が異なるのかを推定することができます。

 今回は築15年の中古マンションについて、駅からの距離が徒歩5分の物件と徒歩15分の物件を比較してみました(グラフB)。

グラフB

■広がる価格差

 駅から5分の中古マンションについては価格がおおむね上昇傾向にある一方、駅から15分のそれは大きな上昇を示してはいません。結果として、年々、両者の価格差は拡大していることが分かります。

 駅から5分の中古マンション単価と駅から15分のそれとの差分を10分で割ると、駅から1分遠くなるにつれてどの程度価格が下がるかが分かります。これを各年の推移として示しました(グラフC)。

グラフC

 08年以降、上下動を繰り返しているものの、基本的なトレンドは下落傾向にあり、17年には駅から1分遠くなるごとに中古マンションの成約単価が1平方メートルあたり約1万6000円も下がるという結果になっています。

 08年から14年にかけては同1万円前後の減少だったものが、同1万6000円まで下落額が大きくなっているわけですから、駅から遠い立地の中古マンション価格は年々弱含みの度合いが高まってきていることは明白です。

 首都圏の中古マンション価格はおおむね天井に近くなりつつあるようですが、今後、価格調整トレンドに移行した場合、利便性が重視されがちな中古マンションでは、駅からの距離による価格差がさらに広がる可能性があるでしょう。

 価格が下がりにくい資産を選ぶとき、駅からの距離はやはり重要なポイントのひとつだといわざるを得ないようです。

田中歩
 1991年三菱信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)入行。企業不動産・相続不動産コンサルティングなどを切り口に不動産売買・活用・ファイナンスなどの業務に17年間従事。その後独立し、ライフシミュレーション付き住宅購入サポート、ホームインスペクション付き住宅売買コンサルティング仲介など、ユーザー目線のサービスを提供。2014年11月から「さくら事務所」執行役員として、総合不動産コンサルティング事業の企画運営を担う。

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