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小室哲哉「宇多田ヒカルとiPodが音楽界を変えた」

日経エンタテインメント!

2017/4/24

結果、99年に出たglobeのベストアルバムは265万枚以上のセールスとなったが、宇多田の1stアルバム『First Love』はこの年約736万枚を売り上げ、日本記録を樹立した。21世紀に入るとCD市場は急激に失速。ネットの普及に伴って音楽配信サービスがその役割を取って代わった。ITを早くから音楽ビジネスに導入してきた小室にとって、「iPod」の出現が大きなインパクトだったという。

「01年にiPodが出てきて、音楽との関わり方が大きく変わりました。それ以前のウォークマンは、インドアだけでなく、アウトドアへと場所を選ばずに音楽を聴ける『居場所の変化』を可能にした機器でしたが、 iPodと、それを管理する役割を果たすiTunesは楽曲やアーティスト名や曲名まで全部をデータ化にしたデバイス。あのときアメリカで自分の手持ちのCDをすべてデータ化したのですが、『まだ入るの?』と容量の大きさに驚愕しました。この容量はなかなか1人では埋められない、音楽との距離感が変わっていくのかもしれないなと、ふと思ったりしました。

その頃、ナップスター()などの無料ファイル交換ソフトが出現したんですが、当時から僕は否定しない立場でした。まだCDが現金で売れている時代でしたから、こうしたソフト自体を否定したり、コピーガードをかけようという気持ちももちろん分かります。ただ、新しい技術をどう受け入れるかも考えるべきだったと。あの頃にビットコインのような仮想通貨が存在していて、ネット時代の正当な楽曲の価格が議論されていれば、シングル1枚1000円だったものが、現在のように限りなく無料に近いということにはならなかったかもしれませんね」

CDの売り上げに頼れなくなった00年代。代わってアーティストは、ライブに活路を見いだすようになっていく。

「最近では、アーティストがメジャーデビューを目標にしていないという話をよく耳にします。それより、07年にマドンナが契約したライブネーションのような世界的なエージェントやイベントと直結している組織と組みたがっている。ライブの重要性が高いからこその発想でしょう。音楽やライブ制作は本人が好きなようにするから、契約先はプロモーションやスポンサードに専念してほしいという考え方は、プロのスポーツ選手の契約とちょっと似ているかもしれませんね」

■いつの時代も驚きが大切

「ライブの見せ方、演出面の技術は90年代には出そろっていたと思います。70年代にレーザー光線、80年代にバリライト、90年代に入ると大型ビジョンが登場し、大きなオブジェも飛ばしていた。これらは今のライブでも当たり前のように使われています。昨今人気を集めている大型のEDMのフェスの演出は、まさにこれらを集めたものだと思うんです。有機的な風船や花火などを飛ばし、または、光のような手に取れないものを見せて、さらにはLEDを使った鮮明で巨大な映像を楽しむ。エンタテインメントに求められているのはいつの時代も、この驚きなんだと思います。

もちろん、音響面の進歩もライブの見せ方に影響しています。音響を空中に釣ってもちゃんとお腹に響く音が鳴るようになったり、ギターやマイクなどがワイヤレスになった分、ステージの前後が空いたり自由に動き回れるようになりましたからね。もし80年代にその技術があったら、氷室京介さんのあの(音響システムに足を乗せて歌う)スタイルも生まれなかったんじゃないかな」

※インターネットに接続されたPC間でMP3などのファイルを共有するソフト

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