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小室哲哉「宇多田ヒカルとiPodが音楽界を変えた」

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NIKKEI STYLE

近年は、世界的にEDMが音楽のメインストリームになるなか、エレクトロミュージックを早くから取り入れてきた小室哲哉のサウンドへの再評価の機運が高まっている。世界を股にかけ、時代の先端を見続けてきた音楽プロデューサーには、この20年の音楽業界の変化はどう映っているのだろうか。

「ちょうど98年頃からいろいろなものが予想を上回るスピード感で変化していった。ヒット曲の定義が変わり、パソコンの世界でMP3フォーマットが広まって音楽がデータでやり取りし始められた時期でしたね。

98年の夏は、ワールドカップ公式アルバムに収録された『TOGETHER NOW』をジャン・ミシェル・ジャール(仏音楽家でユネスコ親善大使)とともに作ったので、大会のセレモニーに出演するためフランスに滞在していました。日本代表チームが初出場した大会だったので、サポーターが現地にもたくさん来て声援を送っていましたね。競技場ではサポーターみんなが『CAN YOU CELEBRATE?』を大合唱して、心を1つにしていました。それを眺めながら、音楽って不思議な力があるんだなって思っていましたね。

98年の年末はちょうど日本にいたんですが、デビューしたばかりの宇多田ヒカルさんの衝撃がすごかった。大みそかから元旦に切り替わったとき、テレビで『Automatic』のスポットが大量に流れたのを鮮明に覚えています。宇多田さんは、スラングも交えてネイティブな英語を流暢に話すアメリカ育ちの逆輸入なのかと思いきや、お母さんがすごい人(藤圭子)だったり。プロセスや出自など、どこを取っても斬新。それまでの日本の芸能界のスターとは違って、海外のパパラッチが追うような人たちに近いなと感じました。

当時の僕は、憧れていた海外のミュージシャンの力も借りながら、見よう見まねでできる限りのことをやって、だいぶ近づけたかなという時期でした。でも、そうした枠には収まりきらない子が出てきたんです」

感じた潮目の変わる時期

「世間の宇多田さんへの期待感の高さを実感したのは、globeのベストアルバム『CRUISERECORD 1995‐2000』(99年)をリリースする頃でした。それまでにGLAY『REVIEW』(97年)やB'z『B'z The Best"Pleasure"/"Treasure"』(98年)の前例もあり、ヒット曲が並んでいるベスト盤が一番売れる鉄板のアイテムという時代。僕はプロデューサーという立場から、ベスト盤の最高記録を更新したいという思いもありました。でも、当時はインタビューのたびに『宇多田さんの1stアルバムに勝てますか?』って聞かれて、そのたびに答えを濁していたんです(苦笑)。内心は……今だから言いますが、もしかして潮目の変わる時期なのかもしれないと感じていました。

それ以降は、自分の声で自分の好きな言葉を歌うアーティストが増えていきました。宇多田さんの影響というよりは、彼女をきっかけに、プロデューサーやレコード会社の人の言葉に耳を傾けつつという、音楽業界の暗黙の了解みたいなものがなくなったんだと思います」

結果、99年に出たglobeのベストアルバムは265万枚以上のセールスとなったが、宇多田の1stアルバム『First Love』はこの年約736万枚を売り上げ、日本記録を樹立した。21世紀に入るとCD市場は急激に失速。ネットの普及に伴って音楽配信サービスがその役割を取って代わった。ITを早くから音楽ビジネスに導入してきた小室にとって、「iPod」の出現が大きなインパクトだったという。

「01年にiPodが出てきて、音楽との関わり方が大きく変わりました。それ以前のウォークマンは、インドアだけでなく、アウトドアへと場所を選ばずに音楽を聴ける『居場所の変化』を可能にした機器でしたが、 iPodと、それを管理する役割を果たすiTunesは楽曲やアーティスト名や曲名まで全部をデータ化にしたデバイス。あのときアメリカで自分の手持ちのCDをすべてデータ化したのですが、『まだ入るの?』と容量の大きさに驚愕しました。この容量はなかなか1人では埋められない、音楽との距離感が変わっていくのかもしれないなと、ふと思ったりしました。

その頃、ナップスター()などの無料ファイル交換ソフトが出現したんですが、当時から僕は否定しない立場でした。まだCDが現金で売れている時代でしたから、こうしたソフト自体を否定したり、コピーガードをかけようという気持ちももちろん分かります。ただ、新しい技術をどう受け入れるかも考えるべきだったと。あの頃にビットコインのような仮想通貨が存在していて、ネット時代の正当な楽曲の価格が議論されていれば、シングル1枚1000円だったものが、現在のように限りなく無料に近いということにはならなかったかもしれませんね」

CDの売り上げに頼れなくなった00年代。代わってアーティストは、ライブに活路を見いだすようになっていく。

「最近では、アーティストがメジャーデビューを目標にしていないという話をよく耳にします。それより、07年にマドンナが契約したライブネーションのような世界的なエージェントやイベントと直結している組織と組みたがっている。ライブの重要性が高いからこその発想でしょう。音楽やライブ制作は本人が好きなようにするから、契約先はプロモーションやスポンサードに専念してほしいという考え方は、プロのスポーツ選手の契約とちょっと似ているかもしれませんね」

いつの時代も驚きが大切

「ライブの見せ方、演出面の技術は90年代には出そろっていたと思います。70年代にレーザー光線、80年代にバリライト、90年代に入ると大型ビジョンが登場し、大きなオブジェも飛ばしていた。これらは今のライブでも当たり前のように使われています。昨今人気を集めている大型のEDMのフェスの演出は、まさにこれらを集めたものだと思うんです。有機的な風船や花火などを飛ばし、または、光のような手に取れないものを見せて、さらにはLEDを使った鮮明で巨大な映像を楽しむ。エンタテインメントに求められているのはいつの時代も、この驚きなんだと思います。

もちろん、音響面の進歩もライブの見せ方に影響しています。音響を空中に釣ってもちゃんとお腹に響く音が鳴るようになったり、ギターやマイクなどがワイヤレスになった分、ステージの前後が空いたり自由に動き回れるようになりましたからね。もし80年代にその技術があったら、氷室京介さんのあの(音響システムに足を乗せて歌う)スタイルも生まれなかったんじゃないかな」

※インターネットに接続されたPC間でMP3などのファイルを共有するソフト

早くからエレクトロサウンドを手がけていた小室は、近年のEDMブームも手伝って、PCで音楽を作り、打ち込みサウンドに全く抵抗感のない世代のヒャダインやtofubeatsといった人気の若手クリエイターとの交流も盛んだという。

楽曲の作り方はオープンに

「日本でエレクトロミュージックを手がけたのが、僕の世代が最初だとすると、第2世代が浅倉大介、ヒャダインや中田ヤスタカが第3世代になり、tofubeatsやTeddyLoidが第4世代という感じになるのかなと。ただ、音楽に限らずポップカルチャーは近年、80年代や90年代のリバイバルがあったり、過去のヒット曲はすぐにネットで聴くことができるので、世代間のギャップみたいなものはあまりないように思います。むしろ、クリエイターならではの共通言語みたいなものがあって、それがなければ先輩だって会話には入れない(笑)。そういうフラットな感じなんですよ。

ソロワーク集『JOBS#1』などで一緒に仕事をした若いクリエイターは、僕を目の前にするからだろうけど(笑)、『影響を受けないわけがない』とよく言います。『好き嫌いはともかく、小室哲哉はとりあえず聴いておこう』みたいな感じだったと。でも、それで全然いいと思うんです。教授(坂本龍一)はあまり音の作り方をオープンにしてこなかったのかなと。また、つんく♂さんや秋元康さんも、(音楽制作の元となる機材などの)セッティング部分は公開していませんよね。僕自身は後輩に育ってほしい気持ちがあって機材や音作りに関してオープンにしていた。それを感じて彼らも『まずここから入ろう』となったんだと思います。

今回のアルバムでもいろいろな人とコラボしましたが、音楽はパートナーと組むことで初めて生まれるものがある。今後はそういう何かと組んで作る仕事がさらに多くなると思いますね。先にも話したように、悲しいかな今、楽曲そのものの対価はないに等しい。映画の主題歌とかCMなど何かと組んで1つのエンタテインメント作品にしなければ、音楽は成立しない状況です。ただ、組むパートナーにとっても音楽はなくてはならないものだから、絶対になくなることはありませんが。

パートナーは人でも、他ジャンルのエンタテインメントでも何でもいいんです。仮にゲームと組んだとすると、必然的に今まで僕の音を聴いたことのない膨大な数のリスナーが生まれるのかもしれない。そういう出会いを僕は楽しみにしているんです」

実際、15年はアニメ『パンチライン』のサウンドトラックを手がけ、16年には大森靖子をボーカルに迎えてファッションブランドのCMソングを担当。世界的デザイン集団「TOMATO」のメンバーがオーガナイズするイベントに参加するなど、ジャンルも国境も超えたパートナーとコラボレーションを積極的に行っている。

「音楽と相性がいいパートナーの1つ、スポーツと組み合わさるとすごいことが起きるということを僕が感じたのは、最初に話したフランスW杯でした。閉会セレモニーに向けて、フランス対ブラジルが決勝戦を戦っている間もずっとリハーサルをしてたんです。だから、試合はどちらが勝っているか負けているかも分からなかった。でも、開催国のフランスがゴールを決めるとラジオを聴いている町中のドライバーが、クラクションを一斉に鳴らすんですよ。様々な(音階の)クラクションが重なり合って、まるで音楽のようだなと思ったし、音楽ってすごい力があるんだなと実感しました。

日本では20年に、東京オリンピックが開催されます。きっと母国のアスリートが活躍したらフランスW杯のときと同じように、もしくはそれ以上に盛り上がると思うんですよ。ただ、僕が国事であるサミットのイメージソングを手がけた頃と違って一般の人がたくさんの情報を手に入れられる時代。しかもまだ、ロンドンオリンピック(12年)の素晴らしい開会式の記憶も色濃いとも思うので、担当される方はすごいプレッシャーかもしれません。日本だからこそできるエンタテインメント、ひいてはJ‐POPの力を世界中に示す場になることを期待したいです。

今のJ‐POPシーンを見ると自分で曲や歌詞を書いて歌うだけでなく、SNSを駆使してセルフプロデュースまでする人が増えていますよね。そんな時代だからでしょうが、国内外を問わずプロデューサーはトータルでアーティストを育てるのではなく、トラックメイカーとほぼ同義になってきたなと感じることも増えました。とはいえ、歌うことに特化してプライドを持っているシンガーも少なからずいると思うんです。僕も、そうした方から曲を作ってほしいという要望があれば、きちんとその思いに応えて寄り添える曲を書いていけたらいいなと思っているんです」

(ライター 橘川有子)

[日経エンタテインメント! 2017年4月号の記事を再構成]

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