カレーには生卵は関西の食文化? ゆで卵は関東?
卵(5)
本コラムのスタートを飾った「ソースで天ぷら」から懐かしく読み返してみた。本題以外のところで今日のテーマにつながるような話題が結構登場している。いろんな話をしていたものである。
改めて私たちが作った「食べ物 新日本地図」を見てみると「そう言えばこんなのやったな」と思うものがあるし「もうちょっと違う設問にした方がえがったかな」というケースも散見された。逆に、議論が盛り上がったために地図を作ったつもりになっていたのに、本当はVOTE項目にしていなかったテーマがあることにも気づいた。
例えば「カレーライスに生卵」。関西方面から「当然」の声が多く寄せられていたので、自由軒のライスカレーに代表される関西文化であろうというところで議論は終わっていた。果たしてそうか。
「食べ物 新日本奇行」で検索すると、ある人が「カレーライスに生卵」を調べていて「日経のサイトにちょっと出ているだけ」というような趣旨のことを書いているのにぶつかる。どうも、本格的な調査はなされていなようである。というか、このような調査に金と時間をかけるような人生を選択した人がいないということである。
その種のことを私たちが調べなかったら一体誰が調べるであろうか。地球的規模で考えたら何の役にも立ちそうもないことに、私たちが情熱を傾けなかったら世界の誰が傾けるというのか。国連が何をしてくれるというのだ。
恐らくという条件付きだが、定期的に食べものを題材にした設問に関する地域偏差を算出し、もといエクセルに計算させて地図化しているのは私たちだけであろう。「カレーライスに生卵」地図を作るのは私たちの使命である。義務である。楽しみである。
やるべ。
デスク はいな。
本題である。
こんな宗教が存在したなんて。
我が黄身残し教では、目玉焼きを食する際、いきなり箸やフォークで黄身を崩壊させることは最大のタブーとされております。邪宗門である、目玉焼き黄身まぶし教では、黄身をいきなり崩壊させ白身にまぶすという、神をも恐れぬ行為におよびます。
もとより私ども穏健派は、黄身の自然崩壊や意図せざる箸やフォークの接触による崩壊まで否定するものではありません。しかし、黄身残し教原理主義者は黄身の崩壊した目玉焼きは、すでに目玉焼きの資格を失ったと主張しています。
私ども穏健派は、白身のカリカリ感と黄身のトロリ感を味わうことこそ重要と信じております。
目玉焼き黄身残し教穏健派に入信希望の同人、宗論を挑む同人の方、ご意見をお待ちします(太ったオオカミさん)
次のメールで宗教戦争勃発か。
周りの白身は塩・コショウを軽く振り、少しずつ切り崩して食べていきます。最後に残った黄身の部分を箸でオットットとすくい上げてひと口で食べます。これをご飯にのせてミニ卵かけご飯にすることもあります。
我が家は、カミさんも娘も目玉焼きにはしょうゆです。ただし、黄身を直接すするのは僕だけのようです(ハヤちゃん)
目玉焼き黄身残し教のタブーに真っ向から挑戦し、いきなり黄身に箸で穴を開け、そればかりかぐるぐるかき回すハヤちゃん。しかも躊躇なくすすってしまうのである。いかに目玉焼き黄身残し教穏健派であっても、この行動に沈黙を守ることができるであろうか。って、煽っているわけではない。
目玉焼きに関しては…。
しかしながら、家人や友人にそのことを話すと「おかしいんじゃないの?」はたまた「味覚オンチ?」とまで言われる有様です。どこかに私同様「ウスターソース」で食べる地域はないのでしょうか?
ちなみにゆで卵は「塩」で食べます(宮崎出身 東京在住 TH 男さん)
目玉焼きはしょうゆかソースかという、一見手あかがついたテーマを正面から取り上げているので無論、地図は作るつもりである。私はしょうゆ、ソースを気分によって使い分けている。いまは冷蔵庫に長崎のウスターソースがあるので、目玉焼きを食べるのであれば迷うことなくソースである。あなたは孤独ではない。味覚オンチでもない。全国に仲間が、いや同志がたくさんいるはず。
勇気を出して生きてほしい。希望を失ってはいけないのだ。
で、ゆで卵というのは塩以外に何かつけるものありましたっけ? マヨ? ケチャ? 辛子? カレー? なにー、味噌だって?
デスクぶつぶつ ゆで卵はマヨか塩。目玉焼きは塩。ベーコンエッグはケチャップ。ハムエッグはウスターソース。オムレツとスクランブルエッグはケチャップ、生卵はしょうゆ、だし巻きにしょうゆは邪道。
ベティー隊員 赤い恋人は?
その味噌との相性。
それはそれで新しい食べ方だったのですが、よく考えたら名古屋では味噌煮込みに卵を入れて食べるので、それと同じ感じの卵入り味噌汁は、もちろんおいしかったです。
ですが、その親戚以外で卵入りみそ汁に出合ったことはないです。他にそういう習慣をお持ちの方がいるか気になります(中村さん)
味噌汁に卵は子供のころ大変なご馳走であった。いまでもときどき家で作る。火加減が難しい。火が強いと卵が星雲状態になることがある。弱火でとろとろ煮て、固まったら味噌投入。うう、食べたくなった。
キャベツの千切りやニラでつくる場合は溶き卵。卵とじ風にする。
多分、この食べ方は全国的に行われていることであろう。
(特任編集委員 野瀬泰申)
[本稿は2000年11月から2010年3月まで掲載した「食べ物 新日本奇行」を基にしています]
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