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思いを伝えるエンディングノート 書いた人は少数派? 終活見聞録(1)

2017/3/31

 もしものときに備えて書き残しておく「エンディングノート」は、自分の考えや希望を伝える「終活」の代表的なツールだ。書店にも多数並んでいるので見たことがある人も多いだろう。葬儀や墓、財産の処理といった死後のことに加えて、人生の振り返りや介護が必要になった場合の希望など生前の事柄についても書き留めておく。後に残る家族らのためだけでなく、自分の気持ちを整理したり、周囲との関係を見直したりするのにも有効とされる。だが、実際に書き上げた人は少ないのが現状のようだ。無理なく書くにはどうしたらいいのか。どんな項目を記入しておけば役立つのか。

 「エンディングノートを知っている人、手を挙げてもらえますか」。会場内にいる70人強の人たちの8割近くが手を挙げた。「手に取ったことがある人は?」。挙手は半分ぐらいに減った。「それでは書いたことがあるという人は?」。わずか数人に――。

エンディングノートを独自に作り、書き方講座を開いて啓発する自治体もある(横浜市磯子区)

 ちょうど1年ほど前、横浜市磯子区で開かれたエンディングノート書き方講座のひとこまだ。同区では2012年3月にノートを作成、横浜市民向けに無料で配布している。配ったのは延べで7000冊。書き方講座も4年間で180回を数えた。

 「最大のポイントは書くことなんですよ」。講座では講師役の区職員らがノートの説明をしていく。全15ページ、資料や解説を減らし、行間を広げるなど書きやすさに工夫した。子どもの頃の思い出をつづるページの説明では、懐かしいダッコちゃん人形の写真や昔の区内の風景をスライドで見せて、興味を持たせるようにした。出席者からは「そんなに難しくなさそう」(60代女性)との声も聞こえた。ここ数年、磯子区のように独自にエンディングノートを作り、高齢者らに無料で配布する自治体が増えている。

■死後だけでなく生前のことも

 エンディングノートが広がったのはここ十数年のことだ。2000年代に入ってからの終活ブームと合致する。書店に行けば各種販売しており、選ぶのに迷うほどだ。価格や厚さなどは様々。2000円以上する豪華版や100ページを超える分厚いものもある。終活や相続などのセミナーに参加すれば、簡単なものを無料でもらえる場合も多い。ノートの内容はおおむね、(1)プロフィール(自分史や趣味、親族表や交友関係など)、(2)財産(預貯金や不動産といった資産、生命保険契約、借入金などの負債)、(3)エンディング(終末期医療や介護、葬儀、墓など)――の3つの部分で構成されている。

 特徴は、葬儀や墓といった死後のことだけでなく、認知症を発症したり、介護が必要になったりした場合の対応や、医療や終末期についての希望といった生前のことについても書き残せる点だ。たいていのノートが生前の項目にもページを割いている。「遺言はこうしてほしいという指示、エンディングノートは迷ったときに自分はこう考えていたというガイドライン」と、終活に詳しい弁護士の武内優宏氏は話す。

 病に倒れたり、亡くなったりした場合の手続きや希望などについて、日ごろから家族など後を託す人と話し合っていれば、こうしたノートは必要ないだろう。だが、近年では一人暮らしだったり、親子が離れて暮らしていたりというケースも多い。たとえ一緒に暮らしていても、会話や交流が少ないということもあるだろう。そんな場合、エンディングノートが思いを伝えるひとつの手段となる。

■いずれ書くつもりでいるが……

いざ書こうとしても、なかなか筆が進まない人も多い

 「2~3回、目を通したが、死んだ後のことを書かなければならないと思うと嫌になってしまって」。東京都内に住む80代の荒木紀子さん(仮名)は、ほとんど手つかずのエンディングノートを見てため息をつく。

 数年前になるが、胆のうの手術をすることになり、入院する前に娘が買ってきてくれた。だが、手術前も今も書けないでいる。「毎日日記をつけている」という荒木さんだが、このノートに関しては「自分に該当するページが少ない」と不満そう。ページ数は多いが、有価証券やローン、携帯電話やパソコン、ペットについてといったページには、書くことがない。親族表やもしものときの連絡先は「いつでも書けるが、まだいいかな」。結局、先延ばしになっている。

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