遺言は自筆より「公正証書」で もめない内容かも大事 プロに聞く「遺言」の話(3)三井住友信託銀行 フェロー主管財務コンサルタント 斧原元治

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遺言書に関する短期連載も今回で最終回。これまでは遺言の効力や主にどんな方に必要になるのかを述べてきました。今回はまとめとして「遺言書の作成の仕方」や「作る際の注意点」を、相続のプロの視点からお伝えします。

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遺言は自分の死後に、財産処分や身分(非嫡出子の認知や後見人の指定など)に関わる意思を実現させるためのもので、法律上の拘束力があります。そのため、遺言書は民法で定められた厳格なルールに沿って書面として作成する必要があり、ルールから外れた遺言書は無効となります。

遺言書の作成方式には、普通の方式と特別の方式(感染症で隔離されている、死がさし迫っているなど緊急事態の場合のみ)がありますが、一般的には、普通の方式である「自筆証書遺言」や「公正証書遺言」で作成されることがほとんどです。

自筆証書遺言と公正証書遺言、どっちがいいの?

自筆証書遺言は「遺言者が、遺言の文言、日付および氏名を全て自分で手書きし、これに押印し作成」するものです。従って、代筆やワープロ、日付印やゴム印を使用したものはそれだけで無効です(ただし将来は財産目録をワープロで記すことを認めようという議論は始まっている)。また自筆証書遺言は、本人の死亡後に家庭裁判所で「検認」という手続きを行って開封しない限り法的に有効になりませんので、注意が必要です。

一方の公正証書遺言は、「遺言者が、2名の立会証人のもとで、公証人に遺言の趣旨や内容を伝え、公証人がそれを書面にし、各人が署名なつ印し作成」するもので、検認手続きは不要です。公証役場は全国に約300カ所あり、公証人も全国で約500名いますので、基本的には全国どこでも作成可能です。

多くの方から「自筆証書遺言と公正証書遺言のどちらがいいでしょうか?」と質問されますが、私どもは数多くの相続事案の経験から、公正証書遺言での作成を強くお薦めしています。

なぜなら、自筆証書遺言は費用もかからず1人で作れるので気軽で便利ですが、相続発生後に検認手続きを行う必要があり、相続人に結構負担がかかるのが実態です。また、肝心の内容についても専門家のチェックが入らず、見よう見まねで作ることも多いため、記述の不備や、税制上のメリットを逃してしまうような財産配分があったりします。実態として、本人が想定した通りの相続が実現しないケースも少なくないのです。

もちろん公正証書遺言は作成に費用がかかる上、公証役場に出向く、立会証人を用意するなど、遺言作成者には負担があります。しかし相続人にとっては、相続発生後の手間がほとんどありません。社会的信用度も高く、相続発生後の手続き(金融機関での手続きや不動産相続登記など)の際には、公正証書遺言であれば非常にスムーズに運ぶというのが実態です。どちらがよいかは明白でしょう。

最大の注意点は「後でもめない内容」にしておくこと

作成方式を決めたら次に行うべきは、(1)ご自身の財産内容の把握 (2)法定相続人の把握および遺贈先(相続人以外で相続財産を遺す人や法人)の検討 (3)遺言書の内容(誰に何を配分するか)の検討――などです。

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