日経ナショナル ジオグラフィック社

英バッキンガム大学のチャンドラ・ウィクラマシンゲ氏は、「トラピスト1のような惑星系で微生物のやりとりが起こるのは必然です」とさえ言う。

幸い、トラピスト1の惑星にはどれも条件さえよければ生命が住める可能性がある。

7つの惑星のうちの3つは、主星から受ける熱が、表面に液体の水が存在するのにちょうどよい量になる「ハビタブルゾーン」にある。それ以外の惑星もほどよい距離にあり、惑星内部の温度がちょうどよく、大気に包まれているなら、同じくらい温暖であるはずだ。

「もしかすると、私たちが予想もしなかったような条件下で暮らす生命体が見つかるかもしれません」とローブ氏。「だから面白いのです。あらゆる先入観を捨てて、トラピスト1の7つの惑星すべてを調べなければなりません」

過酷な旅に耐えられるか

もちろん現時点では、太陽系やそれ以外の場所で実際に「生命の種」が広まったことを示す直接的な証拠はない。一部の天文学者は、惑星の破片にヒッチハイクした微生物が惑星間の過酷な旅に耐えられるか疑問視している。

生命の種は、まず宇宙にまき散らされる原因となる激しい衝突による高温と高圧に耐えなければならない。宇宙空間では、主星からの強烈な紫外線に何百万年もさらされることになる。最後にもう一度、次の惑星に落下する際にも高熱にさらされ、着地の衝撃に耐えなければならない。

先月トラピスト1惑星系の発見を報告した研究チームのメンバーであるスイス、ベルン大学のブライス=オリヴィエ・ドゥモリ氏は、「かわいそうに、この生物は2回も焼かれて、紫外線を浴びせられるのです」と言う。

同じ研究チームのケンブリッジ大学の天文学者アモリー・トリオー氏は、態度を決めかねている。「私自身は懐疑的です。ただ、生命が極端な条件に耐えられることも事実です」

実際、原子炉の中や国際宇宙ステーションの外側で生きていた細菌もいたし、クマムシ(微小な無脊椎動物で、顕微鏡で観察すると丸々したクマのような形をしている)は宇宙空間の真空に10日間も耐えた。南極の氷の中で何世紀も凍りついていた生物が、研究室で息を吹き返したこともあった。(参考記事:「巨大結晶の中に5万年、未知の休眠微生物を発見」)

もっと強力な望遠鏡があれば、トラピスト1の惑星は地球からこんなふうに見えるかもしれない。(ILLUSTRATION BY NASA/JPL-CALTECH/R. HURT (IPAC))

ウィクラマシンゲ氏は、惑星から飛び出したすべての細胞が生き残る必要はないと言う。「植物の種が風にのって飛んでいくのと同じです。ほとんどの種は死んでしまい、ごく一部だけが生き残って子孫を残します。それで十分なのです」

惑星系を発見した研究チームは、ハッブル宇宙望遠鏡や、2018年に打ち上げられるジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡で観測を行うことを計画している。トラピスト1の惑星に大気があれば、強力な望遠鏡で大気中の分子を調べて、生命の兆候を見つけ出せるかもしれない。

1つの惑星上で生命の痕跡が見つかったら、ほかの惑星でも同様の痕跡を探してみるべきだ。それが見つかれば、生命が惑星間を行き来している証拠になる。「トラピスト1の観察は、パンスペルミア説を検証する絶好の機会です」と、ローブ氏。

適切な証拠が見つかれば、生命は個々の惑星で最初から生まれてくる必要がないことになる。生命は、1つの惑星系の中で、もしかすると宇宙全体で、燎原の火のように広がってゆくのかもしれない。

(文 Shannon Hall、訳 三枝小夜子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2017年3月27日付]