モアナ、シング 「歌う映画」が共感呼び、次々ヒット

日経エンタテインメント!

ディズニー新作『モアナと伝説の海』(以下『モアナ』)と、『ミニオンズ』スタッフの新作『SING/シング』(以下『シング』)。2本の洋画アニメーションが、年間興行収入でトップ10クラスの大ヒットとなっている。いずれも登場人物が感情を込めて歌うシーンが売りもの。先に公開されたミュージカル映画『ラ・ラ・ランド』も大ヒット中で、4月には『美女と野獣』実写版の公開も控える。「歌う映画」が人々の共感を呼び、ブームが広がっている。

『モアナと伝説の海』 公開中 配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン (C)2017 Disney. All Rights Reserved.

3月10日から公開された『モアナ』は「興収80億円突破が見える」(ウォルト・ディズニー・ジャパン)、17日から公開された『シング』は「『ペット』(42.4億円)、『ミニオンズ』(52.1億円)を上回る」(東宝東和)と、いずれも好スタート。年間興収トップ10に入るクラスの大ヒットとなっている。それぞれ、詳しく理由を見てみよう。

まず『モアナ』は、南太平洋の島に暮らす少女モアナが主人公。島ではサンゴ礁を越えて外界へ出ることが禁じられていたが、闇が島を覆い始め、モアナは島を救うために外海へ冒険に出る。

観客の共感を呼んだポイントは3つある。1つはモアナのヒロイン像。親から海に出ることを禁じられながらも、自らの心の声に従い、勇気を持って一歩を踏み出し大海原へ飛び出す。ディズニーの前作『ズートピア』はヒロインが夢を信じてあきらめない姿に観客は心を打たれ、76.3億円を記録する大ヒットとなった。『ズートピア』同様、前向きなヒロイン像は今の時代にマッチしている。

2つ目は歌。ディズニー・アニメーションの大きな魅力が歌だが、『アナと雪の女王』(以下『アナ雪』)以降、『ベイマックス』『ズートピア』で流れる歌は主題歌のみ。本作は『アナ雪』以来の、劇中に数々の歌が流れる「ミュージカル・アニメーション」スタイルだ。『アナ雪』では日本語吹き替え版の神田沙也加と松たか子の歌が大ヒットの原動力になったが、本作も同じ。モアナ役の屋比久知奈は大規模なオーディションで選ばれ、主題歌『どこまでも~How Far I’ll Go~』などを劇中で熱唱。モアナと一緒に冒険の旅に出る伝説の英雄マウイを尾上松也、モアナを見守るタラおばあちゃんを夏木マリが演じ、それぞれ歌を披露している。

そして3つ目が海モノ。物語の舞台となっている島および海は日本人にとってなじみが深い。監督は『リトル・マーメイド』のジョン・マスカー&ロン・クレメンツ。ベテラン監督が描く、透き通った海水や青い海、満天の星空、豊かな色彩にあふれた南の島の風景も観客を引き付けているようだ。

動物たちが、歌で人生を変える

『SING/シング』 公開中 配給:東宝東和 (C)Universal Studios.

一方、『シング』は動物たちが人間のように暮らす世界が舞台。取り壊し寸前の劇場支配人バスター(コアラ)はかつての栄光を取り戻すため、歌唱オーディションを開催。悩みを抱える動物たちが人生を変えるチャンスをつかむため、オーディションに挑む。