不動産・住宅ローン

不動産リポート

あなたのマンションを「負動産」にしないために 不動産コンサルタント 長嶋修

2017/3/31

マンションは格差が鮮明になりつつある

 先だって発表になった2017年の「公示地価」では住宅地の下落に歯止めがかかった形となったが、地域ごとの優勝劣敗が著しい。不動産も今後、富を生む「富動産」と所有しているだけで負の資産となる「負動産」との格差がますます広がっていくだろう。

 マイホーム購入は一にも二にも立地選びが重要であるが、たとえ同じ立地・利便性でも足元で格差が鮮明になりつつあるのが分譲マンションだ。

■建築コスト増、大規模修繕にも影響

 用地取得競争の激化による地価上昇に加え、資材や人件費の高騰に伴う建築コスト増大を背景に、価格上昇を続けてきた首都圏の新築マンション市場。この建築コスト増大が影響を及ぼしているのは、実は新築マンションだけではないことをご存じだろうか?

 さくら事務所ではいま、分譲マンション管理組合から「長期修繕計画の見直し」相談が急増している。大規模修繕工事の工事費が高騰し、長期修繕計画を早急に見直さなければならない事態が起こっているためだ。

 相談の多くは、大規模修繕工事が終わってすぐの築12~13年目、あるいは大規模修繕工事をこれから迎える築10年目あたりのマンションから寄せられる。

 前者は大幅予算増となった工事を終え、2回目、3回目の修繕費がまったく足りないことにがくぜんとするケース。後者は大規模修繕工事前の事前(劣化)診断を終え、管理会社からくる予算書の額に驚き、不信感を抱くケースである。計画上3200万円だった工事費が5000万円に、工事範囲を減らしても4500万になるといった具合だ。一般的な管理会社では、5年に1度くらいの頻度で長期修繕計画の見直しを行っている。見直しを行ったにもかかわらず工事費が膨れ上がっていることへの不信感である。

 これにはちょっとしたワケがある。14年の消費増税とそれに伴う前年の経過措置によって13年前半に大規模修繕工事の契約が集中し、資材と人件費の高騰を招いた。長期修繕計画の見直し期間が13年より前に当たっていたマンションは、この動向を加味できていない。

 また、見直しを行う管理会社が使用する施工費データベースが増税前から更新されていない場合も、計画に大幅なズレが起こってしまう。長期修繕計画の見直し時には、管理会社のデータベースがいつ時点のものかもあわせて確認したほうがいい。

 大規模修繕工事前にもしこの点に気づいたら、工事時期の延期や工事範囲の適正な見直し・縮小などと併せ、長期修繕計画を再計画することができる。この先も東京五輪や人手不足から、施工費は上昇圧力を受け続ける。計画や工事内容・工事費用を管理会社任せのままにしているマンションは、近い将来に禍根を残すことになるだろう。

■これまでに以上に問われる「管理力」

 この連載でも何度かお伝えしてきたが、分譲マンションの資産性を左右するのは立地に加え、「管理力」である。管理組合が力を合わせ、マンションを取り巻く様々な課題や建物の維持管理に取り組み、適切な合意形成ができる文化を創り出せているかどうか。

 ここ数年、過去に例をみないスピードでマンションごとの管理力に格差が開きつつある。これから分譲マンション購入を検討されている方は、そのマンションの資産性維持・向上を目指す運命共同体となる意識をもっていただきたい。管理組合の運営状況が活発かどうか、購入前にしっかり確認するリスクヘッジも大切だ。

 長年担当させていただいたこのコラムも、本稿をもって最終回です。長い間ご愛読いただきありがとうございました。あなたと不動産との関係がより幸せなものでありますよう、心からお祈りしています。

長嶋修
 1999年、業界初の個人向け不動産コンサルティング会社「さくら事務所」を設立、現会長。「第三者性を堅持した個人向け不動産コンサルタント」の第一人者。国土交通省・経済産業省などの委員を歴任し、2008年4月、ホームインスペクション(住宅診断)の普及・公認資格制度を整えるため、NPO法人日本ホームインスペクターズ協会を設立し、初代理事長に就任。『「空き家」が蝕む日本』(ポプラ新書)、『不動産投資 成功の実践法則50』(ソーテック社)など、著書多数。4月1日(土)、さくら事務所の春の特別企画セミナー「失敗しないために!マイホームの賢い買い方&選び方」開催。https://www.sakurajimusyo.com/seminar/2017spring

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