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長野五輪の負の遺産 ボブスレー会場、競技使用を停止 維持・改修に巨額の費用

2017/4/15 日本経済新聞 朝刊

老朽化が進むボブスレー・リュージュの競技場(コースは道路と壁の間)

 1998年の長野五輪でボブスレー・リュージュ競技の会場になった施設「スパイラル」を保有する長野市は、2018年度以降、競技使用をやめると発表した。維持管理や改修に巨額の費用がかかるため。五輪は「NAGANO」の知名度向上やインフラの整備につながったものの、20年が経過しても財政負担という負のレガシー(遺産)が重くのしかかっている。

 「20年が経過し『五輪の町』では外国人には通じなくなった。(温泉に入るサルの)スノーモンキー・タウンの町長だと説明した方が理解が早い」。竹節義孝・山ノ内町長は自嘲気味にこう話す。同町にある志賀高原は、長野五輪でアルペンスキーなどの会場になった。

 同町は五輪施設の整備のために発行した町債約55億円の償還を今年の2月にようやく終えた。「借金がようやく終わって福祉や教育に重点化できる」と竹節町長はホッとした表情を浮かべる。同町は施設の大半が仮設だったため、負担はまだ小さい方だ。今でも重い財政負担に苦しんでいるのが、多くの施設が集中した長野市だ。

 多くの施設の中で最も負担が大きかったのがスパイラルだ。維持管理費に国の補助金1億円を合わせて毎年2億2千万円を拠出している。「選手と観客を合わせて年間6千人ほどの利用者しかいない競技施設を維持する意味がどれだけあるのか」と、市の専門家会議は2月に休止の方向を打ち出した。

 休止によりスパイラルへの今後10年間の市の負担は、継続した場合の21億円から1億9千万円程度まで減ることになった。しかし建築後20年を迎えたスピードスケート施設など、残る5施設の改修には約45億円が必要であり、人口約38万人の都市には極めて重い負担だ。

 スキー・ジャンプのラージヒル団体で、日本が金メダルを獲得したジャンプ競技場がある白馬村。五輪に向けた集中投資の影響で、収入に対する借金返済の割合を示す実質公債費比率は18%を超え、新たな借金に国などの許可が必要になる状態が11年度まで続いた。競技施設の借金返済は14年度に終えたが、総合本部になった建物の償還を終えるまでには、あと10年程度かかる見通しだ。

 ただ各自治体にとって、こうした重い財政負担の見返りが全くなかったわけではない。五輪の前年には長野新幹線(現北陸新幹線)がJR長野駅まで開通し、首都圏との「距離」は大きく縮まった。山ノ内町や白馬村の周辺は道路整備が進んで利便性が大きく向上し、今では訪日外国人(インバウンド)でにぎわうようになっている。

 長野五輪閉幕から3週間後、当時の塚田佐・長野市長はインタビューで「頭が痛いのはボブスレー会場のスパイラルだ。競技人口が少なく利用頻度が上がりにくい」と答えている。五輪に限らず「宴のあと」をどうするのか。税金を投入する以上、自治体にはそこまでにらんだ計画が求められる。

(長野支局 佐伯遼)

[日本経済新聞2017年3月27日付朝刊に加筆]

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