人は短期ではもう勝てない? AIが資産運用の主役に

日経マネー

──雑ぱくな質問ですが、10年たったらどんなことが起こりますか。

 プロフェッショナルの運用の世界では、人間の意思決定が相当減っていると思います。短期のトレードはもちろんそうでしょうし、長期のアセットアロケーションにしてもそうでしょう。

 人間は、自分自身が最終的な判断を下すのではなくて、結論を導くアプローチを選ぶのが大事になる。どんなAIを使って結論を得るのか、といいますか。

──人間の運用者がいなくなる。

 そうではありません。ただ役割は変わってきて、一人の人間がその人の勘だけで動かしていくというのが劇的に減っていくのではないか。AIも含めたいろんな情報をベースに、人間が最終的には判断するというのはあると思う。完全機械化というのではなく、機械が担う役割が増えてくるというのであって、全部の仕事が、つまり予想から実行まで完全に機械が行うというわけでは必ずしもないのです。

──個人投資家にはどういう影響が考えられますか。

 儲けられる人が減っていくというのはあり得ます。特に短期取引は機械の割合が増えていくので、機械に取られるような戦略の人はだんだん勝てなくなっていく。スピードではかないませんから。

 ただ、戦略は無数にあるので、まだ機械が読み取りにくいような戦略をやっている人は生き残るでしょう。でも5年、10年たつとどこかでそれを認識する機械ができるかもしれません。

個別株はまだまだ大丈夫

──どんな必勝戦略も、いつかAIが気が付いて、やり始める可能性があるということですね。

 そうですね。

 でも、私も株式投資をやりますが、個別株の細かいところまで考えると、まだまだ人間が取れるところはたくさんあると思いますよ。

──それはほっとします。

 機械がそこまで勉強できないというのか、機械を使った運用の対象になってないと言った方がいいかもしれませんけれど。

 今は、やはり機械の運用対象は比較的流動性が高いもので自動取引が可能なもの、為替とか。株ならば先物やインデックス。つまり、CTAがやるようなコモディティーは機械も取り入れやすいのですが、売買がそんなに多くなく、公開情報が少ないような日本の個別銘柄みたいなところまではAIも追い付いていない、というかそんなところまでやっている人はまだほとんどいないと思います。

 ただ流動性が高い株はいずれ機械がカバーするようになる可能性はあります。まだ人間がやれるという領域も、5年10年たつうちには次第に侵食されていくことにはなっていくと思います。

──しかし、良い銘柄は基本的には上がっていくものだから、人間がもうけられなくなるというわけではないですね。

 そうですね。

 それから、うまい具合に株価の上げ下げでもうけるというのは難しくなると思いますが、ある程度下がったところで買っておこう、というような単純な戦略は意外とワークする可能性がありますよね、小難しいことをしなくても。

 仮にAIが、下がったところで買ってしばらく塩漬けで持っておくのがよいと判断したとしても、そんな取引を実行に移すというのは、ファンドとしてやりにくいかもしれませんから。

(日経マネー 嶋田有)

[日経マネー2017年5月号の記事を再構成]

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