目玉焼きにはソースかしょうゆか ハムエッグはどう?
卵(1)
これまで皆さんのことを「読者」と呼んでいた。しかし、いただいた大量のメールに目を通していて思ったのである。「読者の皆さんでいいのか?」
これまでも、私と皆さんは「書く人」と「読む人」という単純な関係ではなかった。皆さんからいただくメールがなければこのサイトは存在し得ない。メールに書かれた内容から新たな発見があり、次の展開が生まれてきたのである。これからもそうであろう。
今後は皆さんのことを「同人」と呼ばせていただく。オフ会は「同人会」とする。名刺を作るのが趣味の方は「食べ物 新日本奇行同人」の名刺をこしらえても構わない。笑われても知らないけどね。
どうじんてそんなことするの? などと聞かないでいただきたい。そうしたいのである。
デスク沈黙 ……。
ベティー隊員立ち去る ……。
では、本編たまご。早速いってみよう。
実家にはウスターソースなるものは存在しないそうです。妻の実家はみんなしょうゆをかけて食べるのです。ちなみに義父は福島県、義母は東京都出身です。このときから私の目玉焼きのためだけにウスターソースが妻の実家に置いてあります。
結婚して15年になりますが、ウスターソースの開封後の賞味期限は何年あるのでしょうか(横浜の元大分県人 鶴さん)
でも東京じゃあしょうゆが一般的みたいで…そのせいで失いたくない恋を失ったり…。"信じられない!"たぁ何だよ!? しょうゆなんかかけたら塩っぱくなり過ぎるだろーが! 大体ベーコンの塩っ気が…。
…すいません。つい取り乱してしまいました。
コレで全国地図ができませんかね? かなりはっきり分かれそうな…分かれ…わかれ…別れそうな…嗚呼!別れそうな!
今は独身だけど、しあわせだからいいもん!(半ライス大盛りさん)
「目玉焼きにかけるのはソースかしょうゆか、それとも」というのは当サイトを始めたころからぽつぽつご提案をいただいていたテーマである。ぼちぼち本格的にやろうかと思っている。恐らく東のしょうゆ、西のソースという結果にはなるだろうが、意外な盲点が存在するかもしれない。
鶴さんの驚きはよく理解できる。何度も書いていることではあるけれど、東京の私の家の冷蔵庫にあるウスターソースは私専用である。家族は全員、中濃派。
目玉焼きにウスターソースをかける度に私の家庭内孤立が鮮明になる。
半ライス大盛りさんとデスクは気が合うかも。
デスクうんうん僕もしょうゆはかけない。塩気のないプレーン目玉焼きは塩で、ベーコン付きはケチャップで食います。ハムエッグはソースかな。ウスターも可です。しょうゆは生卵だけでしょ。僕も独身だけど、しあわせがほしいなぁ……。
ベティー隊員 目玉焼きには塩、こしょうをするので、しょうゆもソースもかけません。オムレツには時々ケチャップをかけることがあるけど。
そのオムレツ。
義母は義父に昔、オムレツにケチャップをつけたら離婚すると言ったらしい。後に実際離婚しました~。ホントにケチャップのせいだったのか?(足の遅いジョンソンさん)
卵料理に何をかけるかという問題は、洋の東西を問わず、死活的に重要であるらしい。こじれると「別れ」が待っている。
熟年離婚の半数はコレが原因だったりして。
生卵でも。
それに生の卵にはサルモネラ菌がいるから、町のダイナーでもレストランでも、卵には完全に火を通してからでないと客に出してはいけないのだそうです。半熟目玉焼きはダメダメ君だそうです。
卵かけご飯がどうしてもどーしても食べたかった私は、車を30分ほど走らせ、隣の州にある日系のスーパーまで行き、生で食べても大丈夫と日本語の説明書がついている、えらくお高い卵6個入り1ケースを買って、元ダンナが止めるのを聞かずに、家庭内民族大戦争勃発も厭わず、白いご飯に卵をかけてしょうゆをちょっとたらし、むせび泣きながら食べたのでした。元ダンナのワタシを見る目が、その日から少し変わったような気がしました(東京のあさちゃん)
もひとつ、米国の卵かけご飯。
実際は平気なんですが、初めて卵かけご飯をしたときは勇気がいりました。これはやはり与えている餌の違いなのでしょうか。
私の地元(熊本県最北部の市)では、黄身のことを「きみ」ではなく「きなみ」と呼んでいたような気がします。少なくとも私の実家はそうでした。野瀬さんの地元、久留米ではどぎゃんでしたか?(オクラホマンさん)
私は以前から疑問がある。すなわち「日本以外に生卵を食べる国があるのか」ということである。もう随分昔のことだが、寿司屋で生に近い牛肉の「たたき」を握ってもらったところ、隣りの多分米国人の男性客がお目々ぐるぐるの口あんぐりで見ていた。
刺身に限らず、豆腐でもなんでも日本人はいろんな生ものを口にする。これって日本に特異的な食文化なのか。
外国在住、あるいは在住経験者の同人の皆さん、教えていただきたい。
ベティー隊員そういえばタルタルステーキって生肉じゃなかったかしら。生卵をのせたりしますよね。
デスクん? タルタルステーキは元々蒙古系のタタール人の料理ですよね。韓国ではユッケ。韓国は生食多いですよね。僕はタコの躍り食?いが大好きです。口の中で「あぁ、吸い付くぅ!」って感覚が大好き。
それから久留米では黄色は「きないろ」である。「信号はきないろばってん渡ろ」などと言う。運動会の黄組は「きなぐみ」である。黄粉が「きなこ」であるように。
卵の黄身は「きなみ」なのだが、「いつでーもお いつーでもお 黄身だあけえをー」と西郷輝彦の歌の替え歌を口ずさむときだけは「きみ」である。
デスク頭を抱えて ダジャレはともかく、そもそも西郷輝彦って古過ぎない? 辺見えみりのパパですよ。若い同人は知らないんじゃないかなぁ。
(特任編集委員 野瀬泰申)
[本稿は2000年11月から2010年3月まで掲載した「食べ物 新日本奇行」を基にしています]
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