ベンツに7番目のSUV スタイリッシュなクーペ型投入
メルセデス・ベンツ日本は2017年2月22日、東京・六本木のメルセデス・ベンツコネクションで新型SUV「GLCクーペ」をお披露目し、受注を開始した。税込み価格は627万~910万円だ。グレード構成は「GLC200クーペ」「GLC200クーペ スポーツ」「GLC220d 4MATICクーペ スポーツ」「GLC250 4MATICクーペ スポーツ」「GLC350e 4MATICクーペ スポーツ」「メルセデスAMG GLC43 4MATIC クーペ」。
現在、メルセデス・ベンツがラインアップするSUVは国内最多の6車種だが、その中でも2016年2月に発売された「GLC」が好調だ。特に新規ユーザーの獲得に大きく貢献しているようで、約6割のオーナーがGLCが初めてのベンツ車で、ほとんどが初めて買ったSUVだったという。この好調を受けて、クーペタイプのGLCクーペを投入しSUVを7車種に増強したのだ。
また今回、より価格を下げた2WD仕様のGLCの新エントリーグレード「GLC200」と、人気が高いクリーンディーゼルモデル「GLC220d 4MATIC」を新たに追加。その他のグレードでも装備の追加を発表しており、GLCクーペと併せて一気にSUVの販売増を狙う模様だ。また、メルセデスAMGモデルを除き価格も戦略的で、GLCの同等グレードから30万円アップの範囲にとどめている。
クーペのようなデザインながらSUVの実用性
今回追加発売されたGLCクーペは、ルーフの後半をクーペのように絞り込んだスタイリッシュなシルエットを持つモデルだ。インテリアデザインや動力性能などはGLCと同じで、メルセデス・ベンツの中核モデル「Cクラス」と同等の先進安全装備や快適装備を搭載している。低いルーフラインになっても元来5ドア仕様なこともあり、後席でも大人が快適に過ごせるスペースがある。またラゲッジ容量は通常時で500Lとゴルフバッグ3つは入る大きさで、後席を倒せば最大1400Lまで拡大できるなど、SUVとしての実用性も十分に配慮されている。
4WDは必要ないという層に向けた2WD車、環境性能がウリのクリーンディーゼル
エントリーグレードとなるGLC200クーペは、GLCクーペの中で唯一、後輪のみを駆動する2WD車だ。184ps/300Nmを発揮する2.0L直列4気筒ターボエンジンに9速ATを組み合わせている。
エントリーといえど装備は充実しており、メルセデスの先進安全運転支援システム「レーダーセーフティ」、照射範囲を調整し、最大限の視界を確保する「LEDインテリジェントライトシステム」、自動ステアリングで駐車を支援する「アクティブパーキングアシスト」、自動開閉テールゲートなどを標準で備える。SUVに興味はあるが、必ずしも4WDを必要としない人向けのグレードだ。なおGLC200クーペでもSPORTグレードはスポーティーなAMGホイールやAMGスタイリングパッケージ、スポーツシートなどが追加される。
クリーンディーゼルを搭載するGLC 220d 4MATICクーペは、170ps/400Nmを発揮する2.2L直列4気筒BlueTECエンジンに、9速ATを組み合わせた4WD車だ。パワフルだが経済的なモデルで、尿素水溶液AdBlueを使用し、世界的に厳しい日本のディーゼル排出ガス規制にも適合する環境性能の高さもウリだ。こちらもAMGスタリングパッケージなどを備えたスポーツの選択が可能。
上級グレードとなるGLC 250 MATICスポーツは、ガソリン仕様で211ps/350Nmを発揮する2.0L直列4気筒ターボエンジンに、9速ATを組み合わせる。走行状態に合わせて車高を自動的に調整してくれる電子制御式エアサスペンション「AIR BODY CONTROL」を標準装備している。
高性能モデルとなるメルセデスAMG GLC43 4MATICは、メルセデスAMG専用開発の3.0LのV6ターボエンジンを搭載。367ps/520Nmを発揮し、0-100km/h加速は4.9秒だという。また4WDシステムやサスペンション、ブレーキシステムなどメルセデスAMG専用に開発されたシステムを採用しており、エンジンパワーを生かしたスポーティーな走りが楽しめる。
プラグインハイブリッドモデルも用意
GLC350e 4MATICクーペ スポーツは、211psのGLC250 4MATICクーペと同じエンジンに、116ps/340Nmを発生する高出力モーターを組み合わせたプラグインハイブリッドモデルだ。システム全体では320ps/560Nmと、数字だけ見ると高性能モデルのGLC43 4MATICクーペに迫るパワフルさ。もちろんEV走行も可能で最大走行距離は30.1kmだという。またリチウムイオンバッテリーの充電時間はAC200Vの電源を使用した場合で約4時間。さらに走行中に自己充電を行う「CHARGE」モードを使用すれば、1時間以内でフル充電となるという。ハイブリッドモードの燃費消費率は13.9km/L(JC08モード)をうたう。8.31kWhというリチウムイオンバッテリーを搭載しながらも、ラゲッジ容量は他グレードと同様にゴルフバック3個を収納可能だ。
GLCクーペはSUVユーザーの主力にはならない
GLCクーペの魅力はなんといっても特徴的なスタイルだ。特にエントリーグレードのGLC200クーペは個性派SUVを求める街乗り中心のユーザーに強く訴求すると考えられる。
しかしSUVを選ぶ人は使い勝手を大切にする人も多いはずで、開口部と荷室床がフラットでアクセスしやすく、最大1600Lのラゲッジルームを備え、さらに価格もわずかに安い「GLC」がメルセデス・ベンツSUVの中心であることに変わりはないだろう。新エントリーグレードの追加も好調の後押しとなりそうだ。またメルセデス・ベンツには小型の「GLA」から本格派の「Gクラス」まで、SUVだけですでに6車種があるわけで、GLCクーペ自体が大きな販売増に貢献することはないと見られる。
とはいえ今まさに人気のSUV市場には、各社が続々とニューモデルを投入しており、個性がより求められる段階に入ったのも事実。メルセデスSUVのブランド感と多様性をアピールするうえで、GLCクーペが果たす役割はそれなりに大きくなりそうだ。
(文・写真 大音安弘)
[日経トレンディネット 2017年3月14日付の記事を再構成]
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