リンネ庭園で育てられている花に受粉をしているマルハナバチ。今も自然受粉で数百年前の種を保っているらしい

リンネの自宅だったところは今でも植物園として公開されており、リンネが採取した植物が今もそこの研究員によって育てられている。リンネ生誕300年となる2007年には、天皇陛下もここを訪れたそうで、陛下にお目にかかったウプサラ在住の友人達から自慢のメールが何通も届いた。

もちろん、そこで暮らす草花や虫たちは、300年前から育てられているとは思っていないだろう。人間だけが生物に歴史を見いだし、尊んでいるのであるが、300年の歴史を感じ取れる植物園というのも世界的にはあまり多くないため、ウプサラで必見と言えるポイントである。

北欧の覇者が眠る大聖堂

ウプサラ市街を通っている道は、一般的なヨーロッパの街と同じく入り組んでいて必ずしも分かりやすいものではない。それでも迷うことがめったに(ほぼ)ないのは、街の中心にどこからでも見つけられる「大聖堂」があるからだろう。北欧最大級で高さが120メートルもある塔を持つ大聖堂は、街中の至る所から見つけることができ、夏の白夜のシーズンで太陽から方角を推測できない時期でも迷うことはない。

私は17年前に初めてこのツインタワーがそびえ立っている姿を見たとき、あまりの大きさに圧倒されたのを覚えている。私たち夫婦がウプサラに住んでいるとき、冬至の頃に開かれる「ルチア祭」をこの教会に見に行ったことがある。昼でも薄暗くて寒い季節に白装束の女の子がろうそくを頭に付けて歌う姿があまりに神秘的で、それ以来「冬の北欧も悪くないですよ」と勧めることにしている。「この教会が見える範囲に来るとウプサラに戻ってきたぁと感じるよ」と研究者仲間に話すと、人種も宗教も違う私にそう感じてもらえるのは、大変光栄なことだと言われた。

この教会には聖エリクやグスタフ・バーサといった、北欧の覇者であった時代のスウェーデンの王が眠っており、上述のリンネも家族とともに眠っている。リンネの墓は教会内の床にあり、多くの人に踏まれているところに、日本と全く異なる文化を感じる。私は仕事がらヨーロッパの色々な街へ行くが、これほど荘厳な教会は見たことがない。

清らかな解剖台

大聖堂の向かいには、かつての大学講堂であった建物を使った歴史博物館「グスタビアヌム」がある。ウプサラの歴史(文化史や科学史)を中心とした常設展示だけでもかなり満足のいく内容だが、なんといっても見どころは最上階の解剖台であろう。