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カリスマの直言

中国経済 強みは血気盛んなベンチャー(加藤出) 東短リサーチ社長チーフエコノミスト

2017/3/27

中国ではスマホアプリを利用した様々なサービスが急拡大している(写真は出前サービスの配達員。上海で筆者撮影)
「先週、上海に滞在したが日本にはない強烈なアニマルスピリッツが感じられた」

「中国経済は実際のところどうなっているのか?」と疑問を持っている方は多いと思われる。筆者は先週、上海に滞在していたが、日本にはない強烈なアニマルスピリッツ(血気)があらためて感じられた。中国発の経済不安の可能性は当面低いと予想させるものだった。

短期的な動きを見てみると、昨年来、中国経済は拡大傾向を見せている。中国人民銀行(中央銀行)は当面の景気回復に自信を持っているため、不動産バブルや不健全な金融商品をけん制し、かつ米連邦準備理事会(FRB)の利上げで人民元の為替レートに下落圧力が加わらないようにするため、上海銀行間取引金利(SHIBOR)を市場参加者が驚くほどのペースでこのところ引き上げてきている。

他方で、中国経済は長期的には大きな課題を多々抱えている。そのひとつが、国内の過剰債務問題だ。昨年、国際通貨基金(IMF)はその問題が危険水域に達していると警告するレポートを発表した。借金を無節操に拡大して危うい投資を膨張させてきたのは低収益の「ゾンビ国営企業」である。

■「ニューチャイナ」の拡大が軟着陸の鍵

ただし、IMFは(低成長移行後にバブルが破裂した日本の1990年代初期と異なって)中国経済が中成長を続けている今のうちに改革に着手すればソフトランディング(軟着陸)は可能と助言した。

実際、中国政府はその「指導」も参考にしながら昨年から国営企業の整理に着手している(その結果、石炭や鉄鋼の過剰生産が縮小し、生産者物価のデフレ傾向がインフレ傾向に大きく転換した)。今後は、習近平体制が国営企業を中心とする「オールドチャイナ」の整理に一段と踏み込んでいくことができるか、その際の痛みを吸収するために、サービス産業がけん引する「ニューチャイナ」を拡大していくことができるかが注目点となる。

ここでは以下、後者の「ニューチャイナ」の現状を見てみよう。先週の上海滞在で感じたのは旺盛なアニマルスピリッツだ。例えば、この半年で上海などの大都市部でレンタル自転車(シェアリング・バイク)が爆発的に拡大している。事前にスマートフォン(スマホ)にアプリを入れて登録しておけば、道端に止まっている自転車にいつでも乗ることができるというシステムである。

大手の「Mobike」の場合、自転車は全地球測位システム(GPS)で管理されており、ハンドルやサドルの下にあるQRコードを利用者がスマホで読み取ると、鍵が自動的に解除される(ライバルの「ofo」はより簡易な技術を採用している)。利用が終わって鍵がロックしたら、利用時間や料金がスマホの画面に表示される。自転車はどこにでもある歩道の一般的な駐輪エリアに乗り捨ててよい。利用代金はアリペイ(支付宝)などのモバイル決済で自動的に決済される。

こういったレンタル自転車が昨年春ごろから消費者の間で高い人気を博し始め、新規参入業者が激増した。今、上海に行くと、歩道の至る所で、信じられないほどの数のレンタル自転車が氾濫しているのが見える。英紙フィナンシャル・タイムズによると、2月末時点で上海で45万台あり、その大半はこの半年で増加したものだ。歩行者の邪魔になったり、景観が損なわれたりとトラブルが続出し、社会問題と化している。

もともと利用代金は安いが、シェア拡大競争のために赤字覚悟で大幅割引や無料キャンペーンが度々実施されている。供給過剰なこの状態で「業者はどうやって生き残るのか?」と不思議がる声が市民の間から聞こえた。「業者は客から保証金(99~299元程度)を預かっているので、それを理財商品などに投資して運用益を得ているのではないか?」「利用者の個人情報をどこかに売却して利益を得ているのではないか?」と警戒する声も聞かれた。

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