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ビジネス街の書店をめぐりながらその時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は定点観測している街を離れて池袋に足を延ばした。新宿、渋谷と並ぶ大繁華街だ。大型書店が多く立地するが、そのうちの一つ、東武百貨店内にある旭屋書店池袋店を訪れた。ビジネス街の書店とは違い、メインの平台では料理本などの実用書や読み物が目に付く。そんな中で大きく売り上げを伸ばしていたのは人気予備校講師によるビジネス教養書だった。

地理から読み解く世界経済

その本は宮路秀作『経済は地理から学べ!』(ダイヤモンド社)。著者の宮路氏は代々木ゼミナールの地理の人気講師で、地理がわかれば現代社会が見え、経済ニュースの「なぜ」「どうして」がより深く理解できるとして、本書を著した。「なぜ、トランプ大統領は環太平洋経済連携協定(TPP)から離脱するのか」「今後、中国経済が伸び悩む地理的背景とは」――こんな話題を地理的アプローチで1項目4~6ページで小気味よく解説した内容だ。

著者によれば「経済とは土地と資源の奪い合い」という。この角度から地理の知識を補助線にして各国の経済戦略や貿易構造を見ていくと、なるほどと膝を打つことがたくさんわかるのだ。例えばロシアの最大輸出相手国はどこかと著者は問う。答えはオランダだ。その地理的なファクトから、ロシアの原油がオランダに行き、オランダで加工された石油製品がライン川や運河を伝ってドイツやフランスへと輸出されていく貿易構造が解き明かされる。欧州が最大の輸出先ということなのだが、国レベルに落とし込むとオランダという一見小さな国がクローズアップされ、欧州内の河川物流の重要性も見えてくる。こんな形で地理から見えてくる経済を、立地、資源、貿易、人口、文化の5章に分けて44のテーマについて語っていく。

入門書的な内容ではあるが、普段あまり意識しない国や資源、人口動態、自然環境などから世界のつながりが見えてくるので、世界経済のアウトラインを確認しておくのにちょうどいい。ダイヤモンド社は他にも『経済は世界史から学べ!』を刊行している。「ビジネスマン向けの基礎教養書が売れる流れがあり、ビジネス書でもあり一般教養書でもあるつくりが売れ行きにつながっている」と店長の丑田恒行さんは話す。ビジネス書の棚端の平台にトランプ米大統領の関連本などと並べているほか、売れ筋の実用書やノンフィクションを特集した平台や、レジ脇の平台にも展開し、売れ行きを伸ばしている。

『嫌われる勇気』が再浮上

それでは、先週のベスト5を見ておこう。

(1)経済は地理から学べ!宮路秀作著(ダイヤモンド社)
(2)「言葉にできる」は武器になる。梅田悟司著(日本経済新聞出版社)
(3)嫌われる勇気岸見一郎、古賀史健著(ダイヤモンド社)
(4)税金恐怖政治が資産家層を追い詰める副島隆彦著(幻冬舎)
(5)はじめての人のための3000円投資生活横山光昭著(アスコム)

(旭屋書店池袋店、2017年3月13日~3月19日)

堂々の1位は紹介した『経済は地理から学べ!』。2位、3位にはロングセラー2冊が並ぶ。『「言葉にできる」は武器になる。』は昨年8月刊行で、ビジネス街でも強いが、繁華街でも根強いロングセラーぶりだ。3位の『嫌われる勇気』は心理学者アドラー人気の火付け役の1冊で、2013年12月の刊行。長く売れ続けてもいるが、これを原作にしたテレビドラマが放映中で、改めて売り上げを伸ばした。4位は多作の評論家の最新作で、「副島氏や長谷川慶太郎氏の新刊はランキング上位の常連」(丑田さん)という。5位は昨年6月刊の投資の入門書。株・投資関連の本も同店では定番の売れ筋で、息も長い。

(水柿武志)

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