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民泊新法、ヤミ防止に効果 営業日数が参入の妨げにも 弁護士・大城聡氏に聞く

2017/4/11 日経産業新聞

訪日外国人の増加でホテル不足が予想されるなか、民泊の需要は高まっている(岐阜県高山市)

 訪日外国人の増加を受け、空き家などに旅行客を有料で泊める「民泊」の整備が進みつつある。特区での開業を認める2015年12月の規制緩和に続き、政府は今国会に民泊新法を提出した。国内外の事業者も参入に向けた準備を進めている。民泊に関する制度などに詳しい東京千代田法律事務所(東京・千代田)の大城聡弁護士に現状や今後の課題を聞いた。

 ――民泊の需要など現状はどうなっていますか。

 「訪日外国人が増えており、制度よりも民泊の実態が先行している。民泊仲介大手の米エアビーアンドビーの登録は16年末で4万件というデータもある。旅館業法での認可を得ていない『ヤミ民泊』が行われている可能性が高いが、正確な実態は把握できていない」

 ――民泊関連の法整備について教えてください。

 「合法的に民泊を開業するには3つの方法がある。1つ目は簡易宿所の許可を取る旅館業法。2つ目は条例で定められた民泊特区の活用だ。東京都大田区と大阪市、北九州市などが対象で、最も先行している大田区でも16年末までの認定が28施設と数としては多くない。3つ目はまだ実現していないが、今国会で提出された民泊新法だ。厚生労働省と観光庁が主導する検討会で16年、議論されてきたものだ」

 ――なぜ特区型が伸び悩んでいるのでしょうか。

 「特区型には当初、政令で6泊7日以上という制約があった。16年10月に2泊3日以上に政令は改正したが、大田区の条例は改定していない。6泊7日以上でないと使えないのであれば、利用者がかなり限られてしまう。また民泊新法も成立する見通しなので、それまでは様子を見てから参入・登録をしようと思っている事業者も多いのではないか」

 ――民泊新法はどのような内容になりますか。

 「新法では民泊に家主居住型と家主不在型の類型がある。物件だけではなく管理業者と仲介業者を適正に規制するものだ。家主居住型は原則として住民票が必要になる。家主不在型は管理業者が登録制で、衛生面の管理を担う。仲介業者を登録制にしたのも民泊新法のポイントの一つだ。無許可の民泊を仲介する事業者には登録の取り消しや立ち入り調査の可能性がある」

 「新法はヤミ民泊を防ぎ、民泊の透明性を高めるだろう。届け出れば民泊を始められるようになるため規制緩和にもなる。つまり安全性を担保しつつ民泊の活用が広がることが期待されている。実態が分からない現状を解消し、新しいビジネスチャンスとして合法的に位置づけられる」

 ――新法で民泊の拡大に弾みがつきますか。

 「年間の営業日数の上限は180日になる見通しだが、その制約が民泊への参入を妨げる可能性がある。家主居住型で国際交流として民泊を行う場合は問題ないだろう。だが、家主不在型では営業日数の上限があると、民泊より賃貸した方が不動産の利回りが良いという判断もあり得る」

 ――新法成立で、民泊に関わる制度設計が固まるのでしょうか。

 「新法が成立すると3つの制度が併存するため、特区とのすみ分けが課題になる。特区で最大のネックであった6泊7日以上という制限は2泊3日以上に緩和された。180日の上限がある新法よりも営業日数の上限がない特区の方が使いやすくなる場合もあるだろう。そうなれば特区の方が広がるかもしれない」

 「特区と新法の関係がどうなるのかは流動的だ。民泊の提供者や利用者、近隣住民のニーズを捉えて制度を修正する必要がある」

 ――民泊を運営する上での課題は。

 「民泊の一番の問題は制度と実態が乖離(かいり)している点にある。検討会で議論をしてきたときにはすでに民泊の活用が拡大していた。現状では法整備が不十分で、合法的には旅館業法の許可を得るか特区でやるしかない。民泊新法ができれば3つの制度が併存する形になり、一本化は難しい。民泊の手軽さなどそれぞれの良さがきちんと出せる形に制度設計できるかが問われる」

 「民泊利用者の騒音など近隣住民とのトラブルは増えている。管理や仲介の責任を明確にすることでトラブルを未然に予防できるだろう。民泊新法など法整備が進めば改善されると期待できる。事前の周知やトラブルの相談窓口を明確にすることが大切だ」

 ――既存のホテルや旅館もあるなかで、民泊は拡大するのでしょうか。

 「東京五輪・パラリンピックが開かれる20年までに訪日外国人数は4000万人に達する可能性が高い。ホテル不足が予想され、受け皿が必要だ。民泊の方が特色のあるサービスを提供しやすい。外国人にとっても、ホテルや旅館にはない体験が得られるだろう。現在の特区は主に外国人向けだが、日本人も出張などでホテルの予約が難しくなっている。民泊の良さを生かせるようになれば日本人の利用も広がるだろう」

 「ホテルや旅館、民泊と選択肢に多様性があることは、経済全体を強くする。民泊と既存の宿泊施設は特色が異なり、競合というより補完関係にある。利用者や近隣住民にリスクがある現状は改善すべきだが、民泊の芽をつぶせば新しいビジネスチャンスや文化もなくなってしまう。適切に規制しつつ発展させる必要がある」(聞き手は清水孝輔)

 おおしろ・さとる 1998年中大法卒。2008年弁護士登録、東京千代田法律事務所入所。不動産に関する民事・行政事件を多く手がけ、ホームページで民泊の動向についてコラムを連載。豊洲市場用地購入に関する住民訴訟の原告弁護団事務局長も務める。

[日経産業新聞2017年3月21日付]

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