桜が似合う姫路城 ロケ地満載・神秘のパワスポを巡る
水津陽子のちょっとディープ旅
桜の季節を迎えました。全国各所に桜の名所はありますが、桜の花が映えるお城といえばやはり、純白の国宝・姫路城ではないでしょうか。「日本さくら名所100選」の一つにも数えられる姫路城は、保存修理工事で生まれ変わった大天守を約1800本の桜の回廊が彩ります。姫路には、ハリウッド映画「ラストサムライ」のロケ地にもなった神秘のパワースポット「書寫山圓教寺(しょしゃさんえんぎょうじ)」もあります。国宝の城と桜、そして知られざる聖地。ベストシーズンの旅に出かけました。
最高にフォトジェニックな城と桜
1609(慶長14)年に建築された姫路城の大天守は、6年にわたる保存修理工事を終えて2015年3月に公開が再開されました。当初は「白すぎる」という声もありましたが現在では色合いもなじみ、優雅な姿は見る人を魅了します。この季節、お城やお堀の周りはソメイヨシノをはじめ八重桜、枝垂れ桜などが咲き乱れ、管弦とともに桜を楽しむ「姫路城観桜会」など風雅なイベントも多数開催されます。
普段は入れない夜の姫路城西の丸庭園を無料開放する「姫路城夜桜会」など、大天守の周りだけでなく、内堀や中堀など、ライトアップされた桜とお城が織りなす幻想的な姿があちこちで堪能できます。
中でも一番のフォトジェニックなスポットは、動物園正面入口からまっすぐ進むと見えてくる赤い橋「城見橋」。戦国時代きってのプリンセス、千姫ゆかりの地には花の名所も多く、「千姫ぼたん園」では約2000株の大輪の花が咲き誇り、化粧櫓や長局を見上げる水辺の散歩道「千姫の小径」では初夏、美しい菖蒲が見られます。
姫路市作製の「姫路城さくらの大回廊ルートマップ」には6つのおススメコースが紹介されており、ワンコイン100円の「観光ループバス」ではお堀の周りを約10分ほどで巡ることもできます。一日券300円を利用すれば何度も乗り降り可能で、点在する名所や人気の撮影スポットを巡ることができ、駅とお城の行き来も楽ちんです。
ちなみに、姫路城は外国人観光客にも大人気で、桜の季節は混雑が予想されます。入城(有料)が規制される場合もありますが、混雑状況はウェブサイト「国宝姫路城大入り実況」で確認できます(姫路公園は無料、出入りは自由です)。
知られざるパワースポット、実はロケ地銀座
姫路市の郊外、JR姫路駅から約8キロメートルのところにある書寫山圓教寺は、966年、性上上人(しょうくうしょうにん)が開山した「西の比叡山」の異名を持つ天台宗のお寺です。2003年公開のハリウッド映画「ラストサムライ」や2014年のNHK大河ドラマ「軍師官兵衛」など、話題の映画やドラマのロケ地としても注目を集めています。
しかし、その存在を知る人はまだごく一部。その神秘的な世界をご紹介しましょう。
書写山へ行くにはJR姫路駅から路線バスで「書写山ロープウェイ」乗り場へ向かいます。神姫バスターミナルでバスとロープウエーの往復乗車券がセットになったお得なセット券を買いましょう。バスの所要時間は片道30分ほど。ロープウエーは4分弱で山上駅に到着します。
書寫山圓教寺は山全体が聖地。「この山に登る者は菩提心を起こし、峰に棲む者は六根を浄められる」という文殊観音のお告げを受けた上人が悟りを開いた白山権現など、山内はパワースポットが点在しています。境内は国指定の史跡で、国指定重要文化財13棟、国指定仏像9体など多くの文化財を有します。
山上駅から開山堂(奥之院)までは歩いて30分ほど。緑あふれる参道には寄進奉納された仏像が並び、途中さまざまな堂塔に迎えられます。まず入り口近くにある「慈悲の鐘」をついて、圓教寺の正門となる「仁王門」に向かいます。途中には姫路城や姫路市内、晴れた日は遠く淡路島まで見わたせる展望台もあります。
仁王門より先は聖域。美しい木漏れ日の道を歩くうちに心が洗われ、すがすがしい気持ちになります。たどりついた岩山の中腹に建つ「摩尼殿(如意輪堂)」は、京都の清水寺と同じ壮大な舞台造りで見るものを圧倒します。摩尼殿に上がると巨木も見下ろすほどの高さがあり、食事ができる「はづき茶屋」や「放生池」が小さく見えます。ここだけでもため息が出るほどの神聖な雰囲気なのですが、摩尼殿裏に進むと、ラストサムライでトム・クルーズ演じる主人公が日本で過ごすシーンの撮影が行われた国指定重文の三つの堂、その先の奥之院には開山堂が待っています。
特に常行堂・食堂(じきどう)・大講堂の三つの堂建築は、壮麗で神秘的な空間をつくり上げています。ほかに類を見ない長さ40メートルの食堂、精緻でありながら壮大な大講堂、常行堂の中央には大講堂の本尊・釈迦三尊に舞楽を奉納するための舞台が設けられています。三つの堂がコの字型に立ち並び「三之堂」(みつのどう)を形成する姿は、まるで一つの宇宙を見るような感動を覚えます。三之堂から奥之院へは歩いて3分ほどです。
書寫山圓教寺の魅力はほかにも、座禅や写経体験、「寿量院」の精進料理、心も体も健康になる1泊2日の健康道場など、ご紹介しきれないほど。見どころ満載の聖地なのです。
姫路は「ご当地グルメ」の宝庫
心身ともにリフレッシュした後は食べ歩く楽しみも。姫路は独特のご当地グルメが充実しているのです。
まずはアーモンドバターをパンに塗ってこんがり焼くアーモンドトースト。「秘密のケンミンSHOW」「SmaSTATION」など多くのメディアで取り上げられて話題の「カフェ・ド・ムッシュ」はアーモンドバター発祥の店として知られています。
ちょっと意外なのは「姫路おでん」。おでんにショウガじょうゆをかける食べ方で、姫路を中心に関西の限られた地域で古くからあるようです。始まりには諸説ありますが、大正末期から昭和初期にかけて、甘辛い関東煮の味をショウガじょうゆで調整した食べ方が、後に薄味の関西風おでんにも浸透したとか。市内には70年以上続く「かどや食堂」などの人気店があります。
※カフェ・ド・ムッシュ http://www.muche.jp/ :姫路店、網干店、新在家店があります
合同会社フォーティR&C代表。経営コンサルタント。地域資源を生かした観光や地域ブランドづくり、地域活性化・まちづくりに関する講演、コンサルティング、調査研究などを行う。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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