肉と焼酎が最高 ふるさと納税全国一の街
宮崎県都城市
何かと話題のふるさと納税。最も多く寄付を集めた都市をご存知だろうか。それは宮崎県都城市。肉と焼酎と霧島山系の大自然が自慢の街だ。2015年度、都城市が集めたふるさと納税の寄付額は42億3100万円で、全国1位になった。16年度も上半期の集計でトップを守っている。人気のお礼商品はともに生産額日本一を誇る焼酎と肉だ。牛、豚、鶏そろって生産日本一だと聞けば、ぜひ現地で食べてみたいし、焼酎の蔵元も訪ねてみたい。
薩摩藩の流れをくんだ焼酎生産
都城市は宮崎県の最南端に位置し、鹿児島県と境を接している。江戸時代は島津藩の配下にあり、今も文化圏は完全に鹿児島だという。焼酎は江戸時代、琉球王国と密貿易をしていた薩摩藩から広がった。都城の焼酎生産も薩摩藩の流れをくんだものだ。周囲を雄大な霧島山系に囲まれ、その伏流水が都城の大地を潤す。焼酎も肉も野菜や果物も、みんな高千穂峰など霧島山系のもたらす山の幸に他ならない。
都城には現在、4軒の焼酎酒蔵がある。最も大きいのは今や全国区になった霧島酒造だ。生産額日本一になったこともあり、都城市内での販売シェアは90%を超える。
2代目はエンジニア出身
創業は1916年、昨年100周年を迎えた。2代目社長がエンジニア出身で、伝承されていた杜氏(とうじ)の技術をデータ化、機械化し、蒸留機を独自に開発した。1日あたり80トンのサツマイモと16トン分の米麹(こうじ)から、一升瓶4万本分の焼酎を生産している。工場見学者は年間6万人、専用のガイドが丁寧に説明してくれる。
霧島ブランドの焼酎では黒霧島、白霧島が有名だが、現地に行くと茜霧島、金霧島といった珍しいラベルも目にする。試飲させてもらえるのだが、酒が強くない筆者は、あまり違いがわからず、豚に真珠状態だったのが残念だ。
最古の歴史を誇る柳田酒造、芋、米、麦、そば、ゴマと多彩な焼酎を作る都城酒造など、4つの酒蔵はそれぞれ特徴がある。観光客に人気なのが最小の大浦酒造だ。機械化された酒蔵が多い中、ここは手作り焼酎を看板にしている。
事前に申し込めば、米に麹菌を練り込む「麹もみ」と呼ばれる作業を体験できる。作業場は室温37度、湿度80%、混ぜたりこねたりする米は手にずっしりくる重さで、10分もすると汗だくになる。麹菌は繊細なので、前日は納豆やヨーグルトは食べないように指示される。
宮崎ステーキを堪能
都城の誇るおいしい肉を堪能するなら、地元観光関係者お薦めの店が「まえだ」(市内山之口町)と「松葉ごろん亭」(市内高野町)だ。まえだは築100年超の古民家をそのまま生かし、食器も明治、大正時代の名品を惜しげもなく使っている。宮崎牛ステーキのほか、地物の取れたて野菜、果物、卵を使った手料理が評判だ。ごろん亭は日向地鶏の炭焼きが人気だ。
腹ごなしにちょっと歩きたいと思ったら、日本の滝100選にも入った「関之尾滝」に足を延ばそう。この滝を源とする庄内川は、国の天然記念物である関之尾甌穴(おうけつ)群で有名だ。
滝のマイナスイオン
甌穴とは24万年前の火砕流による溶結凝灰岩が、長さ600メートル、幅80メートルに渡って広がり、そこに流れ込む岩石によって数千もの穴が生まれたもの。巻き込むように清流をたたえる数多の甌穴は神秘的な美しさがあり、関之尾滝のマイナスイオンを浴びながら、いつまでもたたずんでいたい場所だ。
家族連れなら高千穂牧場がいいだろう。坂本龍馬が新婚旅行で訪れ、山頂の逆鉾を引っこ抜いたと伝わる高千穂峰を臨み、放牧された牛や羊が点在するのどかな風景を楽しめる。絞りたての牛乳やヨーグルト、ソフトクリームもおいしい。高千穂峰は天照大神の孫にあたるニニギノミコトが降臨した天孫降臨の山とされ、遠くから眺めても雄大さの中に、どこか荘厳さを感じさせる。
1つ500円のきんかん
宮崎の果物といえばマンゴーが浮かぶが、きんかんも有名だ。「たまたま」というブランド名で、東京都心部の高級フルーツ店で1つ500円の値がつくこともある。
大きいものはピンポン球くらいあり、皮ごとかぶりつくと驚くほど甘い。市内高城町の内山農園では観光客にも直販している。ビニール袋いっぱいのきんかんが1000円程度で買え、お得感がある。
都城市は最近、鹿児島経由で訪れる台湾からの観光客も増えている。市内中心部に大型ホテルも建設中だが、関係者一推しの宿は、市内山田町の常盤荘だ。温泉もあり、繁華街から離れているため、何より静寂の中に身を置くことができる。
(編集委員 鈴木亮)
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