「NASU WINE」とアルファベット表記のモダンシリーズもプロデュースする一方、今回花見ワインとして紹介したいのは、初代から受け継いだクラシックシリーズ。右から文字を読むと「純粋生葡萄酒」と書かれた昔ながらのラベルには、桜の紋章がついている。ナイアガラ種という食用ぶどうから造られたワインは、花蜜のような甘い香り。香りの甘さに反して味わいはすっきりとした辛口だが、凝縮した果実味が口いっぱいに広がる。余韻に感じる塩気が食欲をそそり、ついついつまみに手が伸びてしまうこと請けあいだ。130年前、日本で「ワイン」が普及するずっと前にも、こうして「葡萄酒」を飲みながら桜を見たのだろうか。忘れかけていた古き良き日本を思い出させてくれる1本だ。

▼渡辺葡萄園醸造 ナイアガラ 2016 
販売元:NASU WINE 渡辺葡萄園醸造 TEL0287-62-0548 
希望小売価格:1850円(税抜き)

ワインの「一番搾り」桜色が魅力の甲州ワイン

五味葡萄酒の近藤修通(こんどう・のぶゆき)さん

グラスに注いだ瞬間、白ともロゼともいえぬはかなく美しい色合いに心奪われた。五味葡萄酒の「ペントピア 甲州 桜花 2016」は、まさに桜の花びらを思わせるワイン。スモモやかんきつの爽やかな香りと、りんとした味わいが心地よく、するすると身体にしみ込んでいく澄んだ味わいだ。

山梨県甲州市にある五味葡萄酒は、家族経営のワイナリー。ホームページもなく都内でも販売ルートが限られているため知名度は低いが、日本ワインコンクールでも多数の賞を獲得している実力派である。山梨で長年ワイン造りに携わり業界での信頼も厚い近藤修通(こんどう・のぶゆき)さんを2015年から栽培・醸造責任者に迎え、これからの進化がますます楽しみなワイナリーでもある。

ソメイヨシノをイメージしたという淡い桜色は、日本固有のぶどう品種、甲州種の皮を果汁に漬け込むことで、引きだしている。ただし、ワインは酸素にふれてどんどん変化していくもの。熟成したワインが茶色になっていくように、この桜色も失われてしまうのでは、と疑問をぶつけると、「キレイな桜色が保てる期間内に飲んでいただける生産量にします」と近藤さん。目指すのは、雑味のないクリアな香味。そのため醸造にはフリーランジュース(ブドウの実の果皮が破けたときに自然に流れ出る果汁)のみを使用し、酸素にできるだけ触れさせず、酸化防止剤も最小限にとどめているという。2016年が初リリースで、少量生産。桜に映える時期、ワインの桜色が一番きれいなときに飲みたい「桜花」は、諸行無常を愛する日本の美意識がこめられた1本だ。

▼五味葡萄酒 ペントピア 甲州 桜花 2016 
販売元:五味葡萄酒株式会社 TEL0553-33-3058 
希望小売価格:2200円(税抜き) 
甲州市勝沼ぶどうの丘オンラインショップ http://budounooka.com/shop/

人気ワイナリーの季節限定「さくらろぜ」

日本ワインはここ十数年ほどで飛躍的においしくなったといわれるが、そのパイオニアの一つが、栃木県足利市にあるココ・ファーム・ワイナリーだ。日本ワインをふだん飲まなくても、ここのワインは知っている、という人は多いのではないか。毎年11月に開催される収穫祭は、朝から大勢の人でにぎわっている。もともと知的障がい者支援施設「こころみ学園」の前身となったぶどう畑の開墾からスタート。1980年代、米国人醸造家ブルース・ガットラヴ氏が加わったことにより、「世界に通じるワイン」をめざして本格的なワイン造りが始まった。農作業を通してたくましく育ってほしい、という社会的使命だけでなく、品質にも妥協を許さず徹底した本物志向を貫き、九州沖縄サミット(2000年)、北海道洞爺湖サミット(2008年)の食事会に採用されるほどのトップワイナリーに成長した。

どのワインを飲んでも安定しておいしいのだが、この時期飲むなら季節限定ラベルの「さくらろぜ」をおすすめしたい。さくらんぼやイチゴのような赤い果実に、甘いキャンディー香がふわりと香る。チャーミングでありながら多彩な表情を持つロゼは、赤でも白でもない「ロゼ」ワインとしての魅力を放っている。

▼ココ・ファーム・ワイナリー 2014 さくらろぜ 
販売元:ココ・ファーム・ワイナリー TEL0284-42-1194 
希望小売価格:1700円(税込み) 
公式オンラインショップ http://cocowineshop.com/

女性醸造家がつくる本格派ロゼワイン

もう1本、こだわりのロゼを紹介したい。「グレイスワイン」の名で知られる中央葡萄酒といえば、甲州種を世界に広めた立役者。世界最大のワインコンクール「デカンタ・ワールド・ワイン・アワード」でも名誉ある賞を何度も受賞している。5代目、三沢彩奈さんはボルドー大学卒業後、世界各地でワイン修行をつみ、いまや日本を代表する女性醸造家となった。

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今が飲みごろ、するする飲める微発泡自然派赤ワイン
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