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坂東眞理子さん直伝 脱「いい子」で新型リーダーに

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NIKKEI STYLE

昭和女子大学総長・理事長の坂東眞理子さんは近著『女性リーダー4.0 新時代のキャリア術』(毎日新聞出版)では「いい子」から脱皮して「いいリーダー」になろうと女性たちを鼓舞しています。そこで坂東さんに仕事も人生も楽しむ戦略的リーダー術に加えて、元祖ワーママとしてご自身の子育てなどについてもお聞きしました。(聞き手は羽生祥子日経DUAL編集長)

――坂東さんの新著『女性リーダー4.0 新時代のキャリア術』を通勤中に一気読みして、ものすごく元気をもらいました。新しい女性リーダー像について、すぐに実践できる具体的なアドバイスがたっぷり盛り込まれていますね。

それは、とってもうれしい。今日は何でも聞いてくださいね(笑)。

――まずお聞きしたいのは、女性管理職のスタイルです。男性上司の場合は、たとえば「おい羽生!」と部下を呼び付ければ何となく体裁が保てて統制もしやすくなる。このスタイルを新任女性リーダーが真似して、「おい鈴木」「おい田中」と呼び捨てにするのは難しい。部下の呼び方ひとつでも女性管理職は迷うところです。

部下の呼び方は男性であろうと、女性であろうと平等に「さん」がいいですね。私は「くん」もまずいと思うの。若い世代であれば、女性から「○○くん」と呼び捨てにされることに慣れた男性も増えているけれど、少なくとも私の世代から50歳くらいまでは女性に呼び捨てどころか「くん」呼びも違和感があるという男性が多い。

リーダーは、上下関係よりチーム内での実力が重要

――初めて女性管理職を経験するときには、きちんと統制をとれるか、部下に馬鹿にされないかという不安もあると思うんです。でも、それを解消するのは見かけ上の言葉ではない、と。

そうです。これは私の経験なのだけれど、一般的に、男性上司は「あいつは俺よりも上か下か」ということをすごく気にするの。それを呼び方でもちゃんとアピールしたいのね。でも私は、女性リーダーというのは偉いかどうかの序列よりも、「一緒にいい仕事をする」ことを目的に、部下から一目置かれることが大事だと思っています。

――上下関係よりチーム意識の方が重要で、リーダーの実力で認められることが大切なんですね。

実力にも色々バリエーションがあり、部下から「あの人はすごい人だ」という認められ方ももちろん王道なのだけれど、実は「自分のできないところを上司にカバーしてもらった」とか、「いいところを引き出してもらった」とかそういった一目の置かれ方もあります。人によって目指すリーダー像は違いますが、あまり得意ではないのに無理して強いリーダーを演じなければならないと思う必要はありません。チーム全体がいいパフォーマンスができるよう、自分なりのスタイルをつくっていくことが大事です。

第2子育休復帰後、38歳で21人のチームリーダーに

――坂東さんが初めてリーダーになったときは何歳で、どういった経験をされたのでしょうか。

38歳のとき。日本学術会議事務局情報国際課長という肩書で、21人のチームでしたね。課長補佐は、叩き上げの人柄のいい年上のおじさまだった(笑)。補佐、係長などキャリアの人は3、4人。あとはノンキャリの人という環境でした。

――やはり最初は苦労されたのでしょうか。

当時、周りの男性からも女性からもまだ"まりちゃん"と呼ばれていたので、「まりちゃんと呼ぶのはやめてほしい」とそれだけは頼んだんです。それでもね、部下の人たちは、「坂東さん」って言ってくれるんだけど、上の人からは相変わらず「まりちゃん」と呼ばれたまま。でもそのうち、「ばんまり」さんと呼ばれるようになりました(笑)。

――いいですね、番長みたいで。御意見番の"バン"ですね。

そんな感じでしょうか(笑)。そう、"バン"です。

――最初、課長就任と言われたときはどうでしたか。

そこは民間企業と違って、心の用意はできていましたね。公務員は何年たったら管理職の端っこになるというようなパイプラインがある程度あってキャリアパスができていたので、それほどびっくりしませんでした。ただ最初は、2人目の子どもを産んだ直後だったので大変かなと思ってはいたのだけれど……、実際は管理職になってからの子育てのほうが1人目を産んだときの子育てよりも楽でした。それは、自信を持って言えます。

「時間に制約があるママには、管理職がおすすめよ」

――そのとき、上のお子さんはおいくつだったのですか。

年が少し離れていて、11歳。上の子が生まれたのは、私が26歳で総理府に入省して4年目くらい、係長になる一歩手前のときだったかな。上司から頼まれる仕事の量は多いけれど、実は今考えるとそれほど重要度は高くなかったんです。でも、自分で自由に裁量することができないから、全部自分でやらなければならない。人にお願いできない当時に比べると、課長になってからは「この作業は明日でも大丈夫だから明日に回そう」とか、「会議は3時までにして5時には片付けるようにしよう」とか柔軟に仕事ができるようになってやりやすくなりましたね。

――管理職になることで、時間の使い方が自分でできるようになったのですね。ママでもリーダーに就くことを恐れる必要はないのですね。

時間だけでなく、仕事の配分も自分で裁量できる(笑)。自分の得意な仕事を大いに引き受ける。苦手な仕事は、その分野が得意な人に渡す。これは管理職になるっていいなぁ、と思いました。特に時間の制約のある働くママにとっては、「管理職になっておめでとう」ですよ。

――初めての課長時代には、今でいうベビーシッターさんを利用されましたか。

それがね、当時はまだシッターサービスが多くなかったの。1人目の子育ては、私が管理職ではなかったし本当に大変だった。夫は、民間企業で理科系の人だったから、夜は遅く朝は早くてほとんど家にいなかったんです。同じ高校の同級生で大学も同じ、私は文学部で彼はエンジニア。彼が修士を終わって入社後すぐに結婚したんです。

――当時のことですから、重責もあってもちろん早くは帰って来られませんよね。

特に若い下っ端のときは、自由が利かなくて。人間って恐ろしいもので、その子育て分担がライフスタイルとして定着するのね。あまり違和感も感じず、こんなものだと。それを前提に色々な生活を組み立てたんですけれども、当時はまだ公立保育所が夜6時で終わるような時代だったから、近所の方に迎えに行ってもらって、私が帰る午後9時くらいまで預かっていただくという二重保育をしていたんです。

――その当時の働くママは、皆さん自ら道を切り開いてきたのですね。

公立保育所に入れたのもとってもラッキーだったんですが、二重保育で預かってくださる方をみつけるのは結構大変でした。色々と保育所の方に紹介してもらったり、近所のワーキングママに相談先を紹介してもらったり、個人的なネットワークを一つずつたどって探すというような感じで、今みたいにベビーシッターの会社が色々あるという時代ではなかったんですよね。

チームの良さを引き出し、任せるのもリーダーの力量

――初めてリーダーになられている方への示唆をいただきたいのですが、リーダーになってこれは一番大変だったという最初の壁は何でしょう。その乗り越え方もお伺いしたいです。

日本学術会議事務局情報国際課長というのは、国際会議を主催するための事務方を学者たちと一緒にするのだけれど、理科系専門分野という自分が全く得意でないテーマに関する会の事務局をするのです。その都度ゼロから知識を勉強しなければ単語さえ知らず話もできない。

国際会議なので、英語をもう一度勉強しなければならないとか、新しい知識をインプットする必要はありました。自分の足りない分野を補う努力はその職場に限らず、例えば往復の電車の中だとか、それなりに努力しましたよ。勉強は常にしていかなければいけないけれど、管理職になって自由度が上がったというのが一番良かったですね。自分のやりたいときに勉強できますから。

――リーダーとして大変だったというよりも、不得意な分野の部署であるために、仕事全体の難易度が当時高かったということですね。ということは、坂東さんはもともと、生まれながらのリーダータイプなんでしょうか。

こんなこと話すと恥ずかしいんだけれど、おそらく私は上司からは使いにくい部下だったのではないかと自分では反省しています。言われたとおりに「はいはい」と従うのではなく、「こうしたらどうですか」「ああしたらどうですか」と提案するタイプ。当時から割と本を書いたり、論文を書くのも好きだったから、あいつ全力投球しているのかと嫌味をいう上司もいました。

逆に部下たちからすると私は評判のいい上司だったんじゃないかな。これも部下からすると、あなたが思っていただけでしょと言うかもしれない(笑)。でもね、部下には自分の不得意なところをやってもらっていましたので。尊敬し感謝していたので、チームとして非常にうまく動いていたような気がします。

――信頼したうえで「人材育成する」という坂東さんのリーダー術ですね。

そうですね。これは良い方向に進んだなと印象に残っている管理職経験は、統計局で消費統計課長をしていたとき。家計調査をしたり消費者物価指数などを作っている、統計局の中でも一番のプロフェッショナル軍団が課員で、その道20年30年というベテランたちが多かった。その部署に専門ではない私が課長として入ったんです。

彼らが作った統計は宝の山で、面白いデータが山ほどあるのだけれど、十分には活用されていなかった。だから、毎月物価が上がった下がっただけではなく、「家計調査トピックス」として横断的な集計を始めましょう、と。

例えば、チョコレートの消費が2月にグッと上がるようになったのは1970年代後半からのこと。家計調査の中で教育費の支出がすごく増えたのは、第二次ベビーブームの子どもたちが高校生くらいだったときで、その子どもたちが進学したり就職したりすると減ったというように、人口動態と家計支出の相関を出してみると興味深い分析結果が得られた。新聞に毎月、消費者物価指数を発表するのだけれど、毎月の数字よりも家計調査トピックスのほうを新聞に取り上げていただくようになると、ベテランの人たちはそれをすごく誇りに思って喜んでくれましたね。

――チームのメンバーを生かすということですね。ママリーダーたちにとっては、そういう"育てる"というマインドは得意なはずですので、大きなヒントになりますね。

はい。「わーすごいね。なるほど、こんなこともできるんだ。さすがだね、面白いね」ってね。育てるということは、自分より若くて経験の浅い人に教えるというだけではなく、自分よりも年上で知識も経験も豊富な人に対して、その人たちが今までしてこなかった、やろうと思えばできることを「こんなことできないかしら、やってみよう」とちょっと後押しすることも含まれます。

自分にはできないけれども、彼らにできることをどのように生かすか。その人が得意でない部分をちょっと私がフォローしたり、色々な育て方があるんです。

――そこにはちゃんと、相手をリスペクトして立てるという部分があります。よく褒めるというところも大事なのですね。

今まで、日本の職場の男性管理職の場合はほとんど褒めなかったんですよ。成果をあげて当然だろう、と。でも、きっとこれから若い人たちは、褒めて育てられた世代が多いから、褒められないとくじけてしまうんじゃないかな。

生の感情は咀嚼を 職場は「役割を演じる」くらいに考える

――そこはもう少ししっかりしてほしい部分ですか。

そうね、でもそれを前提として、管理職はなだめたり、すかしたりしないと。それから、ワーママについては私の好みかもしれないけれど、自分の家庭のことや子どものことをたまに言うのはいいけれども、本当に困っている生の感情はあまり言わないほうがいいと思うの。

一つのエピソードとして自分の中でネタにできるくらい、きちんとそしゃくしたうえで言うのはいい。でも、本当に憔悴して、夫は理解してくれなくて私は孤立無援で情けないということを職場で部下に言ってしまうと、それはやっぱり愚痴になってしまいます。

家族のことを全く言わないとまで突っ張る必要はないのだけれど、生の感情のままで不用意に出すのはやめたほうがいい……というのは私の世代の意見かな。

――いいえ、すごくいいアドバイスだと思います。ご本にもありましたが、リーダーになったら「機嫌良くあることが大事」というリーダー論もすごく印象的でした。今おっしゃったようにずかずかと生の感情で入るのではなく、一つのミニショーくらいの感じでどのような役割を演じるのか、ということですね。

そうなのよ! 職場では、こういう役割を演じるんだというくらいのスタンスがいいと思いますね。もちろん中には愚痴を温かく受け止めてくれて、なんて人間的な上司だろうと好感を持ってくれる部下もいるかもしれないけれど、反発したり、嫌がったりする人もいるかもしれない。だから、あまり不用意に家庭のことは言わないほうがいい。そうは言ってもつい本音が出たりするのでしょうが、少なくとも、自分の素のままを職場で通用するとは思わないほうがいいと思います。

――坂東さんにはこれまでたくさんの男性上司がいらっしゃりましたが、男性上司とも戦略的に接されたのでしょうか。

私は末っ子だということもあって、直属の上司からははみ出していて扱いにくかったかもしれないけれど、二段階以上、上のおじさまたちには割とかわいがられたんです。「元気で、一生懸命やっている子」というイメージを持たれていました。

全面的な理解者は、職場の外に1人か2人いれば十分

――男性同士で固まっていて、女性である坂東先生が寂しい思いをしたり、孤立したりするような立場になることはなかったのでしょうか。

それは、おそらく若いときから孤立という状態に慣れていたんですね。「肝胆相照らす友達」なんてものは、職場の外に1人か2人いれば十分。職場に女性1人というときでも、職場には自分を全面的に理解してくれる人を求めてはいけないと思っていました。職場は職場、仕事をする場所なんだと。そういうものだと諦めて、職場の外に自分の話を聞いてもらえたり、理解してもらえる人がいてくださいました。

――それはプライベートでということですよね。悩みを聞いたり、共感しあったり。

でも悩みも、同じ職場でないとあまり細かい部分までは通じないし、面倒臭いでしょう(笑)。毎日会うわけじゃないし、そうこうするうちに3日ほど経つと嫌なことも忘れてしまったりするしね。職場の手近なところに悩みを聞いてくれる人がいると、それこそ生の感情をそのまま出しがちになりますから、ある程度人間関係は距離を置くくらいでちょうどいいんじゃないかと思いますね。上司と部下も、気を許して距離を縮め過ぎることがあるけれど。それもやはりあまりやり過ぎないほうがいいと思う。

――のちのち自分も苦しくなりますものね。あまり近づきすぎると。

いつまでもいい関係が続くとは限らないでしょう。うまくいかなくなったときに、「実はあの上司はこんなことがあったんだよ」と言われても嫌ですしね。

もう一つの私の経験ですが、自分でどうしようもないような悩みや困ったことは、ちょっと風呂敷に包んでそのままそばに置いておく。すると、そのときには本当にどうしようもない、もうおしまいだと思うような大きな悩みでもね、時間がたつと軽くなっていたり、大したことないんだというふうに自分の見方が変わってくることが多いんですよ。

――時間を置いて風呂敷を開けてみたときには、そこまで大変なものでもなかったと。1回そしゃくしてというのと同じで、いったん冷静になるということですね。

坂東眞理子
 昭和女子大学総長・理事長。1946年、富山県生まれ。東京大学卒業。1969年、総理府入省。内閣広報室参事官、男女共同参画室長などを経て、内閣府初代男女共同参画局長。2004年、昭和女子大学教授、同女性文化研究所所長、2007年より同学長。2014年より理事長(学長兼務)、2016年に総長(理事長兼務)となる。

(日経DUAL 加藤京子)

[日経DUAL 2017年2月16日付記事を再構成]

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