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先祖代々の墓の引っ越し、近くに「改葬」 無縁化防ぐ 130万人のピリオド

2017/3/21

 年間130万人もの人が亡くなる多死社会。少子高齢化で、去りゆく人が増える一方、見送る人は減っている。人口構成の変化で「弔いのカタチ」も変わりつつあり、郷里にある先祖代々の墓を自身の生活圏などに移す「改葬」がじわじわと広がっている。

 東京都目黒区に住む会社経営の鉄野元嗣さん(53)、理奈さん(52)夫婦は昨年1月、香川県東かがわ市にあった元嗣さんの父親の墓を東京都港区の霊園に移した。

改葬した墓に手を合わせる(東京都港区の霊園)

 夫婦とも香川県の出身だが、東京での生活が20年以上になる。東かがわ市の墓までは、飛行機を使っても片道3時間かかる。「正月かお盆のときくらいしか帰れず、地元に住む夫の姉に墓を管理してもらっていた」(理奈さん)

 しかし、年を取ったら遠くまでは行けない。2人いる子どもはどちらも娘。「この先、墓がほったらかしになってしまう恐れもある。自宅近くに移そう」と改葬を決めた。

◇   ◇

 現在の墓は自宅から車で20分程度。「行こうと思えばいつでも行ける距離。移してよかった」と理奈さんは話す。

 神戸市に住むプランナーの鹿田章代さん(42)も改葬の準備を進めている。一人っ子で、現在、独身。実家の墓は兵庫県姫路市にある。「同居している両親が高齢になり、これから墓参りに行けるか心配。できれば自宅の近くに移したい」と言う。

 神戸市内の霊園の永代供養墓に移す計画で、現在、費用の見積もりをしている。早ければ年内にも新しい墓に移す予定だ。

 改葬の件数は年々増加傾向にある。厚生労働省の「衛生行政報告例」によると、2015年度の改葬の届け出件数は約9万1500件で、5年前に比べて約30%増加した。無縁墓が改葬された例も約3600件に及ぶ。

 都市部へ人が流出した後も残った人たちで墓を守ってきた地域で少子高齢化が進み、墓の維持が難しくなっている。一方、都市で新たに墓を建てた人たちも、やはり少子化で承継者がいないケースが増えている。都市でも地方でも、放っておけば無縁墓が増えるのは避けられない。

 こうした中で、地方から都市部へ先祖の墓を移す、または都市部でも承継を必要としない永代供養墓などに遺骨を移す改葬が増えている。

◇   ◇

 改葬には大きく分けて4つのタイプがある。(1)遺骨と石碑をまるごと移動(2)遺骨だけを移動(3)たくさんある遺骨の一部だけを移動(4)骨つぼの中から遺骨の一部だけを移動――という方法だ。最も多いのは遺骨だけを移動するタイプで、メモリアルアートの大野屋によると、改葬全体の約6割を占めるという。

 墓の引っ越しは墓石を撤去して更地にし、管理者に返還する必要がある。墓石の解体や更地にする費用以外にも、墓石の廃棄や移設などさまざまな費用がかかる。遺骨を取り出すときや納骨する際の法要などでお布施が必要になる場合もある。

 全体の改葬費用はどのくらいかかるのか。メモリアルアートの大野屋のアンケートによると、新しい墓を建てた場合で平均費用は300万円になる。

■寺から「離檀」、配慮必要 手続き代行サービスも

 改葬をする際に、気をつけなければいけないのは移転元への対応だ。

 墓の多くは、寺院の境内墓地か宗教法人などや自治体が運営する霊園。これらの民営・公営霊園ならば、埋葬証明欄への記入はスムーズに応じてもらえるが、境内墓地であれば、墓を移すことは、寺の檀家をやめる「離檀」になるので配慮が求められる。

 書類への記入は墓地埋葬法に基づいた手続きのため寺が拒む理由はなく、檀家をやめるのも自由だ。だが、「経営が厳しい寺にとって檀家は貴重な収入源であり、檀家の先祖を手厚く供養してきた、という自負が強い」(日本葬祭アカデミー教務研究室の二村祐輔代表)。

 離檀をめぐって話がこじれると、証明欄への記入を拒まれたり、離檀料を請求されたりといった事態もありうる。離檀料に法的な位置づけはないが、高額な請求をされる例もあるという。

 改葬で寺との交渉を円滑に進めたいという人が増えているのに対応し、一連の手続きを代行するサービスを手掛けるところも出てきた。

 冠婚葬祭仲介サイトを運営するユニクエスト・オンライン(大阪市)は昨年10月、代行サービス「お墓のお引越し」を始めた。寺など墓地管理者への移転申し入れ、行政手続き、墓地の撤去・整地までを定額(全国一律24万9000円、墓の区画が3平方メートルまで)で代行する。

(大橋正也)

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