「現場が抱えたささいな問題にこそ本質が隠れている」

大きな報告は放っておいても上がってくる。それでわかったつもりになっていると、とんでもない間違いを犯してしまう。報告には上がってこない、現場が抱えたささいな問題にこそ本質が隠れているし、そこに改善の余地もあるのだと気がついて。

それからはなるべく自分から現場へ赴いて、見て、聞いて、知っておこうと思うようになりました。

寒そうな現場で働く父を「手助けしたい」と思った

父は先先代の創業者が急死したため、24歳で社長になりました。9人きょうだいの長男として、残された祖母と共に弟や妹たちを食べさせていくため、必死になって働いたと思います。

子どもの頃、私が遊び場にしていた工場は木造の吹きさらしで、とにかく寒かったんです。瓶を洗浄するために年中、床が水浸し。全員が長靴を履いて作業していました。

冬はみな、靴下を3枚くらい重ねてはいていたと思います。それでも凍えるほど寒かったので、祖母が「これで温まりなさい」と、大きな芋煮会用の鍋に大量の豚汁を作って差し入れしていました。機械を止められませんから、みんな立ったままでおにぎりを頬張りながら、交代でそれを食べていました。今どきの工場では許されるはずもありませんが、当時はそれが当たり前だったのです。

「会社を継いで大きくしなくては」なんて立派なことは考えませんでしたけれど、「この寒そうな現場で働く父を手助けしたい」と子どもながらに思っていました。もしかすると、あれが私の原点だったのかもしれません。

田中秀子
 1960年東京生まれ。82年山脇学園短期大学英文科卒、博水社入社。働きながら東京農業大学に3年通い、食品醸造や食品分析の基礎を学ぶ。「ダイエットハイサワーレモン」「ハイサワーハイッピー レモンビアテイスト」などのヒット商品を開発。2008年、父親で現会長の田中専一氏の後継者として3代目社長に就任。

(ライター 曲沼美恵)

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