当時は経理や財務のこともさっぱりわからず、税理士予備校で簿記も習いました。

失敗は数え切れないほどしました。中でも忘れられない大失敗は、中途半端にオフコン(オフィスコンピューター)を導入したこと。伝票整理があまりに複雑だったから、誰もミスをしない仕組みを作らなくてはと思い、私が提案し、当時の金額で2000万円近くの投資をして、受発注から在庫管理までを自動でできるシステムを導入したのです。

博水社 社長 田中秀子氏

ところが、これがまったく使いモノにならない。「秀子ちゃん、悪いけどかえって迷惑だわ」と、番頭格の社員さんに言われてしまいました。私が現場のことを十分に把握しないままシステムを発注してしまったことが原因です。

たとえば商品を発送するのに、ふつうは倉庫から小売店へ流れていくと思いますよね。システムも、その前提で組んでいました。ところが、実際は倉庫から倉庫への横移動も多かったんです。

倉庫ごとに在庫管理していたら次の出荷に間に合わない、と現場の裁量で融通し合っていたのを知らないままにシステムを組んでしまったものだから、在庫管理がめちゃくちゃに。製造予定も立たなくなってしまいました。

2000万円近くかけたシステムがおじゃんに

結局、2000万円近くかけたシステムはおじゃん。父は内心、「バカじゃないか」と思ってあきれて見ていたんじゃないでしょうか。オフコンのことなど父はわかりませんでしたから、何も口出しをしていませんでした。私ひとりで大風呂敷を広げて、「これでミスもなくなるし、みんな楽になるわよ!」とやっていたのですから恥ずかしい話です。

「そろばんの方がマシだ」と番頭さんに言われてしまった時はさすがにショックでしたけれど、あの一件で現場を知ることの大切さを学びました。

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寒そうな現場で働く父を「手助けしたい」と思った