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リーダーのマネジメント論

「人事は不公平」に挑むアイリス流の360度評価 アイリスオーヤマ社長 大山健太郎氏(中)

2017/3/21

 ――「360度評価」をかなり以前から導入していますが。

 「360度評価を実施している会社でも、うちほど徹底してやっていないように思います。うちの360度評価は、上司、同僚、部下、それぞれ5人ずつ、あわせて15人くらいで評価します。みんな、自分の上司のことをなかなか悪くかけないから、事実を書いてもらうために、当然公表しないように注意をしています。外部に委託して点数をつけてもらって、人事も見ていません。そうしなければ、『甘辛』が出るというか、評価がゆがみます」

 ――なぜここまで徹底して評価にこだわるのですか。

 「私は勤めたことないけれど、自分が勤めるならどんな会社に入りたいかを考えてみました。それは、目的や目標がはっきりわかり、それに対して正しい評価をしてくれる会社です。その評価が結果的に昇格や自分の待遇につながれば一番いいわけでしょう。それができないのが大企業です。年次で上にあがり、1人1人と脱落して、最後にトップが1人だけ残るしくみです。またそれしかできません。うちの会社は、企業理念にあるように『ちゃんと』働く人にとってよい会社。ぶら下がっている人は大変だから、やめていく。無理だな、ちょっと大変だな、とね。追い越しできる人は喜んで進む。競い合いです」

 「人事とは、不公平なものです。何をもって公平とするのか。成果主義にすると環境要因もあるし、事実であっても公平でもない。能力ももちろん、ないよりはあったほうがいいけれどすべてではない。チームワークなのだから、360度評価で同僚や上司、部下からどう思われているかを見るのも大切。この3つを3分の1ずつにする。360度評価を生かすためにも、平等で公平かはわからないが、このバランスを取っているのです。アイリスの人事評価委員会のメンバーは、2月のうち20日間は、この仕事をしている。だから、うちの会社、2月はあまり仕事ができない(笑)。しかし、それが大事で、何より社員のためにやっているのです。だから、社員は一生懸命がんばってくれる」

 ――サッカーになぞらえた「イエローカード」制度、社員の降格のシステムもありますね。

 「うちの360度評価では、項目ごとに平均点と点数が出ます。仮に100人いれば、必然的に1番から100番も出る。91番から100番の人はイエローカードです。我々は、これを『気づきカード』と呼んでいます。サッカーのイエローカードと同じく、『注意しろよ』ということです。もらった人の多くは『自分はこんなに実績を出しているのに、なぜイエローカードなのか』という。しかし、周りからはこう見られているよ、と」

■今いる人を育てるしかない

 ――起業家の先輩として、ベンチャー経営者に一番相談を受けることはなんでしょう。

 「どこの会社も人材不足といいます。人手不足以上に人材不足で、右腕がいない、優秀な社員がいない、どうしたらいいのかと。しかし、どうしようもないんですよ。なぜなら、経営者が『将来会社をこうしたいから、優秀な人がほしい』といっても、従業員は今の会社の売り上げ、組織や利益しか分からない。ところが経営者は、100のものを120や150にしたい、あんな人もこんな人もほしいし、技術もほしいというばかり。本来は、今いる人を育てていかに仕事をするかが大事なのです」

 「10人いるなら10人を育てる。自分で全部やるんだ、社員は能力がないといわず、まず任せるのです。松下幸之助さんも奥さんの弟を連れてきて創業した。会社が成長して初めて一流の人は入ってくるのであって、親戚や親子ではないかぎり、一流の人が中小企業に最初から入ってくれるはずがない。これが現実です。金がないが人はほしいというのも、ないものねだりです。本当に人がほしいのなら、100万円でも200万円かけても努力しなければ」

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