客席が360度回転 新機軸の劇場オープン、相次ぐワケ

日経エンタテインメント!

この春、都内では劇場オープンや劇場運営への新規参入が相次いだ。3月30日、豊洲にはTBSが運営を手がける「IHI ステージアラウンド東京」がオープン。約1300人を収容する円形の客席と、それを取り囲む4つの舞台から成る劇場で、客席スペースが客を乗せたまま360度回転する。観客が正面を見ていると、舞台のほうがスライドして次の場面に転換していくかのような、これまでにない体験が味わえる。

IHI ステージアラウンド東京は3月30日オープン
約1300席が備わる客席部分が360度回転する。既存の劇場では見られない、演出を取り入れた作品が楽しめる

こけら落とし公演は、劇団☆新感線の『髑髏城の七人』。17年からの1年3カ月を“花・鳥・風・月”という4シーズンに分けてロングラン上演する。公演中の「花」には小栗旬、山本耕史、成河、古田新太らが出演
舞台の四方を客席が取り囲む形式

同じく3月には、芸能事務所レプロエンタテインメントが、客席数100程度の小劇場「浅草九劇(あさくさきゅうげき)」を開業した。こちらは、ホテルや飲食店が併設した“ホテル付き劇場”。「宿泊者が気軽に演劇を楽しみ、観劇後には1階のカフェ&バーで感想を語り合う。そんな交流の場所を目指した」(劇場責任者)。

声優やアニメクリエーターといった育成を手がける代々木アニメーション学院も、劇場ビジネスへと参入。92年の開場以来、数多くの名作が上演されてきた「天王洲 銀河劇場」をホリプロのグループ会社から取得。4月1日から運営を手がけている。

浅草九劇は3月3日オープン。客席数100程度。「演出家など新しい才能との出会いにも期待している」(レプロ)
天王洲 銀河劇場を代々木アニメーション学院が取得。同校は「2.5次元演劇科」も開設。劇場を活用した役者育成にも注力

訪日客の獲得にも期待

こうした新劇場ラッシュの背景にあるのが、会場不足問題だ。昨今のエンタテインメント業界でも、特に活況なのが「ライブ」で、ミュージカルや演劇といった「ステージ」は、「音楽コンサート」と並ぶ人気ジャンル。2015年の市場規模は前年比11.3%増と、急速な成長を続けている(ぴあ総研『2016ライブ・エンタテインメント白書』による)。

昨年は音楽コンサート会場が不足する「2016年問題」が話題を集めたが、実は演劇が行われる劇場も足りない状態にある。TBSは約1300人収容の「TBS赤坂ACTシアター」も運営しているが、「ACTシアターの稼働率は95%。19年まで予定が埋まっている」(TBS事業局の松村恵二氏)。小・中規模の劇場も同様で、「公演内容を考える前に、まず劇場をおさえなければ公演ができない状況」(業界関係者)だ。新劇場へのニーズは高く、「ステージアラウンド東京」「浅草九劇」「銀河劇場」の3劇場とも、すでに17年は完売状態だという。

演劇は、2020年に向けて増加が予想される訪日客の獲得にも期待がかかる。例えば、2次元のマンガやゲームを舞台化した「2.5次元ミュージカル」は、すでにアジア各国で人気が高い。代々木アニメーション学院は、「これまでのストレートプレイやミュージカルはもちろん、協力関係各社とともに2.5次元ミュージカルの公演も行う予定」だという。運営開始後の第1弾公演は、ゴールデンボンバーの喜矢武豊や乃木坂46の若月佑美、伊藤純奈らが出演する2.5次元ミュージカル『犬夜叉』に決まった。

個性を打ち出す劇場の増加と劇場事業への新規参入。ライブ市場はさらなる盛り上がりを続けていきそうだ。

(日経エンタテインメント! 羽田健治)

[日経エンタテインメント! 2017年4月号の記事を再構成]

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