K-POPのBTOB バラードの甘い歌声、女性を癒やす
K-POP新世代ファイル(12)
若手男性グループが次々と登場し、10代20代の女性ファンを中心に新しいブームが起きている現在のK-POP市場。その人気をけん引するグループの一角に名を連ねるBTOB(ビートゥービー)は、平均年齢23歳の若手7人組だ。メンバーは歌やダンスだけでなく、ギターやドラム、ピアノなど楽器にもたけ、英語、日本語、中国語が堪能なメンバーも擁する。日本ではこれまでシングル5作とアルバム1作を発表。事務所によるとシングルで最高15万枚、アルバムで6.5万枚のセールスを記録した。
韓国の所属事務所であるCUBEエンターテインメントは、かつて男性グループのBEAST(11年)や女性グループの4Minute(10年)が日本デビューを果たし、当時のK-POPブームを盛り上げた。日本市場をよく知る大手事務所の所属ということもあり、弟分のBTOBについても日本での積極展開が期待されたが、韓国でデビューした12年以降、13年までは韓国を中心にミニアルバム3作を発表。日本のファンはデビューを待ち望んだ。
日本での初ライブが転機に
そして14年に単独ライブを東京で開催。そこで日本デビューのチャンスもつかむことになる。ライブを主催した日本の音楽プロダクション、キッス・エンタテインメントの代表取締役社長・李成在氏が彼らを初めて見て、その歌唱力と巧みに日本語を操ってファンを喜ばせるトークの実力を評価。日本でのマネジメントと自社からの日本デビューを決めた。同社は17年2月現在でBTOBやBOYFRIEND、若手男性グループのUP10TION、SNUPERなど韓国アーティスト11組を日本で展開している。
甘い声の「ヒーリングドル」
李氏によると、BTOBを最も評価する点は歌唱力、特にバラードを歌い上げる力だという。R&Bやヒップホップが主体のK-POP市場において、その存在感を際立たせるため、15年には韓国でバラード曲をタイトル曲とするアルバムを発売。リードボーカルのチャンソプを中心に、甘い歌声を前面に打ち出したところ、歌で癒やしを与えるグループとして「ヒーリングドル(ヒーリングアイドル)」と呼ばれ、狙い通り、他との差異化をうまく果たした。
ハードなダンスナンバーからバラードまで巧みに歌い分ける技量から、日本でのファン層は、下は10代から、メンバーと同世代の20代を中心に、その親の世代まで幅広く取りこむことに成功している。17年4月からはZeppツアーが決定し、5月に日本でのシングル発売も予定。17年に日本で年間3枚のCDリリースを計画している。
CDは自社レーベルで制作。日本における楽曲のプロデュースは代表の李氏自らが担当し、韓国の所属事務所と直に話して即決するという。K-POP界においては所属事務所とレーベルとの間で音楽性や打ち出し方、スケジュールが一致しないという話をよく聞く。一方、BTOBはマネジメントから音楽制作、CD発売、ライブ、ファンクラブまでを一手に手掛けることで、アーティストのコンセプトにブレが生じず、活動の速度も上がる。これが、目まぐるしくスターが入れ替わるなかでもファン離れを防げている秘訣なのかもしれない。
(日経エンタテインメント! 白倉資大)
[日経エンタテインメント! 2017年4月号の記事を再構成]
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