2017/3/20

都内の美大に在学中から「起業の夢があった」というが、事業資金のこともあり、まず食品会社に就職。「しっかりプランがあればいつ起業してもいいと思った」からだ。

日本各地の祭礼や商店街の「祭り」の企画や支援を手掛けるオマツリジャパンの加藤優子社長

3年間働いてためた数百万円を元手に27歳で独立。「当初は受注が得られるまでの資金を稼ぐために、とにかく各地のビジネスモデルコンテストを受けまくった」と加藤さんは語る。挑戦を重ねるうちに知名度が上がり、徐々に軌道に乗り始めた。

支えてくれる人を信頼

「起業するには仲間が大事。支援してくれる人に信頼して甘えることで、1人ではできないことができる」。加藤さんは起業のコツをこう語る。社のメンバーは当初1人だったが、今は3人に増えた。現在は全国の祭りの情報を集めたプラットフォームづくりに力を入れる。

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 日本政策金融公庫の新規開業実態調査によると、16年度の新規開業者に占める女性の割合は18.2%と過去最高になった。公的金融機関や自治体で女性起業家向けに金利を優遇した貸出制度を設けるなど、制度面での支援も広がっている効果だ。

とはいえ、まだ男女の壁も残る。edison.aiの山浦さんは「子どもがいたら起業はできなかったと感じることが多い」と話す。スタートアップ段階ではわずかなチャンスも見逃すまいと、急な顧客の要望に対応することも多い。実際に共同代表のチュウ氏も2人の子どもは妻がみている。「女性が本当に活躍するには、まだまだインフラが足りない」(山浦さん)

一方、オマツリジャパンの加藤さんは「男性起業家は事業を成功させようと必死で営業し続ける人が多い」と指摘する。これに対し、女性の場合は苦境に直面した時に、自ら全力投球を手控えるケースもあるという。「やると決めたらやる」。起業家としての覚悟が求められている。

時間制約なく働ける環境を~取材を終えて~

取材した2人の女性は生き生きと自分の道をまい進する一方で、起業をめぐる社会の制度を見るとまだ女性の不自由さが完全に払拭されていないと感じる面もある。

最近、結婚したオマツリジャパンの加藤さん。「両親からいわゆる『まごはよ』(孫が早く欲しい)圧力を感じる、事業が安定するまでは難しい」と語る。一般企業では出産・子育てをする女性をサポートする仕組みは整えられつつあるが、起業家の女性への支援はまだ不十分だ。

経済が成長を続けるには新しい製品やサービスが生まれ続けることが必須。起業したいと考える女性の行動を社会の制度がとどまらせているとすれば、大きな損失だ。edison.aiの山浦さんは「香港やシンガポールなどアジアの先進地域では家事手伝いなどが普及し、家庭を持っていても時間制約なく働ける環境がある」と指摘する。結婚や出産、子育て、介護などが働き方を制限することがない仕組みを作ることが重要だ。

(朝田賢治)

〔日本経済新聞朝刊2017年3月20日付〕