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リゾート列車の至福 糸魚川の老舗割烹、大火から復活 温泉ビューティ研究家・トラベルジャーナリスト 石井宏子

2017/3/24

真っ赤な車両が印象的な雪月花

 真っ赤な列車がゆっくり近づいてくると、とても気分が高揚してくる。「『えちごトキめきリゾート雪月花』は、なぜ印象的な赤い色なんですか?」。専属車掌の樋浦重一さんに尋ねてみた。

 「この路線は、地域の人たちが暮らす日常を走ります。山々に抱かれた田園風景や海辺の暮らしを感じる日本海沿岸は、いわば日本の原風景です。そこに一番映える色と考えたのが『朱色』ということです。神社の鳥居は朱色ですよね。あれは自然の中で神様が天空から見つけやすいように塗られているのだそうです」

出発を待つ「雪月花」。時間ぎりぎりまでエンブレムを磨く車掌の樋浦さん

 「雪月花」の車体はラッピングではなく、手塗りで仕上げられている。日本の伝統的な朱色に、銀色のきらめきを練り込んだ「銀朱色」というオリジナルカラーの鉄製ボディー。そこに、何度も何度も色を重ねた手塗りならではの重厚な光沢が、目にした人みんなをワクワクさせる独特な高揚感をもたらしているようだ。

 

■地域の誇りが結集したリゾート列車

 越後の鉄道の歴史は、1886年(明治19年)に直江津から始まった。直江津駅の2番ホームには、今も鉄道スタートの起点の証しである「0キロポスト」が残っている。えちごトキめき鉄道はこの直江津を分岐点として、日本海沿いに糸魚川を経て市振駅までつながる「日本海ひすいライン」と、妙高の山々と田園風景を進み妙高高原駅に至る「妙高はねうまライン」の路線がある。

日本海に沿って走る「雪月花」(2016年、緑の季節)

 この両方の風景を眺めつつ、日本海の恵み、越後の山の恵みが詰まった地域の食事を楽しめるリゾート列車が2016年4月に誕生した。最も新しい鉄道、北陸新幹線の糸魚川駅と上越妙高駅の間を、新潟で一番古い線路がつなぐ、地域の誇りが結集したプロジェクトでもある。

 運行は土日が中心。4カ月先までの月間運行スケジュールが発表されている。午前便は上越妙高駅から糸魚川駅へ。こちらは優雅なブランチ気分でいただく洋食で、ミシュラン二つ星シェフが供する越後上越フルコースだ。午後便は糸魚川駅から上越妙高駅へ。江戸時代から続く糸魚川の老舗割烹(かっぽう)「鶴来家(つるぎや)」の200年の伝統が織りなす和食の三段重。ぜいたくな週末の昼下がりを楽しめる。

■糸魚川大火の被災を越えて

2016年12月22日の糸魚川大火は、発生から鎮火まで30時間を要した

 昨年12月22日、糸魚川市の駅北に発生した大火災によって、「雪月花」に料理を提供している鶴来家も被害を受け店舗が全焼した。5代目店主の青木孝夫さんは、出火当時、年末用の食材の買い出しで東京へ出かけていたそうだ。延焼の連絡を受けて急いで戻ったが、何も持ち出すことができないまま無念にも店舗は焼け落ちてしまった。

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