超軽量登山グッズ5選 1泊2日も日帰りに短縮
登山者の志向や登山スタイルの多様化が進み、なかでも今「ファストパッキング」というスタイルが注目を浴び始めている。
ファストパッキングの軸となるのは「荷物を軽くして、長い距離を快適に歩く」こと。荷物を軽量化することで歩くペースが上がり、その結果、限られた時間のなかで、より長い距離の歩行を可能にする、という考え方だ。
また単に歩くだけではなく、ときにはランニング要素を含むのもファストパッキングの特徴。「宿泊を伴うトレッキング」と「トレイルランニング」が融合した分野というと、イメージしやすいかもしれない。ただファストパッキングという分野はまだ確立されたとは言いにくく、メーカーによって異なる定義をうたっていることもある。とはいえ、新潮流として期待が高まっているのはたしかだ。
1泊2日のコースが日帰りコースになる?
では、ファストパッキングの魅力とはいったい何か。
例えば土日休みのハイカーが登山に出かけるとすると、選択肢は最大でも1泊2日で歩き通せるルートに限られる。しかし、もし通常のコースタイムの1.5倍や2倍のスピードで歩くことができたら、本来2泊3日や3泊4日かかる長距離ルートにも挑戦できる可能性が出てくる。あるいは1泊2日のルートだって日帰りで歩ければ、余った1日はほかの趣味の時間や家族サービスにあてられるのだ。
ファストパッキングによって行動範囲や視野が広がり、それが充実感や達成感につながっていく。そういう意味では、時間に追われる多忙な現代人にとって、理にかなった登山スタイルともいえるかもしれない。
ここ最近は各アウトドアメーカーからファストパッキングを意識したアイテムが次々に登場しており、これからの盛り上がりに期待が膨らむ。
そこで今回は「バックパック」「シューズ」「ウエア」部門から、筆者が「これは取り入れてみたい」と思ったファストパッキングアイテムを紹介する。
ただ軽いだけじゃない。軽さと機能面を両立するバックパック
これまで数多くのバックパックをリリースしてきた英国発の「カリマー」から、2017年春よりライトウエイトをコンセプトにした「エアリアルシリーズ」がデビューする。
このシリーズは単純に軽量化だけを追求しているのではなく、様々なアウトドアアクティビティーに対応するよう、アウトドアギアとしての基本性能や耐久性、快適性のバランスをうまく保ちつつ、軽量化を実現している。
たとえば「ヒップベルト」。軽量モデルとなるとヒップベルトは簡素な作りになりがちだが、肉薄ながらも荷重を腰にしっかりと伝え、包み込むような高いフィット感で安定感を生み出す構造になっている。
ほかにも、メインボディーには高強度で耐久性がありながら軽量なナイロン素材「KS-N100d HT Birdseye」を用いたり、フロントとサイドには伸縮性のあるメッシュポケットを備え利便性を上げていたりなど、軽く仕上げていてもその辺りの配慮はぬかりない。
ちなみに、カリマーのバックパックの中から容量の近いモデルで重量比較をしてみると、 SL35(type I)が920gなのに対し、「リッジ30(type I)」は1400g、「ホットクラッグ 30(type I)」で1000g。カリマーを代表するリッジ30と比べると、500mlのペットボトル1本分も軽い作りになっているのが分かる。
このエアリアルシリーズは、バックパックのほかレインウエアやウインドシェル(防風性を高めたウエア)、ベースレイヤーも春に発売されるというから、そちらも期待大だ。なお、背面長の異なる2サイズを展開している。
重量:920g
サイズ:62×29×26cm
背面長:42cm
素材:KS-N100d HT Birdseye
色:4色
重量:960g
サイズ:62×29×26cm
背面長:47cm
素材:KS-N100d HT Birdseye
色:4色
710gと軽くても強く、ポケットも十分用意
モンベルが発売している40Lモデルの中で最軽量クラスのバックパックが、「バーサライト パック40」だ。40Lという容量ながら710gと軽量にできたポイントは、軽くて強度のある独自の素材「バリスティックナイロン・リップストップ」を表地に使用していることだろう。
この素材は引き裂きに強いのが特徴。仮に岩にぶつけて穴が開いたとしても、そこから生地が裂けていくことはないといい、中身を落とす心配が少ない。30デニールの薄手でありながら、強度を兼ね備える優れた素材だ。
一方で、側面や背面などほかの部分よりもダメージを受けやすい底部は、軽さではなく強度を重視して厚手の生地に切り替えるなど、使用するときの快適性を考えたバランスのよいデザインになっている。
ポケットはボディーとヒップベルトの両サイド、雨ぶたの表と裏の全6カ所に配置。数を減らせばそのぶん軽量化につながるが、使い勝手の良さを考えて十分にポケットを用意しつつ、重量は700g台に抑えているのは本当にすごい。
腰骨の曲線に沿うヒップベルトは体に密着して背面の荷重を分散し、身軽で軽快なファストパッキングをサポートしてくれるだろう。
重量:710g
サイズ:高さ69×幅33×奥行き19cm
背面長:53cm
素材:本体30デニール・バリスティックナイロン・リップストップ/底部210デニール・ナイロン・ダブルリップストップ/背面3Dメッシュ
色:2色
快適性の高さは2層構造のミッドソールにあり
ザ・ノース・フェイスでは、2016年春夏コレクションからアウトドア部門に「ファストパッキング」を追加し、軽量なウエアやバックパックなど多くのモデル展開を開始。なかでもシューズは特徴の異なる6モデルをリリースするなど力を入れている(ちなみに同メーカーがうたうファストパッキングとは、"速く歩く"ことではなく"装備を軽くして軽やかな自由度を得る"ことを目的としている)。
2017年春から登場する「エンデュラス ハイク ミッド ゴアテックス」は、そんな目的を達成するための立役者で、最大の特徴はクッション性と安定性。「XTRAFORM(エクストラフォーム)」という硬さの異なるミッドソールを2層構造にして採用しているのだが、このミッドソールがとにかく優秀なのだ。
ミッドソールの中央部にあるクッション性のおかげで長時間歩いても疲れにくくなるのだが、それだけだと足が左右にブレやすくなる。そこでクッション性のある軟らかい素材の周りにやや硬い素材を配置し、安定感を生み出しているのである。
筆者はひと足先に展示会で試してみたが、2、3歩歩いただけでその快適さを実感。履き心地が良く、とにかく軽やかだった。
写真のモデルはミッドカットだが、ローカットとランニングを想定したモデルもリリースされている。ファストパッキングのような長距離歩行はもちろんのこと、移動の多い野外フェスティバルや街中でも活躍するアイテムだろう。
重量:435g(27.0cm/片足)
サイズ:メンズ25.0~30.0cm、ウィメンズ22.0~26.0cm
防水素材:ゴアテックス
ソール:ビブラム
色:メンズ3色、ウィメンズ2色
通気口がムレを防いで足裏も快適なシューズ!
1964年、高品質のワークブーツ&シューズメーカーとして世界中で知られるレッド・ウィング・シュー・カンパニーの一部門としてスタートした「VASQUE(バスク)」は、アウトドアフットメーカーとして登山靴やトレイルランニングシューズ、ウインターブーツを展開。ファストパッキングに向くモデルも発売している。それが「インヘイラーII GTX」だ。
最大の特徴はアッパーの前後に配置された通気口(ベンチレーション)。防水素材として搭載しているゴアテックス自体にも透湿性はあるが、この通気口を設けることでより効率的にシューズ内のムレを外部に排出し、快適に保つことができる。
実際、短時間履いただけでも足裏に涼しさを感じることができた。ファストパッキングのようにスピーディーに歩くときはもちろん、夏の暑い季節、また雨の日なんかにはこの機能のよさを顕著に体感できるだろう。
重量:約430g(27.0cm/片足)
サイズ:メンズ25.0~28.0cm ウィメンズ23.0~25.0cm
防水素材:ゴアテックス
ソール:ビブラム メガグリップ
色:メンズ2色、ウィメンズ1色
たった110gのウエア。バナナ1本分の軽量防水シェル
最後に紹介するファストパッキングアイテムは、超軽量ウエアだ。
シューズでも取り上げたザ・ノース・フェイスは、レインウエアやボトムスにもファストパッキング志向を反映したアイテムを展開しており、この「ストライクトレイルフーディ」もその一つ。
同メーカー史上最軽量に当たる防水シェルで、重量はたった110g。おおよそバナナ1本分という驚異の軽さであるが、雨や風から身を守る防水機能もある。
また、肩は縫い目のないラグランスリーブで、動きを妨げない。着ていてもゴワつかないし、ストレスフリーな着心地も注目すべき点だ。
山に行く以上、雨具というのは天候に関係なく必須装備だが、晴れの日は出番がないことを考えると、雨具は軽量モデルが求められやすいジャンルだと思う。生地は7デニールの超極薄のため耐久性は弱いが、それをもってしても、荷物の軽量化と身軽さを得られるのはやはり魅力的。羽織っていることを感じないほどの軽さの価値は高い。
重量:110g
サイズ:メンズ・ウィメンズともにS~XL
防水素材:7デニール ハイベント フライウェイト
色:メンズ5色、ウィメンズ1色
(ライター 山畑理絵)
[日経トレンディネット 2017年2月28日付の記事を再構成]
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