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過労死は「好きで仕事をしている人」にも起こる

こちら「メンタル産業医」相談室(6)

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NIKKEI STYLE

日経Gooday(グッデイ) カラダにいいこと、毎日プラス

こんにちは。精神科医の奥田弘美です。前回「『過労』はサイレントキラー 体力がある人ほど注意」では、過労が知らず知らずのうちに私たちの心や体をむしばんでいくことを説明しました。そうした事態を防ぐために経営者が知っておくべきことについて、今日はお話ししましょう。

「好きで仕事をしている人」も過労死やメンタル不調に陥る

私は執筆業をしている関係で、中小企業の経営者の方とよく話す機会があるのですが、そこでしばしば耳にするのが「うちの社員は仕事が大好きなので、自ら喜んで残業している」「労働基準法の縛りはかえって社員の就労意欲の邪魔になっている」といった言葉です。これは過労の恐ろしさを認識していない、大変危険な意見だと思います。

過労死は「好きで仕事をしている人」にも起こるときは起こります。また過労死だけではなく、仕事を継続できなくなるほどの重症な病気(メンタル不調も含む)も、疲労が蓄積すると「好きで仕事をしている人」にだって発生するのです。

いくら仕事が大好きでも、きちんと休息し睡眠をとって疲労を回復させていかないと、疲労はじわじわ蓄積していき、心身をむしばんでいくのです。日本の中小企業系の経営者には、このあたりをご存じのない方がいまだ少なくありません。

自らの意思でスケジュールや仕事内容を自由に設定できる経営者と違って、組織で働く社員は何らかの指揮命令系統に属し管理や制限を受けています。経営者には「仕事が好きでたまらない」とやる気をアピールしている社員でも、必ずといっていいほど「やりたくない仕事」を抱えていて、「無理して働いている時間」が存在するのです。

つまり経営者と雇われている人のストレスの質・量には大きな違いがあるということ。当然ながら企業のトップと雇われている人とでは、仕事のストレスをコントロールできる裁量度(仕事のコントロール度、自由度)に大きな差があり、疲労のたまり具合も比べものになりません。

このことは1979年にスウェーデンのストレス研究の第一人者である心理学者R.A.Karasek氏によって、「仕事の要求度-コントロールモデル」[注1]として示されており、産業医学では昔から認知されている有名な事実です。これは仕事のストレスを、仕事の要求度(仕事の量や質、時間)と仕事の裁量度(仕事のコントロール度、自由度)に分けて考えるモデルであり、次に示す図のように、仕事の要求度が高く裁量度が低いほど、ストレス度が高くなり、心身の不調を最もきたしやすくなります。

[注1]R.A.Karasek.Administrative Science Quarterly. 1979;24:285-311.

ちなみに仕事の要求度とは「集中度、緊張度が高い」「仕事の量が多い、時間がかかる」などと主観的に感じる程度を示し、裁量度とは「どの仕事にどのように取り組むのか、自分で自由に決められる」とか「仕事の段取りを自分でコントロールできる」と感じられる程度をいいます。

経営者のように仕事の要求度が高い仕事でも、裁量度が高い場合はストレスになりにくく、逆にモチベーションアップにつながりやすいとされています。

経営者の中には、「社員より自分の方が責任の重い仕事を長時間ずっとやっている」と思われている方も少なくないようですが、裁量度が圧倒的に高いため社員が感じているストレスの度合いとは全く違うのです。そのことを経営者はしっかり認識しておくべきだと思います。

自らの意思で働いている人も例外ではない

私が研修医だったころに実際に出会った忘れられない患者さんがいます。その方は仕事が大好きで、40歳の若さで支店長まで上りつめ、念願かなって支店の成績が全国トップになりました。そのお祝いのパーティーで乾杯したとたんに、バタンと倒れて病院に搬送され、意識が戻らないまま帰らぬ人となってしまいました。

病名は広範囲の脳梗塞でした。持病も何もなく会社の健康診断でも全く異常所見のない健康そのものだったそうですが、突発的な不整脈によって血栓(血の塊)ができ、それが脳血管に詰まってしまったのでした。

ご家族の話では、支店長になる前からずっと、連日深夜に帰宅し、土日もゆっくり過ごすことはめったになく、ゴルフにイベントにセミナーにと、しょっちゅう精力的に出かけていたそうです。まさにこの方は、何年にもわたる長時間労働によって蓄積した疲労がサイレントキラーとなり、一瞬のうちに命を奪われたといえるでしょう。

もしこの記事をお読みになっているあなたが、経営者の立場にある方ならば、くれぐれも覚えておいてください。いくら好きであっても、いくら自らの意思で働いていたとしても、疲労が蓄積すると心や体の健康は確実に害されていく、ということを。そして時には過労死という取り返しのつかない恐ろしい事態が起こる可能性もあるということを。

経営者には、社員の健康と命を守る「安全配慮義務」が、労働契約法により課せられています。「好きだと言うから、やりたいと言うから、何時間でも好きなだけ仕事をさせた」では、済まされない社会的責任が法律により課せられているのです。

超健康な若者も、筋骨隆々の屈強な人だって例外ではない

ある会社の経営者は、「じゃあ過労死が起こらないように、あらかじめ脳と心臓の検査を社員に実施して、問題のない社員のみ長時間残業をさせたらいい」と言い放ちました。ですが、過労死は脳や心臓、その他の検査データに何の異常もなかった人にも突然起こり得るのです。超健康な若者であっても、筋骨隆々の屈強な男性であっても、過労になると健康は確実に害されていくのです。

この記事をお読みの方は、このような愚かな経営者にならないようにお願いいたします。経営者に課せられた安全配慮義務を肝に銘じよく理解したうえで、どうぞ人をお雇いください。

私は産業医として長時間労働者の過重労働面談を少なからず行ってきました。産業医は企業の過重労働に対して勧告権しか持っておらず、ストップさせる法的な強制力がありません。過去に関わった企業では、「疲労が蓄積しているので労働時間を速やかに削減してください」と意見書を何度書いても無視されたことがありました。

痛ましい過労死事件を二度と起こさないためにも、経営者はもちろんのこと働く人自身が、睡眠不足と過労の恐ろしさをしっかりと認識し、健康を脅かさない働き方ができるようもっと意識改革してほしいと切に願う毎日なのであります。

※文中にて提示した症例は、個人・組織が特定されないよう、事実関係が損なわれない範囲で加工を施しています。

奥田弘美
 精神科医(精神保健指定医)、産業医(労働衛生コンサルタント)、作家。1992年山口大学医学部卒。精神科臨床および都内18カ所の産業医として日々多くの働く人のメンタルケア・ヘルスケアに関わっている。執筆活動にも力を入れており「1分間どこでもマインドフルネス」(日本能率協会マネジメントセンター)など著書多数。日本マインドフルネス普及協会を立ち上げ日本人にあったマインドフルネス瞑想の普及も行う。

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