「過労」はサイレントキラー 体力がある人ほど注意こちら「メンタル産業医」相談室(5)

日経Gooday

おそらく多くの方がこの45時間ラインを大幅に超えているのでは?と危惧します。2017年2月中旬、政府は「働き方改革実現会議」において、罰則付きで時間外労働の上限設定を最大で月平均60時間、年間720時間までとするなどを柱とする上限規制案を提示しました。まだまだ45時間ラインには近からずといったところですが、併せて「勤務間インターバル制」を導入した中小企業には助成金を与える制度の導入を検討しているのは良い兆しといえるでしょう。

勤務間インターバル制というのは、時間外労働を含む1日の最終的な勤務終了時から翌日の始業時までに、一定時間のインターバル時間を設ける制度です。欧州連合(EU)加盟国ではすでに導入されていて、このインターバルを11時間としています。繁忙期で残業が多くなり深夜に帰宅したとしても、翌朝は11時まで出社しなくてもよいとなると、健康の要となる大切な睡眠時間が確保しやすくなるので、医学的にも理にかなった制度だと思います。私が担当している企業にも、ぜひ導入を検討されるようにと勧めているところです。

睡眠負債や疲労が蓄積すると、体はどうなる?

さて睡眠負債と疲労に話を戻しますが、長時間労働が続いてスローダウンの時間が消失し、睡眠の負債がどんどん蓄積していくと、当然ながら体にも心にも疲れがどんどんたまってきます。

この疲れの蓄積、すなわち「過労」は非常に怖い健康被害を生み出します。医学知見に私の産業医としての経験も加味しながら、その恐ろしい健康被害を列挙してみたいと思います。

まず疲労がたまり始めると、初期症状として次のような状態が現れやすくなります。

【疲労がたまったときの初期症状】

夜遅い食事は睡眠不足のもと(c)bowie15-123rf

○夜遅くに食事をとるようになると、睡眠が浅くなるため朝の寝覚めが悪くなる。また、朝に胃もたれが残り朝食を抜きがちとなるため、午前中の仕事の能率が落ち始める。

○疲れのため代謝が悪くなり、体の重だるさが連日とれなくなってくる。

○記憶力・ヒラメキ力が低下する。機転が利かなくなる。そのためうっかりミスや初動の遅れが出始める。

○精神状態が不安定となりイライラや不安が高じやすくなり、仕事やプライベートの人間関係がぎくしゃくしてくる。

○夜になっても仕事のことが頭から離れなくなり、寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなって夜に何度も起きたりと睡眠の質が劣化し始める。

さらに疲労の蓄積が長期間にわたって高じていくと、次のような深刻な症状が表れます。

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