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スタンフォード大学経営大学院 ジョナサン・レバーブ准教授 (C)Saul Bromberger

スタンフォード大学経営大学院 ジョナサン・レバーブ准教授 (C)Saul Bromberger

世界でもトップクラスの教授陣を誇るビジネススクールの米スタンフォード大学経営大学院。この連載では、その教授たちが今何を考え、どんな教育を実践しているのか、インタビューシリーズでお届けする。今回からマーケティングのジョナサン・レバーブ准教授が登場する。

パソコンや車やスーツを買うとき、苦痛に感じた経験はないだろうか。選ばなくてはならないことが山ほどやってきて、最後は、「もう何でもいい」と決断を投げ出してしまう。この現象がおこる原因を学術的に検証したのが、レバーブ准教授だ。マーケティング業界を席巻した「決断疲れ」とは?(聞き手は作家・コンサルタントの佐藤智恵氏)

ニューヨーク・タイムズが紹介した「決断疲れ」

佐藤:レバーブ准教授を世界的に有名にしたのは、精神の疲労と決断の質について実証した「決断疲れ」についての研究結果です。そもそも「決断疲れ」とはどういう現象なのでしょうか。

レバーブ:「決断疲れ」は2011年、ニューヨーク・タイムズの記事で紹介された言葉ですが、実は正式な学術用語ではありません。この記事には私の研究結果も紹介されていますが、「決断疲れ」は、記事を書いたジャーナリストが一連の現象を総称してつくった言葉なのです。

私がいくつかの実験で立証したのは、「身体を使い続けていると疲労するのと同じように、精神も疲れるのだ」ということです。たとえば、人間は肉体的に疲れると眠くなり、知らず知らずのうちに目を閉じています。身体そのものが「疲れているよ」と教えてくれるわけです。ところが気力がなくなってきても、眠たくはならない。では、どうしたら疲れているとわかるのか。それは、決断した結果にあらわれていることがわかったのです。

佐藤:このニューヨーク・タイムズの記事は世界中の人々に読まれ、日本でも翻訳版がオンライン雑誌で紹介されました。なぜこれほど人々は「決断疲れ」に興味を持ったのでしょうか。

レバーブ:これほど多くの人々に記事が読まれたのは、「自分にもこういうことがよくある」と共感したからだと思います。

私はよく「決断疲れ」について講演をすることがありますが、冒頭で「家を改装したことがある人はいますか」と聴衆に質問してみると、必ず何人かが「あります」と手をあげてくれます。そこで「どんな経験でしたか」と聞くと、多くの人が「苦痛以外の何物でもなかったよ」と答えます。「なぜそんなに苦痛だったのですか」と聞くと「バスルームの備品からはじまり、何から何まで選ばなくてはならないのが、本当に嫌だった。最後はどうでもいいっていう気持ちになったよ」と言う。次から次へと選択しなくてはならないことがやってきて「もうどうにでもなれ!」と思う――これは誰もが経験したことがあることなんです。

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