2017/4/9

スタンフォード 最強の授業

レバーブ:たくさんありますよ。例えばグーグル・ドキュメント。これはマイクロソフト・ワードの簡易版です。なぜグーグル・ドキュメントに需要があるかといえば、ワードは機能が多すぎてわかりづらいという人が世の中にはたくさんいるからです。日本のユニクロの製品もそうですね。無駄なものをそぎ落としたシンプルなデザインが支持されました。出会い系アプリTinderも、写真に特化して、面倒な登録作業などを簡易化することで成功しました。ツイッターが爆発的に広がったのも、文字制限があったからです。

通常、どの企業も機能を足すことを考えますから、そぎおとした製品はかえって目立つ。だから差別化できるのです。

脳のワーキングメモリーには限界がある

佐藤:なぜ、私たち消費者は、シンプルな製品を求めるのでしょうか。

レバーブ:私たちのワーキングメモリー(作動記憶)には限界があるからです。人が一度に覚えられる数字や単語の数は、「7±2」(5~9個)だと言われています。テクノロジーが進化したからといって、人間の脳が進化するわけではありません。にもかかわらず、私たちは「この新しい技術を使ったら、次にどんなことができるだろうか」ということばかり考えて、人間の脳の能力をはるかに超えた製品を出してしまう。ところが、そんな最先端の技術をてんこもりにした製品を出しても、ついていける人間は少ないわけです。

新製品を世の中に出す際には、必ず「ちょっと待てよ。人間の脳はそこまで対応できるかな」と精査することが大切なのです。エンジニアや専門家がつくりたい製品ではなくて、人間の脳にとって心地よい製品を世の中に出してください。それが成功する製品の秘訣なのです。

※レバーブ准教授の略歴は第1回「衝動買いも予算オーバーも 『決断疲れ』が原因?」をご参照ください。