「エコフィン イズ」に入る入棺体験イベントは、外部で開催したものも含めると参加者は延べ200人以上。30代と40代で過半数を占めるといいます。過去には、海外から超高齢化社会・日本の葬祭ビジネスを取材しにきたジャーナリストも入棺を体験しました。リピーターも多く、その多くが「棺おけに入る」体験そのものより、死や葬儀についてディスカッションができる場であるところに価値を見出しているそうです。

エコ素材を使用した棺おけ「エコフィン イズ」。手作りの布をあしらうなどオリジナルの演出ができる

「送る立場」としての終活

40代以上になると、親の介護やみとりが現実的になってくる人が増えます。「送る立場」として終活に関心を持つ人も多いようです。

「葬儀は人生の卒業式。だからこそ、葬儀社のいうままに行なうのではなく、生前のその人らしさあふれる形で行えたら理想的。故人を送るにあたって、遺族に悔いが残らないようにすることが大切です」(ウィルライフのカスタマーサービス担当・安田かほるさん)

生前から棺おけを購入し、自宅に置いている高齢者もいるそうですが、一方で「葬儀の話などしたくない」という高齢者もいます。状況は家庭によって違います。送る側がいざというときを考え「今のうちに準備をしなければ」と思っても、当人が死の準備に積極的でなければ、死や葬儀の話は避けたほうがよさそうです。

「大事なのは、今、生きている家族とどう向き合うのか。送り方は人それぞれ。故人が好きだったものや、その人らしさがしのばれるものを用いて集まった方が思い出を共有し、心からのお別れができる葬儀が理想ではないでしょうか。そのためには、大切な家族や、親しい人と、生きている間にどういう関係性を築けるかが大切だと思います」(安田さん)。死を通して今を見つめるとはこういうことなのかもしれません。

ウィルライフでは現在、定期的な入棺体験イベントは行っていませんが、リクエストに応じて開催することはあるそうです。

終活が盛んなのは日本だけではありません。米国・ハワイのパロロ本願寺では、寺の行事の一環として「生前葬」を開催しています。住職の「生前葬をやってみませんか」という提案に、手を挙げた50代の日本人女性が参加しました。

「自分の葬儀の際には絶対に流してほしい曲があったので、それを流してもらい、ダンボールで作られた棺おけの中でそれを聴きながらニヤニヤしていました。家族にはこの生前葬でお焼香もしてもらったので、『もうこれで私の葬儀はすんだから、あとは、死んだら火葬だけお願いね』と話してあります。結婚式は2回、3回してもいいけど、葬式は1回だけ。遺族の負担を少なくできたことにも妙な満足感があります」(参加した50代女性)

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今回印象的だったのは、比較的若い世代の「終活」をサポートしているのが、やはり同じくらいの世代の僧侶たちだったことでした。終活が広まったからといって、従来からの寺や葬儀のあり方がすぐに変わることはないかもしれませんが、「死をみつめること」を通して確実に気持ちのありようは変わります。

自分自身や家族のゴールに向かって、今生きているこの世界で何をすればいいのか、ひとつひとつパズルを解くように解決していければ理想的です。「死ぬことそのものよりも、死を避けていることのほうが怖い」という人もいました。生きているからこそ必要な、心の中の不安や恐れ、とらわれをひとつひとつ取り除き、納得していく作業。それが終活なのかもしれません。

(ライター 大崎百紀)