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おひとりさまも注目 「遺言書を作るべき人」とは   プロに聞く「遺言」の話(2) 三井住友信託銀行 フェロー主管財務コンサルタント 斧原元治

2017/3/16

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 この世に生まれてきた以上、やがて来る死は避けられません。どんな人でも相続の問題から逃れることはできないのですから、全ての人が遺言書を作っておくに越したことはない、といえるかもしれません。しかし、そのような一般論ではなく、我々のような「相続のプロ」の視点から見たときには、明らかに遺言書を作る必要性が高い方も実際にいらっしゃいます。今回はこのような「遺言書を作っておくべき人」のお話をしましょう。

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全国の数値。日本公証人連合会のデータを基に編集部で作成

 遺言書に対する世間の関心は急速に高まっており、一般の方にも身近な存在になってきています。例えば日本公証人連合会が公表している「公正証書遺言の作成件数」では、最新データの2014年の公正証書遺言の作成件数は10万4490件であり、09年の7万7878件に比べ5年間で34%以上と、急増していることが分かります。これに自筆証書遺言の件数を加えれば、さらに多くの遺言書が毎年作られているといえます。

 法律では「15歳以上の意思能力のある人」なら、誰でも遺言書を作成できるとされています。そして実際に遺言を書かれている方はお金持ちとは限らず、財産が少ない方も大勢おられます。むしろ「もめごとが起こっているケースの約70%は、遺産規模が5000万円未満の場合である」という裁判所のデータを見ると、財産の額には関係なく遺言を書いておく必要があるといえそうです。

■遺言書が必要になる7つのパターン

 我々のような相続の専門家は、「遺言書の必要度合い」は財産額ではなく以下の4つのケースに該当するかどうかで判断します。すなわち法定相続分通りの相続を希望しない場合、もめるかもしれないという心配がある場合、特定の財産を特定の方に残す必要がある場合、相続人以外の個人や法人に遺産を遺したい場合――の4つです。より具体的にいえば、以下の7つの例のどれかに当てはまる方には、遺言書の作成を強くお勧めします。

(1)お子さんのいないご夫婦で、財産は長年連れ添った妻や夫に全て相続させたい方

 この場合、法定相続分に従えば妻や夫の他に、本人の兄弟姉妹へも全財産の4分の1が相続されることになります。それでは困る、という場合は、兄弟姉妹には遺留分(一定の相続人が一定の財産を取得できる権利)はありませんので、遺言を書いておけば財産を妻や夫に全て相続させることが可能になります。

(2)再婚されておられる方

 例えば、夫が亡くなって相続が起こった際に、先妻の子供たちと後妻の方との間でもめごとが起こることがあります。経験上、ここはトラブルが起こりやすいポイントでもあります。遺言書で回避したいものです。

(3)経営している事業をスムーズに次世代に引き継ぎたい方

 企業オーナーや農業の方は、円滑な事業承継をしていくために株式や農地が後継者に確実に引き継がれるようにしておきたいと考えるものでしょう。こうした場合も、遺言書の必要性は非常に高くなります。

(4)財産を相続人以外の人に残したい方や、法人などに寄付したい方

 例えば、自分たちの面倒をよくみてくれる息子のお嫁さん、昔恩を受けた知人、あるいは内縁関係にある人(戸籍上の配偶者でないと法定相続分はありません)などに財産を残したい場合には、遺言書が必要です。また、自分の死後に出身校や日本赤十字社などの法人に寄付したい場合にも、遺言書が必要となります。

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