アスリートは2度輝く 引退を見据えて「市場」耕せアスリートネットワークの朝原宣治副理事長に聞く(1)

公認会計士・心理カウンセラー 藤田耕司

公認会計士・心理カウンセラー 藤田耕司

――陸上競技での経験を生かし、しっかりとセカンドキャリアを築いている人では、誰に注目していますか。

朝原氏は関西ワールドマスターズゲームズ2021が「スポーツツーリズム」による旅行需要を拡大させると期待する

「例えば、ハードルの為末大さんは講演や執筆活動をしたり、陸上に関する様々なイベントを開催したりしています。コメンテーターとしてテレビにも出演していますね」

――やはりセカンドキャリアの形成では、現役時代に十分な実績を残し、知名度を得ておくことは重要なのでしょうね。

「確かに、それは重要だと思います。一方、選手としての知名度は低くても、セカンドキャリアで指導者としての専門性を高め、スポーツ用品メーカーと契約したり、プロ選手に走り方を指導したりして活躍している人もいます。指導者としてのセカンドキャリアを歩む上では、選手としての実績や知名度も大事ですが、それ以上に、その種目について専門的な知識と十分な経験を持っているかどうかという点が重視されるべきでしょう」

――現役時代に輝いていたトップアスリートがセカンドキャリアでも、専門知識や経験を生かして再び輝くためには、市場の創出が必要です。そのためにはスポーツに親しむ人を増やしてスポーツの裾野を広げないといけませんね。

「その意味でも20年の東京五輪・パラリンピックは一つのきっかけとして期待しています。世界が注目するイベントですから、スポーツに関心がなかった人にもスポーツに興味を抱いてもらう効果はあるでしょう。そして、スポーツを『見る側』から『する側』に変わってもらえればいいですね」

東京五輪・パラリンピックへの期待などについて聞く藤田氏

――21年には生涯スポーツの国際大会「関西ワールドマスターズゲームズ2021」が開催されます。この大会はアスリートのみならず、30歳以上の一般の人も選手として参加する大会ですから、スポーツの裾野を広げるための大きなきっかけになりそうです。

「そうです。ワールドマスターズゲームズは『スポーツツーリズム』による旅行需要の拡大といった経済効果も期待できます。地域を活性化させる起爆剤にしたいと思って私も積極的に関わっています。スポーツの裾野を広げて市場を大きくし、アスリートがより充実したセカンドキャリアを歩めるインフラが整えば、現役の選手も安心して競技に集中できるのではないかと思います」

――そうなれば、選手のパフォーマンスはさらに高まるでしょうね。次回は朝原さんのアテネ五輪、北京五輪での裏話、そして現役引退の経緯などについて聞きたいと思います。

▼アスリートネットワーク 2010年に約30人のアスリートが集まって発足した一般社団法人。バレーボール全日本女子チーム監督だった柳本晶一氏が理事長を務める。現役アスリートの支援のほか、引退後に新しいキャリアを形成できる環境を整備する活動も展開する。競技種目の垣根を越えてトップアスリートが集まり、スポーツ教室などを開催しながらスポーツの魅力を子供に伝えている。

朝原宣治(あさはら・のぶはる)さん 1972年生まれ。高校時代に陸上競技を始め、同志社大を経て大阪ガス入社。96年アトランタ五輪など五輪、世界選手権の男子100メートルで5度準決勝進出。北京五輪男子 400メートルリレーで銅メダル獲得。2008年に引退。10年にバレーボール全日本女子監督だった柳本晶一氏らとアスリートのキャリア形成を支援する団体「アスリートネットワーク」を設立、副理事長に就任。陸上クラブ「NOBY T&F CLUB」を主宰し、小学生から中高生、そして高齢者まで幅広く指導を行う。
藤田耕司(ふじた・こうじ) 1978年生まれ。公認会計士、税理士、心理カウンセラー。早大商卒。監査法人トーマツを経て日本経営心理士協会、FSG税理士事務所、FSGマネジメントを設立。経営コンサルティングと心理学を融合した経営心理学を体系化し、企業の経営顧問、経営者のメンターを務める。主な著書に「リーダーのための経営心理学」(日本経済新聞出版社)がある。

「post2020~次世代の挑戦者たち」は原則水曜日に掲載します。

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