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福田進一 グラナドス生誕150年のギター

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2017年に生誕150周年を迎えるグラナドスをはじめ、近代スペインの作曲家のピアノ曲や歌曲はギターで演奏されることも多い。ギタリストの福田進一さんは2000年代前半にスペイン音楽を集中的に録音し、昨年末にその再構成・復刻盤を出した。グラナドスやアルベニスの作品をギターで弾く楽しみを聞いた。

ギタリストが編曲した近代スペインのピアノ曲

スペインといえばギター。フラメンコギターやスパニッシュギターを連想する。現代のクラシックギターの原型は、楽器製作者アントニオ・デ・トーレスが19世紀後半にスペインで開発した。このためスペインの作曲家は当時からギター曲をたくさん書いた、と考えたくなるが、違う。近代スペイン国民楽派を代表する2人の作曲家、イサーク・アルベニス(1860~1909年)とエンリケ・グラナドス(1867~1916年)はともにピアニストでもあり、主要作品はピアノ曲だ。2人のピアノ曲はギタリストのミゲル・リョベート(1878~1938年)らが編曲して演奏し、ギター曲としても広まった。その後、トーレスのギターが普及するのに伴い、ギター曲を書く作曲家が登場するようになった。

日本を代表するクラシックギター奏者の福田さんは2016年12月、「ギターに不可欠なスペイン12人の作曲家」と銘打って、それぞれ2枚組のCD「エッセンシャル・スペイン1」「同2」を出した。1巻目は「アルベニス、グラナドスとスペインの歌」、2巻目は「トゥリーナ、ロドリーゴ、ファリャとその周辺」と題し、近現代スペインの主要作曲家のギター曲やギター編曲を網羅する内容だ。これらのCDは2002~04年に集中的にレコーディングしたものを再構成した高音質盤だ。福田さんはパリのエコール・ノルマル音楽院、イタリアのキジアーナ音楽院に留学し、1981年にパリ国際ギターコンクールで優勝した経歴があり、「僕はスペインの音楽をあまり一生懸命やってこなかったギタリストの部類に入る」と話す。しかし実際はスペイン音楽の演奏も録音も多い。

――ギタリストにとってスペイン音楽とは何か。

「ギターのレパートリーのほとんどをスペインの音楽が占めているといっても過言ではない。絶対に外せない。ただ、僕が学生の頃にはギターは世界中の様々なジャンルの音楽に使われるようになっていた。僕がパリに留学した理由も、ギターが現代音楽に取り入れられるようになったからだ。フランス現代音楽の作曲家ピエール・ブーレーズもギターの作品を書いた。ギターの現代音楽を勉強するにはパリに行くしかないと思った。日本では武満徹さん、ドイツではハンス・ヴェルナー・ヘンツェ、英国ではベンジャミン・ブリテンがギターの曲を書くなど、それぞれの国にギター音楽が生まれた。ギターの音楽がスペインを飛び越えて世界の音楽になった。それでもスペイン音楽はギターの中心レパートリーだから、いい曲は弾いていきたい。このほど復刻したCD『エッセンシャル・スペイン』は、3年間はスペイン音楽をやると決め、集中してレコーディングに取り組んだものだ」

本稿の映像では、白寿ホール(東京・渋谷)で福田さんがグラナドス作曲、リョベート編曲の「ゴヤの美女」と「スペイン舞曲第5番アンダルーサ」の一部を試奏している。そしてスペイン国民楽派の二大作曲家グラナドスとアルベニスの音楽を比較し、実演を交えながら解説している。2人の主要作品は、福田さんが弾いた2曲も含め、もとはピアノ曲だ。スペインが生んだ20世紀を代表する女性ピアニスト、アリシア・デ・ラローチャの名演によって彼らの作品が広く知られるようになった。ラローチャの演奏によるグラナドスの「スペイン舞曲集」をCDで聴くと、みずみずしい音色と軽やかなリズム、異国情緒と情熱のロマンあふれる世界が広がる。こうした完成度の高いグラナドスやアルベニスのピアノ曲は、ギター用にも盛んに編曲され、世界中のギタリストが弾き続けている。

フラメンコ風のアルベニスとロマン派風のグラナドス

――今年生誕150年のグラナドスは福田さんにとってどんな作曲家か。

「パリで和声学と楽曲分析を教えてくれたナルシス・ボネ先生はグラナドスと同じスペインのカタルーニャ人だった。ボネ先生からグラナドスのピアノ曲について学んだ。グラナドスの初期の作品はギターで弾きやすい。ギタリストのレパートリーとしてはリョベート編曲の『スペイン舞曲集』が定番。シューマンやグリーグ、ショパンの影響下にあり、スペイン音楽でありながらロマン派風だ。彼のピアノ曲では後期の『ゴイェスカス』が傑作だが、和声的に複雑だ。最近はギター2、3台による編曲も出てきたが、演奏は非常に難しい。むしろ僕が最初に魅せられたのは初期の『詩的ワルツ集』で、1986年に出したアルバムにも収録した。武満徹さんが推薦文を書いてくれた。自分で編曲した愛着のある曲集だ」

スペインといえばフラメンコ。フラメンコといえばギター。南部のアンダルシア地方に行けば、本場のフラメンコの音楽と踊りに出合える。フラメンコギターの音楽は、下降する循環コードが基本。例えばイ短調ならば、和声(コード)進行はAm→G→F→E7→Amなどの循環が多用され、哀愁と情熱の気分が増幅される。グラナドスと同じ国民楽派の作曲家で、そうした土着のクリシェ(コード進行の慣用句)を自作のピアノ曲に好んで取り入れたのがアルベニスだ。

――グラナドスを同時代のアルベニスの音楽と比べるとどうか。

「グラナドスはよくアルベニスと比べられる。アルベニスはすごくギターに乗りやすい。ギター的なハーモニーの進行でできている部分が非常に多い。アルベニスは生まれ故郷のカタルーニャからアンダルシアの音楽に興味が向いた人だった。アンダルシアの音楽はフラメンコであり、ギター和声の進行にクリシェが多用される。アルベニスの作品はフラメンコのクリシェが基盤にあるものが多い。例えば、ミから始まってミに帰ってくる。何でも循環して帰ってくれば一応曲になるという感じだ。当時のピアノ曲としては独特の、循環という手法を持ったわけだ」

「グラナドスはそうではない。土着的なアルベニスに対して貴族的なグラナドスというか。もっとコスモポリタンであり、外からスペインを見ているところがある。節回しではスペインの深みを作ろうとしているが、あくまでクラシカルに曲を発展させていきながら、その中でコブシが入ってくる。雰囲気としてはスペインの要素を持っているが、フラメンコ風の癖は音楽から割と排除されている」

シューベルトの歌曲集「冬の旅」をギター伴奏に編曲

――ピアノ曲なのにギターで弾いても似合うのはなぜか。

「アルベニスの場合はギターからインスピレーションを得ているからだ。アルベニスの作品は何十曲もギター曲に編曲されているが、それはギターから得た発想に還元するようなものだ。アンダルシアなどスペイン南部の土着の音楽をテーマにたくさん作曲したのはアルベニスの方だ。グラナドスの場合はそれほどギター色はなく、やはりピアノ曲だ。しかしグラナドスの作品をギター曲に編曲したリョベートが、高い独創性を持っていた。リョベートの編曲は『ゴヤの美女』もそうだが、オリジナルを破壊するほど独創的だ。調弦法も普通のギターとは違っている。ギター独自のスタッカート、ハーモニクスなど、ロマンチックな表現方法としていくつもの特殊奏法を駆使している。ピアノにはない独特の音色、節回しを生み出し、ピアノよりも内省的で、秘めた詩的表現をギターで実現させた」

2月18日の白寿ホール。福田さんはテノールの望月哲也さんと共演した。演目はドイツ歌曲史上の最高傑作、オーストリアのロマン派作曲家シューベルトの連作歌曲集「冬の旅」。ピアノ伴奏の原曲を福田さんがギター伴奏に編曲し、望月さんが歌った。ロックやフォークのようにコードをかき鳴らすくらいのアレンジならば、「冬の旅」もギターで弾きやすいかもしれない。しかし福田さんは、ピアノの音を可能な限り忠実にギターに置き換える手法を取った。シューベルトはギターを想定せずに作曲しているため「アレンジは難しかった」と福田さんは話す。ギター伴奏版「冬の旅」の注目度は高く、会場は満席。音量の強弱の幅が大きいピアノに比べると、劇的な盛り上がりにはやや欠けるが、個人的な内面を描き出す繊細な表現だ。

リョベートやアンドレス・セゴビア(1893~1987年)らスペインのクラシックギターの巨匠たちは古典作品を編曲してギターの演目を増やした。福田さんも「冬の旅」に限らず古典作品のギター編曲に取り組んでいる。「20世紀に入るとトゥリーナ、モンポウ、ロドリーゴらスペインの主な作曲家はみんなギター曲を作曲するようになった。アルベニスとグラナドスはギター音楽が盛んになる前に亡くなったので残念」と福田さんは言う。しかしだからこそ編曲の世界が広がり、ピアノとギターの両方で楽しめる作品群が生まれた。福田さんは毎夏、白寿ホールでの「ギターフェスタ」をプロデュースしている。グラナドス生誕150年の今年のテーマは「ラテンアメリカ」。スペイン音楽が大西洋を越え、その先に花開いた中南米のギター音楽を披露する。ギターが古今東西の音楽を軽やかに再生していく。

(映像報道部シニア・エディター 池上輝彦)

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