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ビジネス街の書店をめぐりながらその時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は定点観測しているリブロ汐留シオサイト店だ。このところ働き方をめぐる様々な本が上位をにぎわせていた同店だが、今回は企画やマーケティングにからむ実用的なスキル系の本が売り上げを伸ばし、この店らしい売れ筋に戻った。そんな中で、店長が注目するのは、著名経営者をフィーチャーしたリーダーシップをめぐる経営論だ。

日産ゴーン氏が語るリーダーシップ論

その本は太田正孝・池上重輔編著『カルロス・ゴーンの経営論』(監修・公益財団法人日産財団、日本経済新聞出版社)。日産自動車の変革を主導したゴーン氏が登壇して開かれた日産財団主催の「逆風下の変革リーダーシップ養成講座」を書籍化した本だ。講座に集まった企業の幹部候補生たちの質問にゴーン氏が答える。その様子は、出世ナビの別の連載「探訪ビジネススクール」「リーダーのマネジメント論」でも詳しく紹介したが、これにアカデミックな解説を加えて「ゴーン氏の熱血教室」を書籍の形で再現する。グローバルビジネスの最前線で戦ってきた経験に裏打ちされたゴーン氏の生の言葉が魅力だ。

例えばゴーン氏は次のように語る。「とりわけ日本社会におけるリーダーにどんなことが求められるか。あえて1つだけに絞り込むとすれば、それは『常識が作りだす波に逆らう力』です」。日産自動車に来た頃を振り返りながら「会社にとっての危機は、社員にとっての好機」と語り、ミドルマネジャーを鼓舞する。「イエスマンの多い企業では、リーダーが『イエスマン問題』対策を講じていないのだと思います」。受講生の細かい質問にも真摯に向き合って答えていく。

そんなゴーン氏の体験的、実践的リーダー論を編著者の2人が学術的に解説する。2人は早稲田大学商学学術院の教授と准教授。全体は7章構成で、章ごとにリーダーシップ研究での位置づけや研究史などが短く示され、ゴーン氏の個別的なリーダーシップ論と、学術的な視点を組み合わせながら、自分なりのリーダーについての考えを読者につくり上げてもらおうという構成だ。「最近出た本の中で売れ行きが伸びているのがこの本」と3月初めから同店店長になった三浦健さん。これまでは埼玉県の郊外型店舗にいて、まったく違う売れ筋に少し驚いている様子だった。

孫正義氏の関連本も好調

「こっちの本もよく売れている」ともう1冊紹介してくれたのが、三木雄信『孫社長のむちゃぶりをすべて解決してきたすごいPDCA』(ダイヤモンド社)。ソフトバンク元社長室長の著者による超高速仕事術の本で、こちらも書名に著名経営者の孫正義氏が出てくる。この街では、こうした現役のスター経営者の名前への反応がいいのかもしれない。

それでは先週のベスト5を見ておこう。

(1)野村證券第2事業法人部横尾宣政著(講談社)
(2)生産性伊賀泰代著(ダイヤモンド社)
(3)デジタルマーケティング 成功に導く10の定石電通デジタル著(徳間書店)
(4)海外経験ゼロでも仕事が忙しくても「英語は1年」でマスターできる三木雄信著(PHPビジネス新書)
(5)人もチームもすぐ動く ANAの教え方ANAビジネスソリューション著(KADOKAWA)

(リブロ汐留シオサイト店、2017年2月27日~3月5日)

前回、大手町で紹介したバブル回顧本がここでも売り上げ1位に。『住友銀行秘史』などのときは反応は鈍かっただけに汐留ではちょっと珍しい現象だ。2位の『生産性』は息長く売れている。

マーケティングや英語、スキル系が上位に

3~5位にはスキル系の本が並んだ。3位はデジタルマーケティング、4位は英語、5位はチームマネジメントで、多彩なジャンルのビジネススキルに関心がもたれている。4位の筆者は先に紹介した仕事術の本と同じ筆者で、ソフトバンクから独立起業後に手がけている仕事が英語関連ビジネスだ。3位、5位それぞれの本に関係する電通、ANAはいずれもこの店のある地区に立地する企業で、そのことも売れ行きを支えている。冒頭に紹介した『カルロス・ゴーンの経営論』は5位までには入っていないが、10位に顔を出す。今週に入ってからも売れ行きが伸びているという。

(水柿武志)

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