そして自然に肩周りの力を抜き、頚椎の上に頭部がのるように意識します。すると横から見た時に、背骨が自然なS字を描く姿勢をつくることができるのです。
姿勢を正して体を固定すると、体幹部や腰の周りの筋肉を使うので、その強化につながります。そうして膝とつま先をまっすぐに前に向け、膝をしっかり引き上げて歩けば、全身に刺激が入ります。
これは私も意識して実行していることで、特別な時間を作らず、日常生活の中でできる体幹バランストレーニングの方法です。そうした姿勢で日々過ごしていると、体幹にある太ももを引き上げるインナーマッスル(腸腰筋)が強くなりますから、下肢もよく動かせるようになります。すると、脚全体の筋肉の衰えを防ぐこともできます。買い物や通勤途中の移動、散歩の時などに試してみてください。
正しい姿勢でドローインをすると、より効果的

正しい姿勢でドローインをすると、インナーマッスルの腹横筋や多裂筋、腹斜筋群、腸腰筋などをうまく刺激することができます。時間がある時には、ドローインをしたまま3秒で鼻から息を吸って、5秒かけて吐き出すというのを10回くらい繰り返してみてください。息を吐き出す時に、ドローインした腹部が緩まないように気を付けることが、効かせるためのコツです。そうすることで効率良くインナーマッスルが鍛えられます。
正しい姿勢を保つことやドローインは、今こうして話している間にもできます。実際に私も取材や打ち合わせの時、そして移動で電車に乗っている時や歩く時にも、肩甲骨を引いて胸を開き、ドローインを実践しています。そうすればわざわざトレーニングの時間を取らなくても、常に体幹を鍛えることになりますから。
ただ、最初のうちは四六時中やっているのは難しいかもしれません。その場合は、日常生活の中で気がついた時に、正しい姿勢とドローインを30秒から1分くらい維持することから始めるのでもいいです。
インナーマッスルは加齢とともに衰え、その衰えは、首・肩のこりや腰痛、脚の筋力低下、ダイエット後のリバウンドしやすさなど、様々な体の不調につながります。そのインナーマッスルを鍛えるのに役立つ体幹トレーニングは、1回や2回で効果を出すことを求めるのではなく、地味な運動と心がけを継続することが大切です。選手たちにもそう言って指導しています。私も50歳を過ぎましたが、インナーマッスルを意識しながらここで紹介したような方法で日々体を鍛えています。こうしてメンテナンスしながら、求められる限りはトレーナーとしての仕事をやっていこうと思っています。
【人気トレーナー・木場克己さんのカラダメンテ術】
鍼灸師、柔道整復師、日本体育協会公認アスレティックトレーナー。1965年鹿児島県出身。FC東京ヘッドコーチ(1995~2002年)、サンフレッチェ広島 育成コンディショニングアドバイザー(2011~2013年)、ガンバ大阪ユース コンディショニングアドバイザー(2016年)などを歴任。サッカーの長友佑都選手などのパーソナルトレーナーも務める。アスリートウェーブ代表取締役、オフィシャルサイトhttp://kobakatsumi.jp/
(ライター 松尾直俊)