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post 2020~次世代の挑戦者たち

公認会計士・心理カウンセラー 藤田耕司

公認会計士・心理カウンセラー 藤田耕司
2017/3/8

post 2020~次世代の挑戦者たち

藤田 仕事を割り振られているコンサルタントの仕事ぶりは、どう映ったのですか。

堀内 もちろん彼らの仕事ぶりに学ぶことも多々ありました。ただ、シニアという「人」としての存在を見ておらず、机上の数字を見ていると感じました。実際にシニアの人たちに触れたり、話したり、気持ちを聞いて共感したりしようとする姿勢はあまり見受けられませんでした。「シニアの方はそんなことを望んでいない。もっとシニアの立場から物事を考えて!」。何度もそう思うことがありました。とても切なくなり、悔しい思いをしました。

藤田 そんな経験が転機につながったのですね。

堀内 シニアの方に役立つ仕事がしたいと思っても、仕事を回してもらえなければどうしようもありません。自分の価値を外部に向けて表現するためには肩書も必要なのかと思いました。そこで大学院の門をたたき、老年学を学ぶことにしたのです。大学院では多くの出会いに恵まれ、貴重な経験もさせてもらえました。ここでの学びを現場に届け、シニアにとって優しい社会をつくるお手伝いをする。今の私はそれを目指しています。

藤田 20年東京五輪・パラリンピックを開催する日本にとって、高齢者や障害者に優しい社会は非常に大きなテーマですね。

堀内 そうした社会をつくるには、すべての人が利用可能となる設計にする「ユニバーサルデザイン」を採用したインフラ整備を進める必要があります。ただ、まだ日本はシニアに配慮したインフラ整備が遅れていると思うことが多々あります。東京五輪・パラリンピックに向けたインフラ整備を考えても、まだ日本はユニバーサルデザインにはほど遠いように感じます。例えば、欧州では幼児用バギーが入れる広さが建物の入り口の幅の基準です。上りのエスカレーターしかない駅がたくさんあるといった状況は欧米では考えられません。物理的な側面だけでなく、精神的な側面も日本は未成熟だと感じます。

藤田 精神的な未成熟さとは、どのようなことですか。

堀内氏(右)と対談した藤田氏

堀内 日本で私が重たいキャリーケースやスーツケースを持って困っていたときに、「持ちましょうか」と声をかけてくれる人の多くは外国の方です。日本は東京五輪開催に向けて「おもてなしの国」を謳(うた)っていますが、実際に海外から大勢の観光客が来たとき、国民一人一人がおもてなしの精神を発揮できるのか、やや不安を覚えます。

藤田 「ユニバーサルデザイン社会」を下支えする心の基盤整備には課題がありますね。

堀内 それでも3年後の東京五輪・パラリンピックは日本が物理的にも精神的にもユニバーサルデザインのインフラを整備するための大きなきっかけになると思っています。私のような弱者が「お願いします」「すみません」と言わなくても済むような社会が訪れる。東京五輪・パラリンピックがそんな社会の実現の第一歩になることを願ってやみません。

(この項おわり)

ほりうち・ゆうこ 1967年生まれ。高齢者住環境研究所(東京・渋谷)で要介護者向け住宅改修の設計・施工・管理を手掛けた後、コンサルティング会社に転職。桜美林大学大学院老年学研究科修了、独立して老年学に基づくシニア市場の分析を専門領域とするシニアマーケットコンサルタントとして活躍する。桜美林大学老年学総合研究所連携研究員、東京都健康長寿医療センター研究所協力研究員。
ふじた・こうじ 1978年生まれ。公認会計士、税理士、心理カウンセラー。早大商卒。監査法人トーマツを経て日本経営心理士協会、FSG税理士事務所、FSGマネジメントを設立。経営コンサルティングと心理学を融合した経営心理学を体系化し、企業の経営顧問、経営者のメンターを務める。主な著書に「リーダーのための経営心理学」(日本経済新聞出版社)

前回掲載「『老い』を学べば、企業は成長できる 老年学に技あり」では、老年学の研究成果を活用したシニア向け商品の開発やサービス改善のノウハウを語ってもらいました。

「post2020~次世代の挑戦者たち」は原則水曜日に掲載します。