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国民年金は誰が負担? 半分は税金、保険料未納なら損

2017/3/11

 20歳になると年金制度の対象になりますが、国民年金保険料の納付率は6割強にとどまります。厚生労働省の「国民年金被保険者実態調査」によると、滞納理由で多いのは「保険料が高く、経済的に支払うのが困難」という回答です。保険料は年間で20万円に迫ります。収入が少なければ負担は大きいでしょう。

 次いで「年金制度の将来が不安・信用できない」「納める保険料に比べて十分な年金額が受け取れない」の順です。若い世代で高く、50代を上回ります。お茶の水女子大の学生が大学生などに実施した調査でも年金制度に不満を感じる人は多く、理由として約9割が「そう思う」と答えたのが「将来もらえるか不安」でした。「受給額が見合わない」も6割が肯定しています。若い世代は保険料が払い損になるかもしれないと考える人が多いようです。

 現役世代の保険料を高齢者の年金に充てる賦課方式が日本の年金の基本です。しかし年金額すべてを保険料で賄うわけではありません。現在の年金制度の体系は1986年に始まり、当初から税金を投入しています(国庫負担)。

 最初は基礎年金の3分の1で、04年に2分の1に引き上げられることになりました。12年には消費増税による税収を2分の1の維持に充てることになり、国庫負担2分の1は恒久化が決まりました。

 14年度の公的年金の財政収支でみると、国庫負担は約11.8兆円です。これには国民年金発足前の給付にかかる費用の一部などが含まれるので国民年金と厚生年金の拠出金合計の2分の1を上回りますが、約10.9兆円が基礎年金の給付に使われているとみられます。

 つまり保険料を払っている払っていないにかかわらず、買い物の際に払う消費税などの一部は年金の支払いに使われていて、これは今後も続きます。払い損を理由に保険料を払わず、払っておけばもらえたはずの年金を受け取れないとしたら、税金が払い損になりかねません。

 年金財政には年金積立金という存在もあります。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が運用し百数十兆円にも上ります。この一部も年金給付に使っています。金額が積み上がったのは「団塊世代が保険料を多めに払ったためで、これがないと現役世代の保険料はもっと上がっていた」との見方があります。

 厚生労働省は14年の財政検証に基づき、年金の世代間の給付と負担の差を試算しています。様々な経済状況下で各年齢の人が平均余命まで生きたと仮定し、満額払った保険料に対して受け取る年金の総額を出しました。「国民年金はすべての世代で保険料の払い損はないという結果でした。半分が税金で支払われているからです」とみずほ総合研究所の堀江奈保子上席主任研究員は指摘しています。

 社会保険で損得が議論になりやすい代表例は年金でしょう。払う金額ともらう金額がある程度分かり、多くの人が受け取るからです。年金は終身でもらえるので長生きするほど得なことは確かです。もちろん、それにはきちんと保険料を支払うという前提があります。

[日本経済新聞朝刊2017年3月4日付]

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