ミニチュア鋳物や吸盤バッテリー ギフトショーで注目
2017年2月8~10日に「ギフトショー」が開催された。あらゆる形の製品が並び、渾沌としたバラエティーの豊富さが面白い見本市から、注目の製品をピックアップして紹介する。
今、鋳物が面白い!
ここ数年、ギフトショーは、名入れサービスなどのBtoBサービスや昔ながらのギフト商品よりも、実際に生活に役立つもの、ちょっとしたアイデア商品などのお披露目の場として使うメーカーが増えてきている。
三重県の桑名商工会議所のブースでは、戦国時代の鉄砲の鋳造に端を発する「くわな鋳物」のメーカーの展示が行われていた。
なかでも目を引いたのが、鋳物の鍋やフライパン、グリルパンなどの調理器具をそのままサイズダウンした桑原鋳工「CASTOK ミニミニパン」シリーズ。まるでおままごとの道具のようだが、直接火にかけられる本格的なパンだ。缶詰めの中身を入れてコンロに掛けて煮込んだり、1人分のスープを温めたり、寒い夜に、ちょっと晩酌といったときに威力を発揮する。鋳物だから重いが、小さいので持ち歩けるし場所もとらない。
同じく桑原鋳工の石臼「鉄臼」も面白い。大豆や黒豆を挽いてきな粉にしたり、お茶を挽いて抹茶にしたり、コーヒー豆を挽いたり。1人分を簡単に挽けるのに、モノとしての迫力がすごい。
マルデ鋳器の「くわな鋳物の蚊やり器」も興味を引く。さまざまな素材を使った生活用品をデザインするヤマザキデザインワークスによる、伝統的だけれど新しい「蚊やり器」を、マルデ鋳器の鋳造技術で製品化したものだ。
鋳物で作られたずっしりと重い器とふたは、平たくて簡単にはひっくり返らないので蚊取り線香を入れても安心。マルデ鋳器はガスコンロなどを作っているメーカーなので、火の扱いも得意だ。ふたは伊勢型紙をイメージするような切り絵風で、花、籠、朝顔、花火、帰郷、雲と夏をイメージするモチーフがデザインされている。鋳物を身近に感じる生活用品として、とても魅力的な製品だ。
ありそうでなかった、アルミ製歯ブラシ、買い物用取っ手
金属製品として面白かったのは、グレーアンドネイビーの「BYTAPS」(セット価格5800円)。とにかく磨きやすい歯ブラシを作りたい、という発想のもと、アルミ削り出しのハンドルを新潟・燕三条の工場で製作。握り心地、重さのバランス、動かしやすさなど、とても快適なハンドルを仕上げた。
さらに、天然鉱石を練り込んだブラシによって歯垢と歯のエナメル質との結びつきを弱め、水だけで磨いても歯をツルツルにする洗浄力を発揮するという。ブラシは交換式で、1カ月程度で交換することで、最高の磨き心地を保つそうだ。実際に磨いたわけではないので、その洗浄力はともかく、その握りやすさ、動かしたときの力の流れのスムーズさは十分だと思った。交換ブラシは1本480円。
生活用品では、あおぞらの「クリック&キャリー」(1728円)が便利だ。これはひと言で言えば、買い物用の取っ手だ。たくさんのレジ袋をまとめて一つのグリップで持てるようにしたり、エコバッグなどを二つ、前後に肩から下げられるようにしたり。
また、複数のレジ袋をこのクリック&キャリーでまとめると荷物が自立するので、クルマに乗るときなどもスムーズになる。シンプルな構造だが、これ一つあると、買い物がかなりラクになる。
ようやく見つけた! スタイリッシュな「ふくさ」、コスパ良しの革財布
伝統的なアイテムを現代生活の中に取り入れる試みとしては、大一創芸の「スタイルふくさ」が面白かった。冠婚葬祭の際に祝儀袋や不祝儀袋を入れていく「金封ふくさ」を、扱いやすくしようという試みから作られた製品だ。
なかでも「スタイリッシュふくさ」や「Noir」のシリーズはシックなデザインに加え、出し入れがしやすく、使い終われば二つ折りにしてコンパクトに持ち歩けるなど、従来のふくさのイメージをかなり変えるもの。これなら、一つ持っておけば冠婚葬祭の際に慌てなくてすみそうだ。ふくさは便利だし、大人の礼儀として持っておきたいものではあるけれど、なぜか、ちりめんのふわふわしたデザインのものが多く、大人の男性が持っておきたいと思うものがなかなかなかっただけに、こういう製品はありがたい。
革製品では、ビスポークの革財布が機能、デザインともに群を抜いていた。さすがにイタリア製の革に、きちんと使い勝手に関するアイデアを詰め込んだ製品だけのことはある。
「ミラグロ・グレースレザーシリーズ」の「外L字ファスナー二つ折り財布」(1万7000円)は、二つ折り財布の下辺と側面をファスナーで留め、上はオープンにしておくスタイル。上が開いているので容量が大きく、ファスナーの開閉もスムーズ。そして、内側のカードポケットがコインケースのふたになっていて、開くとボックス型のコインケースが立ち上がる構造がうまい。
また、「ミラグロ・ジェニュイン・キャメルレザー」シリーズの「駱駝(ラクダ)革ギャルソンウォレット」(1万6000円)は、ラウンドファスナーの端正な長財布のデザインながら、内側から大きなコインケースが立ち上がる仕様が面白い。どちらも中国製だが、縫製も品質もしっかりしていて、コストパフォーマンスがとても高い。
エコバッグやボックスだって進化中
エコバッグといえば、さまざまな形のエコバッグやショッピングバッグが各40色、ずらりと並んでいた三和のブースが壮観だった。色はもちろん、男性の肩に掛けられるだけの取っ手の長さがあるトートバッグ型の製品や、ショルダーバッグになるタイプなど、デザインや仕様面も選べる時代になっているのだ。
荷物を送るための箱では、LT流通センターの「Oripa」シリーズがゆうメールやメール便などに合わせたサイズで、接着テープいらずで組み立て、送付が可能。開けるのも、カッターナイフなどが必要なく簡単で、デザインもスッキリしている。通販やオークションなど、一般の家庭からも荷物を送ることが増えている時代、こういう箱にも目を向けたい。
文具王考案ノートのポケットサイズが登場
文房具は、一般の文具店で買える文房具の名品に改めて注目が集まった。
まずは、文具王こと高畑正幸氏考案、ノートに書いた内容を後で見直すときに圧倒的に素早く内容が検索できる「アクセスノートブック」のポケットサイズ版「アクセスノート・ポケット」(1580円)に注目したい。
冒頭に目次用ページが用意され、全ページにページ番号が振られているため、内容とページ番号を目次ページに書いておけば、素早く目的のページが開けるというノートだ。持ち歩いても紙が破れたり、端が破損したりしないハードカバー仕様で、しかもページがめくりやすいように後ろのハードカバーが真ん中から折れているのもポイント。ポケットサイズになったことで、日常のメモをインデックス付きの資料のように使えるわけだ。
アクセスノート・ポケットと同じく、エコールのブースで紹介されていたオリエント・エンタプライズの「ボンディック」(1780円)も面白いツールだ。
この製品は、付属のUVライトを当てると4秒程度で硬化する液体プラスチック。つまり補修剤のようなもので、例えば、イヤホンのケーブルが破れて中の導線が露出しているような場合に、ボンディックを使えば応急処置ができる。欠損した部分をボンディックで固めて後で削ることで補修でき、ネジ穴の補修など、かなり広い範囲で使える。UVライトを当てないと固まらないので、落ち着いて作業できるのも助かる。
削っても美しい、廃棄古紙の鉛筆
変わり種の文房具としては、TRINUSの「花色鉛筆」(5本セット1800円)が興味深い。軸に木材を使わず、日本製の新素材である「廃棄古紙」を主原料にした鉛筆だ。これはプラスチックのように自在に整形できるけれど、削りカスは可燃ゴミとして処理できるというもの。鉛筆の断面が花の形にできたのも、この新素材を使っているからだ。
キキョウの形の鉛筆はキキョウ色、タンポポの形の鉛筆はタンポポ色、梅の形の鉛筆は紅梅色、桜の形のものは桜色、常磐樹の葉の形の鉛筆は常盤緑色と、日本の色と花や木を合わせたデザインになっている。製品は5本セットで五角形の独特なパッケージに入っている。
アイデアで差別化が進むスマホ周辺機器
一時期に比べ、かなり減ってしまったデジタル機器周辺アイテムは、相変わらずスマートフォン用のケースばかりが目立つ。その中で気になったのが、今後の製品の参考になるようなアイデア製品だ。
面白かったのは、サンクレストの「マルチケース専用安心して使える落下防止シート 落ちないくん」だ。「落ちないくん」は、粘着テープ型のマルチサイズ対応スマートフォンケースに対し、粘着力を強くしたり、ゴムバンドを使ったりするのではなく、スマホ側にもう一枚シートを貼ることで、ケース側の接着力を高めようというアイデア製品。
ちょこちょことサイズが変わるスマホに対して、いちいち対応ケースを作っていたらメーカーも負担が大きいし、購入する側も買い間違える可能性が高まる。そのために、接着テープで貼り付けるブック型のケースが主流になるのは仕方のないこと。比較的サイズがそろうiPhoneならともかく、AndroidやWindowsPhoneでは、この流れは避けられない。その際に、接着テープの落下防止対策は必須になってくるのだ。
モバイルバッテリーとハンガーリングとマルチコネクタを一体化したCANTERAの「バッテリング」は、スマホの背面に吸盤でくっつけるタイプの小型モバイルバッテリー。容量2500mAhなのでやや小さいが、スマホに張り付くこと、背面にリングがついていて使用時の落下防止と操作しやすさが追加されたこと、iPhone用コネクタとマイクロUSBが裏表に付くマルチコネクタになっていてケーブルが不要なことなど、機能をてんこ盛りにしているのが特徴だ。
また、ケンコー・トキナーの「LUME CUBE」(1万5400円)という小さな照明機器もユニークだ。44mm角の小さな撮影用ライトなのだが、1500ルーメンの明るさと、水深30メートルに耐える防水機能を持ち、スマートフォンからワイヤレスで操作可能。複数のLUME CUBEを同時にコントロールすることも可能なのだ。
ポケットに放り込めるサイズでバッテリーは約2時間持つので、特に動画撮影時に光量が不足するときには威力を発揮する。雨の中、雨粒を光らせて撮影したいときとか、屋内で部分的に明るくしたい場合など、活躍シーンはいくらでもある。何といってもデジカメにもスマホにも使えるのがありがたい。
(文・写真 納富廉邦)
[日経トレンディネット 2017年2月21日付の記事を再構成]
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